新潟の美食どころ(2)

里山十帖

山奥の古民家を改築した旅館で
当地ならではの十の物語を感じる

 山奥の古民家を改築し、2014年5月に開業した旅館。泊まる人たちに、「食、住、衣、農、環境、芸術、遊、癒、健康、集う」という十の物語を感じてもらうことを目的にして作られたという。食材が豊富な季節でも、乏しく保存食しかない時も、地元の食材だけを使って作られる、ここだけの四季折々の料理がいただける。

 1月の料理をご紹介。まず注がれるのが、「山の薬膳出汁」。山菜の根っこや木の実、ハーブの根、乾燥野菜の皮の出汁と鴨の出汁を煮出したもの。体の細胞隅々にまで染み渡っていく多幸感がある。

 そして、大納言と朴葉を使った「栃餅」、「白子焼き」の次は、「鰤と人参」。鰤のお造り、甘夏、オレンジ、食用菊。合わせて食べると、鰤が違う表情になる。

「雪景色」。八海山の酒粕汁、牛蒡、人参、大根、黍餅、クワイ。黍餅が素朴でおいしい。八海山の大吟醸の燗酒が合うこと!

「大根 保存と発酵」。黒大根、緑大根、紅しぐれ大根、発酵食品ソース、発酵の汁を少し入れたもの。様々な酸味が舌を洗って、清々しくなる。

「海と大地」。イシモチ、白菜、神楽南蛮。味噌漬けにしたイシモチを噛み締めると出る深い旨みと、白菜の自然な甘みが溶け合う美しさ。神楽南蛮の辛味が効いている。

「越後上越・短角牛」。牛蒡、人参、大根、里芋。添えた牛肉のジュと野菜の汁がいい。

「ご馳走ごはん」。魚沼の米仙人・鈴木清さんが作るコシヒカリの炊き立てである。このご飯に自然薯をかけ、自家製沢庵と食べれば、この上ない幸せに満たされる。  

 翌日の朝食も充実。ここに来ると、現代人にとって本当の贅沢とは何かを問われる。

●里山十帖  
新潟県南魚沼市大沢1209-6
電話=025(783)6777

欅苑

風情のある民家料理店で
季節ごとの楽しみに出合う

 苑内に樹齢約1500年の欅の大木がある民家料理店。堂々たる茅葺屋根の家屋は、明治3年に建てられたもの。料理には自家菜園で栽培した旬の食材をはじめ、南魚沼で採れた食材を使用。春は山菜、夏は天然の鮎、秋は山のキノコ、冬は根菜など、季節ごとの楽しみに出合える。宿泊も可能。

 一の膳、二の膳、留椀にご飯という流れで出される、1月の献立をご紹介。

◎一の膳

「人参、椎茸、胡桃・豆腐の煮こごり」。煮こごりの中に様々な野菜の滋味が潜む。「鮭のかぶらはさみ」は、かぶらの甘みと鮭の旨みが素直に馴染んでいる。

「帆立入り玉子豆腐の帆立あんかけ」は、豆の香りが立つ豆腐がおいしい。「お椀」 は、玉子豆腐、しんじょ、三つ葉、白舞茸。澄んだつゆの中でキノコが香る。

◎二の膳

「蓮根磯辺揚げ、すりおろした蓮根、銀杏、獅子唐」。もちっとした蓮根の揚げ物。

「自然薯海苔巻き」。山芋の粘りが先に来て、噛むうちに海苔の粘りと抱き合う。

 ほうれん草が甘く、椎茸の香りが高い「焼き椎茸とほうれん草のおひたし」。それぞれの素材をじっくりと噛み締めたくなる味わいの「蓮根、大根、人参、椎茸、胡麻、柚子の炒めなます」。

「春菊と菊と胡桃の白和え」は、胡桃の香りがアクセントとなって、春菊の青々しさを引き立てている。「胡麻豆腐」は、実に滑らかで、胡麻の香りが高く、「魚岩(いわな)塩焼き」は、素朴なおいしさ。

 揚げ物は「八色(やいろ)しいたけのエビ詰め天ぷら、蕗の薹」。蒸し物の「かぶら蒸し」は、百合根、銀杏、海老が入った濃いめの味。

 留椀は「のっぺい汁」。貝柱の淡い出汁に、野菜類の養分が溶け込んだ、温かく朴訥な品のある汁である。最後は「むかごご飯」「沢庵と野沢菜古漬け」「水菓子」。

●欅苑  
新潟県南魚沼市長森24
電話=025(775)2419
営業時間=11時半~15時(入店は13時まで)、17時~21時半(入店は19時半まで)
定休日=不定休

新潟の美食どころ(1)

Restaurant UOZEN

自ら調達した自然の恵みを活かす
地に根ざしたモダンフレンチ

 シェフの井上和洋さんが、東京の店を閉めて三条市に移り、妻の真理子さんの両親が営んでいた日本料理店『魚善』をリノベーションし、2013年にフレンチレストラン『UOZEN』を開店。自ら野菜を育て、海で魚を釣り、山で山菜を採り、狩猟免許を取得して野禽を仕留め、地に根ざした料理を創り出す。1月のジビエコース(冬季限定)1万5000円は以下の通り。

「猪の頭を使ったリエット、ゴールデンオニオンと自家製生ハムのマカロン、鴨腿肉と白インゲン豆のカスレのコロッケ」でスタート。次はスペシャリテ「ボタンエビのブイヤベース仕立て」。生のボタンエビに、ジュレ状にしたブイヤベースをかぶせ、アイオリソースを添えて。ボタンエビ特有の甘みと食感、粘質性の身質が、ブイヤベースの旨味と共鳴し、ワインが恋しくなる。

「本州鹿の昆布締めタルタル」。しなやかで、雑味なく、鉄分の美しさがある。

「せいこ蟹、バターナッツ南瓜、蟹のサバイヨンソースとイクラ」。ソースの旨味の後から身や子の味わいが顔を出す。

「天然鴨炭火焼、魚沼産そば粉のガレット、ネギの根っこ」。綺麗な味わいの鴨肉。

「ヤマドリの白湯スープ、つくね、自然薯」の次は、「鮑のシヴェ、赤ワインと蜂蜜でマリネした熊の手と干した香茸の戻し汁」。鮑の肝が優美。熊の手のコラーゲンが溶け、香茸はシャキッと凛々しい歯応え。

「ヤマドリ(胸と腿)の薪火焼、ヤマドリのソース、マタタビとミズのピクルス」。淡さと濃さ、一つの肉の中に二律背反が潜んでいて、人間の舌を翻弄する。

「熊のロティ、銀杏と熊の内臓、団四郎味噌」。厚切り肉の弾むような食感に唸る。

 デザートも秀逸。どの料理も妙なる香りと食感の出合いに震え、心に深く刻まれる。

●Restaurant UOZEN  
新潟県三条市東大崎1-10-69-8
電話=0256(38)4179
営業時間=11時半~15時(13時LO)、17時半~22時(最終入店20時・日祝は22時閉店)
定休日=月曜日・他不定休

鮨 登喜和

新潟の米の柔らかな甘みと
旨味を引き出した魚が出合う

「今日は全部新潟の魚です」と、店主の小林宏輔氏。ゆえに、マグロも穴子も煮蛤もない。地方の鮨はこうでなくちゃ。新潟の米と、寝かせたり、塩をしたり、風干ししたりと、様々な方法で旨味を引き出した魚が出合い、なんとも嬉しい幸せを呼ぶ。

 1月の夜のおまかせ(料理と握り全20種)1万円は、以下の通り。

「蕪のすり流しとズワイガニ」。続いて、「3日寝かせた本アラの握り」。じっとりと脂が乗っている。うまい。

「佐渡島アオリイカ握り」。薄切りにされて、ねっとりと甘い。胡麻のアクセントが効いている。「5日寝かせた黒ムツ握り」は、身が締まり、黒ムツ特有の身のダレがない。

 塩をして軽く脱水した「南蛮エビの握り」は、エビ味噌のペーストがかませてある。

「聖籠産の白子」は、実に綺麗な澄んだ味わい。とろとろになるまでつぶして食べ、後から酢飯を入れてよくよく混ぜる。

「マハタ」。微かに甘く、旨味が濃い。

「太刀魚握り」。本日の一番。風干しし、軽く炙った太刀魚は、しなやかな筋肉があって、噛むと一瞬抵抗を見せながら、もっちりと崩れ、酢飯と合体する。品のいい脂の甘みが流れ、その後から皮下の逞しい甘みがやって来て喉へと消えていった。

 柔らかな青い香りの「銀葉草(ぎんばそう)」に続く「潰したイクラ」は、深い味わい。

「イシモチ」はきめが細かく、しっとりとして腹身がうまい。蒸して、熱々酢飯と合わせた「メガニ」。続いて「サバの海苔巻き」と「胡桃の飴煮入り酢飯海苔巻き」。郷土特有の胡桃の存在が心憎い一品。

「栗と胡桃の飴煮入りいなり寿司」「干瓢巻き」と続き、締めは女将さんの「玉子焼き」。

●鮨 登喜和  
新潟県新発田市中央町3-7-8
電話=0254(22)3358
営業時間=12時~13時半、18時~22時
定休日=月曜日