牛尾治朗対談

※ 新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに罹患された方々の一日も早いご回復を心よりお祈り申し上げます。
今回は諸般の事情により、2019年10月に92歳で逝去された緒方貞子さんをゲストにお招きした、2011年6月号「牛尾治朗対談」を再編集して掲載いたします。

1991年、国連難民高等弁務官就任直後に直面されたクルド難民問題を境に、緒方さんは一躍世界の注目を集めることになった。
これまでさまざまな国際機関の要職を歴任し、数十年間にわたり世界各国の難民救済問題に携わってこられた日本を代表する国際人、緒方貞子さんにお話を伺った。

緒方 貞子
生きていく上で大事なのは人に対するリスペクト

牛尾
お忙しいところ、ようこそおいでくださいました。

緒方
お招きいただき、ありがとうございます。

牛尾
お住まいは私と同じ田園調布でいらして、お宅まで歩いて10分ぐらいですね。

緒方
そうですね。

牛尾
田園調布にはかなり長くお住まいでしょう。いい場所ですね。 

緒方
両親が結婚していまのところを買って、それからずっとですから80年以上になります。

牛尾
お生まれは田園調布ですか。

緒方
生まれたのは麻布区、現在の港区になります。いまのところは、小学5年生の頃からです。もう少し都心に近いところにいたほうが出入りするのに便利だと思うこともありますが、やはり田園調布まで帰ると何か落ち着きますね。牛尾さんも、そういうふうにお感じになりませんか。

牛尾
以前は麻布に住んでいたのですが、出入りが自由すぎると、仕事とプライベートの区別がつかなくて。田園調布だと、帰ったらもう出ないぞということで、いいのです(笑)。

緒方
子どもの頃に登った木などが、そのままあるわけです。いくら何でもいまは登りませんが(笑)。週末など、とても気持ちがいいですね。駅に降りると、ほっとします。

牛尾
最近、駅がとてもよくなりましたね。東急電鉄は、日本で最も都市開発のレベルが高いと思います。休日には、ふらっと孫を連れて駅周辺を散歩したり買い物に行きますが、気持ちがいいです。

緒方
お孫さんは近くに住んでいらっしゃるのですか。

牛尾
一緒に住んでいます。隣といいますか、廊下づたいに(笑)。

緒方
うちも1人、娘のほうにもうじき5歳になる女の子の孫がおりまして、五反田のほうに住んでいます。

牛尾
お子さんは何人いらっしゃるのですか。

緒方
2人です。息子(緒方篤氏)のほうは結婚していなくて、映画監督をしています。自分で台本を書いて、全部創作なのです。ヨーロッパで抽象的なフィルムを作っていたこともあるのですが、いまはアメリカで映画を作っています。

牛尾
アメリカは、いいものは必ず報われますから。息子さんはおいくつですか。

緒方
48歳ぐらいでしたか。

牛尾
お父様やお母様と違う道を進むというのは、子どもにとっていいことですよ。同じことをしていると、どうしても比べられてしまいますから。映画監督とは、素晴らしいではないですか。

緒方
勝手に好きなところへ行って仕事をしているのですよ(笑)。