フランス料理の新店

noura

フランス料理好きの心をくすぐる
丁寧に作られた美しい味

 浅草の名店『オマージュ』の荒井昇シェフが、同店の裏に新しく開いた店。子ども連れの家族からカップル、70代くらいの女性まで、様々な方がそれぞれに食事を楽しんでいて、その幸せな光景に心が和む。

 昼2000円、夜3800円・5800円(税・サ別)のプリフィックスメニューで、アラカルトも各種揃う。料理はいずれも丁寧に作られた美しい味である上に、付け合わせにも軽いひねりが加えられていて、フランス料理好きの心をくすぐる。

 突き出しは、ふっくらと膨らんだパンケーキ。メープルシロップとパンケーキのおなじみの喜びに、トリュフが香り、熱々を噛めばふんわりと歯が包まれて、もうそれだけで幸せがやってくる。

「北海道産生ウニのシャンパンゼリー寄せ 牡蠣のムース添え」は、牡蠣のムースもさることながら、冷たさの中に牡蠣の滋養を詰め込んだ牡蠣のソルベが素晴らしい。牡蠣を開けた時に出るジュースを凍らせて、パコジェットにかけたものだという。

「ダニエルキャスタンのフォアグラ」は、フォアグラの上質な脂の香りを、「テット・ド・ポーのクロメスキ」は、カリリと揚げた衣の中から、コラーゲンの甘みに溢れた豚肉の詰め物が現れ、その食感の対比を楽しむ。「石田めん羊牧場の仔羊と手亡豆(てぼうまめ)のトマト煮込み」は、ほろりと崩れる仔羊の滋味と豆の甘みが、しみじみとうまい。

 元々賄いで作っていたものをメニューに載せたという「魯肉飯」もいい。

 香菜の香りがパイナップルの甘みに寄り沿い、熱帯地の幻影を漂わすエキゾチックな魅力の「ゴールデンパイナップルのコンポート パイナップルとコリアンダーのシャーベット」など、デザートも秀逸。

●noura 
東京都台東区浅草4-10-6
電話=03(6458)1255
営業時間=11時半~14時(L.O.)、18時~21時(L.O.)
※休業日前日は20時(L.O.)
定休日=月曜日・火曜日

Kotaro Hasegawa〈DOWNTOWN CUISINE〉

和の器と箸で食べる
故郷への愛に満ちた料理

 昭和の匂いが漂う新御徒町の佐竹商店街に佇む店。『ラ・フェット ひらまつ』料理長を務めた長谷川幸太郎さんが、「若者よ故郷へ帰れ」という、フェルナン・ポワン氏の言葉に打たれ、今春、生まれ育った街に店を開いた。和の器に盛った料理を箸で食べるスタイルは、地元の人々にも気兼ねなくフランス料理を楽しんでほしいと願う長谷川さんの優しさが現れている。

 コースは5000円、8000円、1万円(税別)。1万円の料理は8皿構成で、夏の終わりのある日は、九谷焼の皿に盛り付けられたマスのマリネのアミューズから。マスの旨味にシャインマスカットの酸味や2種類のオクラの食感が重なり合って、食欲が刺激される一皿。

 2皿目は、蓋付き小鉢に入れられた、ウニ、 ブールブラン、枝豆、ホタテのひもでとったフォンによる茶碗蒸し。やさしい旨味が広がって、気分が穏やかになる。

 続いて、塗りの木板に盛られた鮎の料理。鮎のムースを抱いた鮎を、カダイフをまぶして揚げてある。きゅうり花山椒添え。名残を迎える鮎の繊細な香りを伝える。

 次は、棒を持って齧る〝フレンチドッグ〟。フォアグラとシャンピニオンデュクセル、鶏のムースを合わせたものを衣をつけて揚げ、マデラソースが添えられている。

 朱塗り椀に入れられた、茄子と和歌山産ホウボウのヴァン・ジョーヌソース。キレのいいソースの酸味が魚の甘みを生かす。

 錦手の皿に盛ったニュージーランド仔羊のプレ・サレ。ハーブを乾燥させてパウダーにしたパン粉を塗って焼かれている。

 最後は、ブラン・マンジェ、桃のコンポート、富良野のメロンコンポート煮汁のグラニテのデザート。

●Kotaro Hasegawa 〈DOWNTOWN CUISINE〉 
東京都台東区台東4-2-11
電話=03(5826)8663
営業時間=18時~20時半(L.O.)
定休日=日曜日・祝日・不定休有り

フランス料理の新店(2)

サンプリシテ

堂々たるフランス料理の風格
日本の魚が中心のコース

 フランスやスイスの数々の星付き店にて研鑽を重ねて帰国し、『銀座レカン』スーシェフ、広尾『レヴェランス』、荻窪『ヴァリノール』料理長を歴任後、昨年12月に独立開業した、相原薫シェフの店である。

 日本の魚はキレイで、水のような澄んだ味わいがある。しかし熟成させると、たちまち内に眠っていた凛々しさが顔を出す。濃密に味が膨らんだ魚は油脂ともなじみ、さらりと軽い野菜のソースをかけても色気がにじみ出る。「1か月も熟成できる魚は世界中を探しても日本にしかない」という相原シェフは、極めて質の高い魚を仕入れ、それらを熟成させて、力強い野菜と合わせる。魚と野菜のたくましいミネラルが結合して、色気を醸し出す。 
 1コースのみで、昼は5000円(7~8皿)、夜は1万3000円(11~13皿)、税・サ別。完全予約制。

 ある夏の夜のコースは以下の通り。

  1. 2週間寝かせたサワラと焼き茄子ピュレにトマト。サワラの熟れた色気と、焼き茄子の香りが素晴らしく合う。
  2. サブレ・ブルトンヌに、ボルディエの海塩バター、68℃で火入れをしたシラスと卵黄、黒オリーブのマドレーヌ。マドレーヌの食感と香ばしさが食欲をくすぐる。
  3. パン・ド・カンパーニュ、ボルディエの海藻バター、釧路町昆布森の毛ガニ、ラトビアのキャビア「オシェトラ」。毛ガニの味の濃さが全てをまとめ上げている。
  4. 6日間寝かせたイワシとネギ、生姜。イワシの温度帯が素晴らしい。それが色気を醸して、ワインが飲みたくなる。
  5. ボタンエビ、ボタンエビ頭のコンソメ、ダークチェリー、バラの花。真空氷温漬けにしたボタンエビの濃縮した甘みが、ダークチェリーの甘酸味や華やかなバラの芳香と合わさり、ときめく瞬間がある。
  6. アワビ、アワビのフォンとクリームとバターのソース。トリュフ。ジャガイモのリゾット。
  7. 胡麻鯖、トマト水とグリーンオリーブのスープ。フィンガーライム、ルッコラ、カラマンシービネガー。生き生きとした胡麻鯖の肉が生み出す豊潤な滋味と爽やかな香り、トマト水やグリーンオリーブの旨味が醸し出す美しさに、うっとりとなる。
  8. スジアラ、小松菜のソース。5日間寝かせたスジアラの雄大な滋味と、小松菜の青々しい香りとの出合いにより、味に底知れぬ深みを生み出している。
  9. 京都七谷(ななたに)鴨とインゲン。赤ワインとマグロ節、イリコと椎茸、マッシュルームと白菜、昆布のソース。軽やかさと濃密さを両立させた味のソースが、精妙に火入れされた鴨肉の滋味を持ち上げて素晴らしい。
  10. ビーツと抹茶パウダー。ビーツの真髄だけを煮詰めたような濃縮感がいい。

 デセールは、ほうじ茶のフォンダンとソルベ。これまた香り高く、心を安らげる。最後は、小さなシュークリームと台湾茶。

 相原シェフの料理は、どの皿も堂々たるフランス料理の風格がある。精神を溶かし、肉体を弛緩させる。それはおそらく、フランスで長く修業して学んだ、彼の根っこにある、料理人としてのある種のしたたかさではないだろうか。そこに潜むフランス料理の哲学が、我々を魅了するのである。

東京都渋谷区猿楽町3-9 アヴェニューサイド代官山12階 
電話=03(6759)1096
営業時間=12時~13時半(L.O.)、18時~20時半(L.O.)
定休日=月曜日・第1火曜日(祝日の場合は翌日)

アルゴリズム

独創性を生み出す
良質の魚とクラシックなソース

『銀座レカン』『カンテサンス』で経験を積まれた、深谷博輝シェフが昨年秋に開いた店。モダンな内装、カウンターだけの店を、シェフとサービスの二人で切り盛りされている。1コースのみで、昼は8000円(7~8皿)、夜は1万4500円(10~11皿)。料理に合わせたペアリングのみの用意で、ワインペアリング4500円~1万500円(3~7杯)、ノンアルコールペアリング5500円(5杯)、税・サ・水込。完全予約制。

 ある夏の夜のコースは以下の通り。

  1. スイカのモヒート。半割りにした小さなスイカの中にモヒートが入れられ、涼が口の中を吹き抜ける。
  2. ピサラディエール。南仏郷土料理をアルゴリズム流で。温めた石の上にパンスフレ、玉ねぎのコンフィ、オリーブ。
    ?煮たレンズ豆と焼き茄子のフリット、白イカのソテー。レンズ豆、茄子、イカ、3者の甘みが見事に融合する。フランス料理のエスプリがある、上等なスナック。
  3. ウニのサバイヨン、アールグレイのビスク。面白い。サバイヨンによって、2種類のウニが生々しくなることなく、丸く色香を伴って甘みが引き立っている。
  4. 肝、湯あがり娘、つぶ貝のリゾット。オレンジ、オクサリス(カタバミ)。極めて質が高い500gアップの堂々たるつぶ貝と肝の旨味に、茹で具合が絶妙の、甘みが強い枝豆「湯あがり娘」の青々しい香りが抱き合う。そこに、オレンジやハーブが軽く酸味のアクセントを添える。
  5. オマール、アボカド、青リンゴ、バジル、インゲン、アメリケーヌソース。このオマールもまた質が高く、軽く仕上げながらも旨味が深いソースがさらに持ち上げる。
  6. マナガツオ、豆のつる先とロケットピーマン。2週間熟成させたマナガツオをシャンパーニュソースで。素晴らしく気品が立ち上る一皿。なんと均一な加熱だろう、フォークを入れると、カツオは生き生きと滋味を広げながらも滑らかに崩れていく。どこにも引っかかりがない、ムースである。慎重に噛みこめば、濃密な海の滋養が流れ出る。クラシックなシャンパーニュソースの柔らかくキレのある酸味が、カツオの甘みを抱き込んで優美にする。堂々たるフランス料理である。
  7. ランド産ホロホロ鳥とフォアグラ、ソース・ペリグー、赤オクラ、スベリヒユ(食べられる雑草)。マディラ酒をたっぷり使ったソース・ペリグーの深みがいい。
  8. 野菜のコンソメ焼き、とうもろこし風味。

 デセールは、赤肉メロンとメロンシャーベット、アーモンドメレンゲ。最後は、タルト、ヨーグルト、クリーム、黒イチジク。

 若いながら、クラシックなソースを大切にし、そのソースと質の高い魚介類を合わせ、独創的な料理を生み出す深谷シェフの力量は見事である。

東京都港区白金6-5-3 さくら白金102 
電話=03(6277)2199
営業時間=12時~13時(L.O.)、18時~20時(L.O.)
定休日=日曜日・月曜不定

フランス料理の新店(1)

L’Evol(レヴォル)

質の高い食材を
モダンクラシックな手法で表現

 外苑西通りから表参道に抜ける、通称「まい泉通り」に、今年三月に開店。ワインバーとウェイティングを兼ねた地下一階から階下に降りると、四十席のメインダイニングが広がる。白と深いピンク、黒で統一された店内は、ゆったりと席が配置されており、くつろいで過ごすことができる。

 シェフの高木和也さんは、渋谷「キャリエ」(昨年閉店)の評判を高めていた方で、「質の高い食材を、モダンクラシックな手法やソースで表現する」ことを目指し、腕をふるう。

 ディナーコースは、一万円(十皿)と、七千円(七皿)。ある夏の日の一万円のコースをご紹介。

 一皿目は、シェフが前の店から提供してきた「パテ・バーガー」。小さな小さなバンズでパテを挟み込んだバーガーで、練り肉ならではの香りが食欲を刺激する。

 二皿目は、雲丹をのせた「トウモロコシのムース」。トウモロコシの濃厚な甘みが舌に流れ、思わず微笑む。

 三皿目は「車エビとアスパラガスのアンサンブル」。直火で炙って冷水に取った車エビと、薄切りアスパラガスを交互に重ねた一皿で、中心がレアに保たれた車エビの繊細な甘みがいい。添えられるのは、軽く味付けした玉ねぎと茄子のラタトゥイユ。

 四皿目は、野菜の盛り合わせ「エコファームアサノと高農園の野菜~夏の香り~」。力強い野菜の下にはコンソメ、上には枝豆を泡状にしたものがのせられている。ミネラルに富む野菜と、滋味深く綺麗な味わいのコンソメとの出合いが素晴らしい。

 五皿目は「フォアグラのEvolution Ver.4」。白桃、赤桃のピュレ、パンドエピス(パン菓子)のクランブル、セルフィユ添え。低温で加熱されたフォアグラの、ねっとりと均一な艶を感じさせる食感と脂の香りに、桃たちが優美さを加える一皿。

 六皿目「イサキのパイ包み焼き、ソースショロン」。スズキを使ったボキューズのスペシャリテへのオマージュか。イサキと帆立のムースを詰めたパイである。そのパイの焼き具合がいい。焦げる寸前まで焼き込んだ香ばしさが魅力的で、一方、中のイサキは火が通り過ぎることなくしっとりと甘みを膨らませている。その加熱の見極めが、実に見事である。

 七皿目「ラ・フルール・ドゥ・ミモレット」。同店のオーナーソムリエ細野博明氏のスペシャリテである。本来はグラニテが置かれるところだが、口腔内や喉を冷やしすぎる点と、チーズは肉の脂を吸収することから考えついたという。フロマージュブランの上に、薄く削り花びら状にした、十八ヶ月熟成のミモレットをのせ、百花蜂蜜をかける。ミモレットの熟れた深い塩気とフロマージュブランの爽やかな酸味、濃厚な蜂蜜の甘みが共鳴し合う。

 八皿目の肉料理は三つの料理から選択する。その一つ「トゥーレーヌ産鳩のロースト、ソースサルミ」は見事なキュイソンで、口の中に肉汁がしたたり落ちる。そしてガラや内臓を煮詰めたソースサルミが妖艶さを演出する、堂々たるフランス料理である。

 デセールも三品から選択。「ノワゼッティーヌ、フランボワーズアイス」は、ヘーゼルナッツの香り高い焼き菓子に、ヘーゼルナッツを入れたチョコとフランボワーズソースを添える。そして、ミニャルディーズと氷温熟成珈琲で宴の幕が下りる。

 ランチコースは、四千五百円(五皿)と、七千五百円(七皿)。昼夜とも税・サ別途。
 
東京都渋谷区神宮前3-6-7 DEAR神宮前地下1階 
電話=03(6875)0357
営業時間=11時半~13時半(LO)、18時~21時半(LO) ※日曜日はランチのみ営業
定休日=月曜日

Restaurant Umi

生命の誕生の源である「海」に
感謝を込めた料理

 閑静な住宅街に、六月にオープンした一軒家レストラン。シェフは、パリの一つ星レストラン「Sola」でスーシェフとして活躍された、藤木千夏さん。

 福岡県の有明海を見て育った彼女の「海」への思い、生み出すことの「生み」、そして「Sola」へのオマージュを込めて「Umi」と店名をつけたという。

 ディナーコースは、八千五百円(七皿)と一万二千円(十一皿)。ある夏の日の一万二千円のコースは以下の通り。

 一皿目は、体を整え、喉を開き、また「食事の支度が揃っていますよ」ということを指し示す、日本古来の粥からスタートする。淡い「茶粥」は、喉を清めながら心を温め、ごぼうと白瓜、蕪のピクルスが食欲をゆっくりと開かせ、美しい滋味が宿ったコンソメ(牛、鶏、焼いた長崎のトビウオ、野菜類、しいたけ)が体を整える。

「長崎産アジのマリネと茄子のマリネ、茄子を炭化させたソース」。茄子のほのかな甘みと、品を感じさせるアジの脂の旨味を純粋に合わせて、他の要素を削った潔さがいい。雑味のない澄んだ味が味覚を開く。

「白イカのグリル、エンペラとゲソ、ズッキーニのソース、松の実などによるピストソース、シトロンキャビア」。白と緑の皿が美しい。ナッツの甘い香りとイカの甘い香りが呼応し合い、胸がときめく。

 スペイン・バスク地方の料理「ピミエント・レジェノ」(ピーマンのブランダード詰め)のアレンジ。宮崎県産の甘みの強い赤ピーマンにブランダード(鰯、タイム、じゃがいもと牛乳を合わせたもの)を詰め、パン粉とパプリカ粉をつけて焼き、赤ピーマンソースを添えた一皿。ほのぼのとした郷土料理の美味しさがあって、どこか懐かしいような気分にさせられる料理である。

 魚料理は「みやび鯛のパイ包み焼き、グレープフルーツ入りブールブランソース」。パイには、根セロリとタプナード(オリーブのペースト)、魚のムース、微量の柚子胡椒が入れられ、みやび鯛(天草のブランド鯛)の気品ある甘みを優美に持ち上げている。またブールブランの酸味の利かせ方が柔らかで、魚の旨味に対して優しい。

 肉料理は「シャラン産窒息鴨のロティ、泥つき人参とオレンジジュースと人参のピュレ、人参の花添え」。鴨のキュイソンに色気があり、見事。土の温かみを伝える人参の濃い甘みにため息が出る。

 そして「山梨県産サンタローザ(プラム)、レモンタルト、りんごのクラフティ」という、楽しい組み合わせのデセールで終了。

 ランチは土曜日のみで、六千円(七皿)のコース一種。昼夜とも税・サ別途。

東京都渋谷区恵比寿4-19-7 
電話=03(6456)4306
営業時間=12時~13時半(LO)、18時~21時(LO)※ランチは土曜日のみ
定休日=月曜日・日曜日