特集リスト

2020年2月号

◆牛尾治朗対談◆

宇野 重規

東京大学社会科学研究所教授


◆万由美の昼膳交遊録◆

山田 文彦

雅楽師・NPO『日本伝統舞台芸術』音楽監督
◆味の見聞録◆

東京を冠した話題の店
東京の名を冠し、かつ世界でもこの店でしか味わえない唯一無二の料理を提供する、話題のレストラン2軒をご紹介。

目次

牛尾治朗対談
宇野 重規(東京大学社会科学研究所教授)
「トクヴィルの発想から学ぶ デモクラシーを支える地方都市の再生」

日々是好日なり
文・南 美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第182回「たっちゃん、安らかにお眠りください」

食のタイムトラベル
文・加来 耕三(歴史家・作家)
第101回「“茶聖”千利休と“麩焼”」

草を喰む
文・中東 久雄(「草喰なかひがし」主人)
第70回「昔の大寒に想う」

はんなりと京菓子
文・山口 祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第47回「HANA」

味のパトロール
文・森本 チヅ子(美容家)
三重県・志摩「いかだ荘山上(さんじょう)」

万由美の昼膳交遊録
ゲスト:山田 文彦(雅楽師・NPO『日本伝統舞台芸術』音楽監督)

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第70回「肩肘張らず心から料理を楽しむ 料理人・渥美創太の『メゾン』」

名店会ファイル
第260回「赤坂柿山 赤坂総本店」

美味良宴
文・正田 隆(正田醤油(株)社長)
其の二百五十四「期待値をはるかに超えるグルメシティ、マニラ(後編)」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・小林 瑞季(日本航空客室乗務員)
第323回「寒い冬に心から温まる とっておきの美味しい店」

味の見聞録
第277回「東京を冠した話題の店」

おいしい!には訳がある
文・宮川 順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第50回「ゲコノミスト、現る!?」

ふるさとの味、おふくろの味
文・阿部 信行(万引防止出版対策本部事務局長)
第351回「もんじゃと心意気」

台所と食卓の名脇役
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第22回「鋳物琺瑯鍋」

おいしいひとり旅
文・山崎 まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第35回「岡山県湯原温泉『八景』」

一期一食
文・横川 正紀(ディーン&デルーカ 代表)
第11回「旅する食卓」

これをあげたい!
文・大倉 治彦(月桂冠(株)代表取締役社長・14代目当主/NPO法人和の学校会員)
第143回「月桂冠の日本酒『特撰』」

タネもシカケもある話
文・森田 敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第95回「冬に大活躍の薬草『葛』」

ドクターの天眼鏡
文・石田 浩之(医学博士)
第143回「ヘディングでパンチドランカー!?」

ソムリエの呟き
文・渋谷 康弘(ソムリエ)
第196回「『シャトー・ムートン・ロスチルド』とアートラベルの歴史」

ハイ!!チーズ
文・皆見 敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第89回「チーズの呼び名」

コーヒーを巡る人々
文・門上 武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第54回「チェイサーは続く」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第302回「そば好きの戯言」

さらり日記
文・遠山 正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第278回「大切なこと」

百年つづけ
文・伊藤 章良(食随筆家)
第9回「親子で編む唯一無二の空間」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・山本 静恵
第191回「韓国風海苔巻きキンパ」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮 麻子
第218回「森林火災」

ひと皿のことの葉
文・上條 宏昌(小誌編集部)
第107回「風呂ふき」

悪食三昧
文・樫井 雄介
第215回「次世代の中国料理」

森本 チヅ子

美容家

いかだ荘山上(さんじょう)』

味と眺めと人情の宿

 ナチュラルワインの世界では知らない人はいないという「スロベニアワイン」を日本に輸入している友人に連れられ、伊勢志摩の『いかだ荘山上』を訪れました。

 先ずは、いかだ荘に着いて中に入った瞬間、眼下に広がる穏やかで美しい的矢湾(まとやわん)に心奪われると同時に、広島生まれの私は故郷に帰ったような懐かしさを感じました。そんな風景に見とれていると、「帆船の時代、的矢は風待ちの港として、船乗りさん達が航海の疲れを癒していた所なんですよ」と、見るからに優しそうな、若女将の陽子さんが教えてくださいました。そのお話を伺い、だからこんなにも癒されるのかと納得しました。

 そして、いよいよ夕食。古くは朝廷に納めていたほど豊かな海産物が育つ伊勢志摩ですから、「きっと御馳走だろうな」とは想像していましたが、それは想像をはるかに超えるものでした。目の前の湾で獲れた伊勢エビやヒラメ、アワビなど、魚介類は全て新鮮。夢見心地でいただきました。

 中でも素晴らしかったのは的矢牡蠣のプレミアムオイスターです。普通の牡蠣とは違って少し小ぶりで、濃厚なうま味がぎゅっと詰まっていて、牡蠣特有のエグみもなく、シャキシャキした不思議な食感。広島生まれの私は牡蠣は食べ慣れているつもりでしたが、今まで食したことがない味で、そのあまりの美味しさに、プレミアムオイスターの秘密が知りたくなり調べてみました。

 普通、牡蠣の養殖は筏から海に垂直に牡蠣を重ねて垂らして育てますが、プレミアムオイスターは網目で細長いドラム缶のようなものを横にしてその中で牡蠣の幼生を成長させます。そうすることで、ふ化から収穫までバラバラで育てられるようになり、沢山の餌が得られ、牡蠣自体運動することができるので美味しく育ちます。

 さらに、「真牡蠣の旬は真冬」という常識を破ったのが「三倍体牡蠣」(産卵しないように処理した牡蠣)です。これによって、さらに私たちは美味しいプレミアムオイスターを一年中食べることができるようになりました。

 そうした新しい取り組みによって生み出された、美味しい料理の数々が運ばれるごとに、感嘆と称賛を発し、幸せをかみしめながら味わう私を、友人は誇らしげに傍で微笑んで見ていました。きっと、私も次回はお友達を誘って、皆の感嘆と称賛を聞き、「こんなに食べてこの料金!」と喜んでいる姿を、傍で誇らしげに見ていることでしょう。

三重県志摩市磯部町的矢883-12
TEL 0599(57)2035

2020年2月号 情報区

パティシエ エス コヤマ
小山進シェフ
ショコラ最新作を発売

 2019年「サロン・デュ・ショコラ パリ」において、フランスで最も権威あるショコラ愛好会「C.C.C.」が発表した「世界のトップ・オブ・トップショコラティエ100」に選出された小山進氏が最新作チョコレートを発売。
◎「SUSUMU KOYAMA’S CHOCOLOGY 2019」(4個入り1,728円)のテーマは、{MELLOW~緑から赤へ鏡の中の物語~}。紅茶のダージリンと、インド産カカオのショコラ・ノワール、ペルー産カカオのショコラ・ブランを組み合わせた「No.4 Mellow~ダージリン~」他、香り豊かなショコラが美しくパッケージされている。
◎「THE BEST OF BEST 10」(10個入り4,860円)は、2011~18年のC.C.C.コンクールに出品した作品の中から、小山氏自身がお気に入りの10点を選んで詰め合わせたメモリアルボックス。

●ご注文
https://www.es-koyama.com

中川政七商店
日本最大の旗艦店を
渋谷の新スポットに出店

 中川政七商店は「日本の工芸の入り口」をコンセプトにした、約130坪の大型店を『渋谷スクランブルスクエア』に出店した。定番のかや織ふきんや、試食できる食品コーナーのほか、お試しができる包丁などの台所道具、生地からオーダーできる座布団や季節の移ろいを感じる色彩豊かなお飾りなど、手仕事で製作された全国各地の商品、約4,000点が並ぶ。奈良の町並みをイメージした店内をゆっくり回遊し、お気に入りのひと品を見つけてみたい。

●お問い合わせ
中川政七商店 渋谷店
Tel 03-6712-6148
営業時間10:00~21:00

聘珍樓ショコラ
厳選された薬膳素材や
中国茶の生チョコレート

 1884年横濱中華街に創業した中国料理店『聘珍樓』。チョコレート専門店『マジドゥショコラ』松室和海氏とのコラボで昨年誕生し好評だった「?瑰露酒(メイクイルーシュ)」に、今年さらに龍井茶、東方美人茶、杏仁、陳皮の4種類が加わった(4個入り1,400円~)。素材のもつ希有な味と香りを楽しみたい。聘珍樓オンラインショップの他、2月14日(金)まで期間限定で聘珍樓本店、聘珍茶寮中華街店、銀座三越でも販売。

●ご注文
聘珍樓オンラインショップ
https://www.heichinrou-chocolat.com/

山崎まゆみ氏の新刊
『バリアフリー温泉で
家族旅行』第3弾

 エッセイスト、観光温泉学講師としても幅広く温泉を紹介している山崎まゆみ氏の新刊『バリアフリー温泉で家族旅行(3) 行ってみようよ! 親孝行温泉』(1,650円)。これまで内外の温泉をレポートしてきた山崎氏の実体験を交えてバリアフリー温泉を紹介。入院で足腰が弱っていた父が温泉でみるみる回復する姿を目の当たりに。おすすめの温泉宿や、同行者の注意点などが細かく解説された一冊。

●お問い合わせ
昭文社

HOME

加来耕三氏の新刊
『心をつかむ文章は
日本史に学べ』

 独自の史観で著作活動を行う歴史家・加来耕三氏の新刊『心をつかむ文章は日本史に学べ』(1,518円)。◎西郷隆盛の心をつかんだ勝海舟の一世一代の文章◎秀吉と光秀の明暗を分けた文章力の差とは◎薩長同盟を成立させたのは坂本龍馬ではなく、小松帯刀の書状だった!?など、「手紙しか伝達手段がなかった時代、一流の文章術を使う者だけが生き残った」エピソードを分かりやすく解説する。

●お問い合わせ
クロスメディア・パブリッシング
http://www.cm-publishing.co.jp

牛尾治朗対談

東京大学社会科学研究所教授、NIRA総合研究開発機構理事を務める宇野重規さん。
東大生時代に『日米学生会議』に参加し、米国学生との交流を機に決意した政治学者への道。
コミュニティの中で人々の政治教育を行い、リーダーシップを醸成していくことが本当の意味でのデモクラシーだと提唱するフランスの政治思想家トクヴィルの発想をもとに、人口減少と高齢化が進む日本社会における地方都市の新たなビジョンの創出に取り組んでいる。

宇野 重規(東京大学社会科学研究所教授)
トクヴィルの発想から学ぶデモクラシーを支える地方都市の再生

牛尾
本日はお忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。

宇野
お招きいただき、ありがとうございます。

牛尾
宇野さんには2016年から『NIRA総合研究開発機構』の理事を務めていただいて、大変お世話になっていますが、最初にお会いしたのは確か10年ぐらい前ですね。宇野さんが日経新聞で「やさしい経済学」というコラムを連載されているのを読んで、この先生は面白いことを書かれているなと感心して、ぜひお会いして話を伺ってみたいと思ったのです。ちょうど宇野さんがニューヨーク州のイサカにあるコーネル大学に留学されている時で、帰国してからお会いすることになった。

宇野
そうですね。2010年でした。その後、NIRAでお声がけいただいて、以来、牛尾会長とはいろいろな研究でご一緒させていただいて、本当にお世話になっています。

牛尾
宇野さんは東京大学大学院法学部を修了されたけれども、その後、ほかの大学に行かれたのですね。

宇野
はい。1996年に東京大学大学院法学政治学研究科博士課程を修了したあと、日本学術振興会特別研究員、千葉大学法経学部助教授を経て、1999年に現在勤めている東京大学社会科学研究所に助教授として入りました。

牛尾
私も東大法学部の出身で政治学科だったのですが、宇野さんは?

宇野
私は公法でした。実は大学時代は国家公務員、それも外交官になりたかったのです。

私の父も政治学者で、主に中国現代政治を研究していたのですが、50年ぐらい前ですから、当時はまだ中国と自由に行き来できなかったのですね。ですから研究といっても、外交文書や人民日報みたいなものを集めて、切り取りをして、整理してというスタイルでした。家でテレビを見ながら、新聞をチョキチョキ切って貼ってというのを見ていて、「こういう地味な仕事は僕はやりたくないな。もっと世界のあちこちに行って仕事をしたいな」と思っていました。私の世代だと、海外に行って活躍できるというと外交官か商社マンくらいでしたから、自分は外交官になりたいと思ったわけです。東大を3年で中退して、外交官試験を受けて、採用されて、オックスフォード大学やケンブリッジ大学で勉強をする、そういうのに憧れました。

ですが、私の場合は大学3年生の時に寄り道をしてしまったのです。『日米学生会議』という、日本とアメリカの戦争をなんとか防ごうということで戦前に学生たちが始めた団体で、宮沢喜一さんや猪口邦子さんなどがOB、OGにいるのですが、その募集を見て応募して、3年生の時にアメリカに行ったのです。そして4年生になると自分が実行委員になって、アメリカ人の学生と日本人の学生で一緒に京都や広島に行ったり、当時は日米貿易摩擦で農業の市場開放が話題になっていたこともあって、富山県の農家などにホームステイをしたり、というようなことをしていたものですから、外交官試験どころではなくなってしまって。そのあたりから人生が変わってしまいました(笑)。

東京を冠した話題の店

KIKKOMAN LIVE KITCHEN TOKYO

料理ライブと食事を一緒に楽しむ
トップシェフたちの競演

 国内外で活躍する異なるジャンルの料理人がタッグを組み、〝食文化の新たな融合〟をテーマに開発した月替わりのコース料理を、実演やトークを交えた〝料理ライブ〟と一緒に楽しめる新感覚レストラン。

 昨年12月は、『クイーン・アリス』の石鍋裕シェフと『KIHACHI』創業者の熊谷喜八シェフのコラボ。

 まずアミューズは、石鍋シェフによる「ジビエのコンソメ キノコのカプチーノ仕立て」。キノコの鼻孔を揺らす香りと、澄んだ綺麗なコンソメに力が湧く。

 そして、熊谷シェフの「キャビアサンド」。炒り卵の甘みと、キャビアの濃厚な甘みと塩気が共鳴する。

 続いて石鍋シェフの「パパイヤとターキーのカクテル」。ターキーの胸肉の火入れがしっとりとしてエレガント。

 冷前菜は、熊谷シェフの「炙りマグロのサラダ KIHACHI風」。梅干しと昆布だしのソース添え。紫蘇の実しょうゆ漬け、いぶりがっこ、山牛蒡の味噌漬けなど、多様な香りや歯ごたえが楽しい。

 温前菜は、石鍋シェフの「旬のズワイガニのフラン」。カニのソース、生クリームと牛乳に合わせた、甲殻類の旨さが際立つ。

 魚料理は熊谷シェフの「オマール海老と鮑のパイ包み焼き」。生きている海老を鍋に投入して半生で取り出す。ゆかりや大葉、トマト入りバターなど要素は多数だが、パイ生地との相性で味が丸く収まっている。

 肉料理は、石鍋シェフの「牛ヒレ肉の〝オリンピア風〟」。塩麹と甘酒でマリネした肉を調理したもので、振りかけられたキッコーマンのサクサクしょうゆとよく合う。

 最後の食事は、なんと「〝福〟カツカレー」。フォンの確かさが光るカレーとフグのカツが見事に品良く組み合わさっている。
価格は毎月変動。1万5000円~。

●キッコーマンライブキッチントーキョー  
東京都千代田区有楽町2-2-3 ヒューリックスクエア東京B1
電話=050(3134)5158
営業時間=[レストラン(予約制)]18時~(ライブ時間18時半~20時半)[スーベニアショップ・カフェ&バー]12時~21時
不定休

SPICE LAB TOKYO

温冷のスパイスを多用した
健やかなモダンインド料理

 銀座にできた新しいインド料理店である。しかしメニューにはカレーもタンドリーチキンもない。日本の食材を、インドの伝統的なスパイスを多用して生かした料理を出す。使うスパイスは、生ターメリック、フェンネル、クミン、グリーンカルダモンから、メース、サフラン、希少なローズペダルやベティビエルの根のカース、さらには味噌やわさびなど、多種多様。アーユルヴェーダに則って、温と冷のスパイスや食材を組み合わせてバランスを取り、味の均整美を作り出す。その基本精神を熟知しているからこそ、日本のわさびや味噌を使っても、味を丸く収められるのだろう。

 カリカリに加熱したレンズ豆には、炭とココナッツ、トマトとクミン、アボカドとコリアンダーという3色のチャツネが添えられる。レンズ豆の優しい甘みと、3種のチャツネが呼びかけ応え、優美に抱き合う。

 トマト水で作ったラッサムにズワイガニを浮かべ、帆立とコリアンダーを加えたスープは、どこまでもエレガント。

 コースは、 ランチは3種3,300円~、ディナーは2種8,800円~で、1皿目:寺院(成功や幸運を祈願して天上に捧げる食事)、2皿目:街路(インド各地のストリートフード・屋台料理の再構築)、3皿目:海岸(7,500㎞の海岸線を持つインドの海の幸を表現)など、テーマに沿って料理が出される。インドの『AMAN』やコペンハーゲンの『noma』などでも修業経験のあるテジャス・ソヴァニ総料理長による、知的好奇心を刺激する料理をぜひ。

●スパイスラボ トーキョー 
東京都中央区銀座6-4-3 GICROS GINZA GEMS10階
電話=03(6274)6821
営業時間=11時半~14時半(L.O.)、18時~21時(L.O.)
年中無休

橋本 翼

株式会社スマイルズ 弁当事業部

忠弥

塩もつ煮込みと、つくピー

 有名な店であるが、まだ訪れたことのない方もおられると思うので、敢えて書きたい。

 東急線「祐天寺」駅から徒歩5分、住宅街の一角に位置する。平日は16時~19時、土曜日は14時半~17時頃までの営業だが、平日は仕事でなかなか伺えない私は必然、土曜の昼飲みとなる。14時に祐天寺駅に着いて足早に店に向かうと既に行列ができている。正直、16時以降の2回転目以降であれば、並ばずに入ることができる時もあるが、串が次々に売り切れになってしまうため、早めに。長いカウンターの手前からぎゅうぎゅうと座り始め、奥はぐるっとカウンターの中まで席が続く。奥のカウンター内の席に座る際は焼き場の後ろから厨房内を通過することになり、少しドキドキ。

 早速注文。ビールも良いが、カクテルという名の特製ドリンクを注文し、黒ビールで割って飲む。注文は鉛筆で紙に書いて店員さんへ渡すのだが、つくねと、ヒモスタミナはお忘れなく。煮込み(塩もつ煮)と生ピーマンは、もし書いていなくても食べるか聞いてくれる、それくらい此処では当たり前のものなのである。串が焼けるまでは煮込みで一杯やりながら待つ。黙々と焼きに集中する大将の姿と、それとは対照的にキビキビとカウンター内を動き回る女将さんと息子さんの掛け合いを眺めるのがまた一興。つくねは外カリ、中モチで、ピーマンに挟んで食べると、パリっとした食感と肉の旨味が相まって、またお酒がすすんでしまう。ヒモスタミナは、ヒモ(小腸)のにんにく甘タレ焼きに小ネギと白ごま和え。このスタミナタレが秀逸でどの串に合わせても良い。むしろタレだけで白飯一杯イケル。余ったタレに、メニューには無い「サラダ(お新香と刻みネギのポン酢和え)」を注文し絡ませるのも旨い。

 そうこうするうちに、行列の最初のお客たちが次々とお会計を済ませ出ていき、またひとり、ひとりとカウンターへ座り、メモ用紙へサラサラと注文を書いては飲み始めていく。何杯か飲んで外に出ると、まだ16時。店内の喧騒とは対照的に、そこは閑静な住宅街。外は明るいのにほろ酔いで、なにか得した気分にさせてくれる。昼飲みバンザイ。忠弥ありがとう、と心でつぶやく。

東京都目黒区五本木1-32-28 
TEL 03(3713)7205

今、最も金沢で輝く店

respiracion(レスピラシオン)

若き3人のシェフによる
モダンスパニッシュ

 築140年の町家を改築したスペイン料理店。梅達郎氏、八木恵介氏、北川悠介氏、地元出身の若き3人のシェフが、豊かな金沢の食材の新たな魅力をふりまく。

 ある日は、スペシャリテ「インパクト 甘海老」から始まった。甘海老の殻や尻尾のビスキュイの上に身が置かれ、頭の味噌で作ったシートが被せてある。続く「パノラマ」と題した皿では、海と里の風景を表現。蕪の出汁をガストロバックで浸透させた蕪と、揚げ里芋に柚子のベシャメルソース。コロッケ状にして青海苔をまぶしたメバルと、加賀れんこんのブニュエロ。能登牡蠣とナマコのスペイン風ピッツァのコカ。

「能登牛 脂 旨味」は、加熱した牛薄切りでウニを巻いたものに、アゴ出汁と煎茶を合わせ、旨味の増幅を狙った皿。

 魚料理は「温度焦点 鰆」。みずみずしさが残るように精妙に火入れした鰆と、金沢一本太ねぎを使ったカルソッツ(焼きねぎ)の力強くも優しい甘みが出合う。

 肉料理は、「生命をいただく」と題した皿。能登牛ランプと鹿肉、黒文字に刺した猪の心臓が盛り合わせてある。いずれも火入れが素晴らしく、添えた肉厚の椎茸「のと115」の香り高く旨味の強いこと。

「加賀百万石大名行列」は、香箱蟹のパエリャ。香箱蟹の内子、外子、味噌、身のすべてと、野菜の甘み、動物的な滋味も渾然一体となって米に染み込んでいる。

 デザートは、紋平柿(もんぺいがき)で作ったエスプーマとムースとアイス、オレンジのチュイール添え。さらに、「未来へ」と題し、五郎島金時、俵屋のじろ飴、ヤギのチーズと蜂蜜、アーモンドケーキなどの甘みが登場する。

 昼夜ともに、コースは8000円~1万7000円(税・サ別)。

●respiracion 
石川県金沢市博労町67
電話=076(225)8681
営業時間=12時~15時(昼は一斉スタート)、18時~20時(L.I)
不定休

日本料理 片折

地の優れた食材の味を
卓越した技で活かした日本料理

 割烹が数多くある金沢で、片折卓矢氏の金沢食材への情熱と卓越した技により、今や一番の人気となっている。優れた食材を探しに、遠方まで生産者の元へ足を運ぶ。

 昨年11月の蟹を盛り込んだコースをご紹介。最初は「すっぽんのお粥」。清く、深い味わいに食欲の窓が開く。

「香箱蟹」の甘みに酔い、続いて目の前で鰹節を引き、とった出汁を切子のグラスで飲む。その豊かさと清らかさに唸る。

「アンコウと蕪のお椀」。凛々しい筋肉質の食感と優しい甘みを滲ませるアンコウに、すうっと均一に加熱された蕪が共鳴し合う。最初は淡いが、次第にアンコウの香りが溶け出して、味わいが深くなっていく。

 お造りは「ヒラメ」で、噛むほどに甘みが滲み出る。低温で酒蒸しした「あん肝」は、口に入れた途端溶けるように消える。続いての「迷いカツオの炙り」は、身が滑らかで、じっとりと脂が乗っている。

 肉感的な「鴨ロースの炭火焼き」が出され、いよいよ「焼きズワイガニ」の登場。蟹の体液が沸騰しないように細心の注意を払って焼かれた蟹は、優美この上ない。清らかで、みずみずしく、透明感のある甘みが、ポタリポタリと舌に落ちていく。

 その感動の息を抜くかのように、「ふろふき大根」が出され、再び「茹でガニの蟹ミソかけ」と来て、最後は「里芋煮物」と、実にシブい。野菜料理も秀逸で、焚き物という料理の重要さをわきまえた仕事が光り、しみじみとしたおいしさを感じさせながら、季節への感謝を募らせる。

 締めは、半熟茹で卵、昆布の佃煮、白ご飯、蟹ご飯、バッテラと続き、できたての「葛焼き」となる。この甘味も、去り際がいい。

 カウンター6席のみ。コース2万円~。

●日本料理 片折 
石川県金沢市並木町3-36
電話=076(255)1446
営業時間=12時~14時半(昼は水曜・日曜のみ営業)、17時~19時半・20時~22時半(夜は2部制)
不定休