青森のソウルフード

かやき

かやき

 青森県に行って食べたい郷土料理の一つが、「かやき」だ。帆立貝の貝殻を鍋にして、魚類を主体とした様々な具材を載せ、出汁や味噌で味をつけて煮る料理である。「貝焼き」が訛った言葉で、漁師が海岸で貝殻に具を載せて煮焼きした料理から発達したという。小さな鍋の中に味の変化があって、楽しみが続いていく。

 下北半島むつ市の『武田屋』で、5種類のかやきをいただいた。時間をかけて煮干しと昆布と鰹で出汁をとり、味噌は3種類を使い分け、出汁の量も塩分も具材に合わせて調整する。

 珍しいのは「タコのぶらぶら」。30分ほど茹でたタコの皮や小さく切った身の部分だけを使っている。うっすらとした味噌の風味に、タコのくにゅくにゅとした食感と甘みが滲み出て膨らみ、顔が崩れる。

 帆立の刺身を入れた「帆立の卵とじかやき」は、少しだけ煮えたところで食べてみると帆立のヌルッ、シコッとした食感と、ミルキーな味わいが広がる。火が通る途中で投入する溶き卵との相性もたまらない。

「鰊の切り込みかやき」は、生の鰊を切り、米麹と塩で漬け込み発酵させた伝統料理「鰊の切り込み」を大根おろしの上に載せてある。次第に大根おろしに切り込みの味が染みていき、酒を呼ぶ。最後のほうは濃密な味になるが、くどくなくマイルドなままなのは、発酵の力なのであろう。

「焼きガレイのかやき」は、堂々たる分厚さを誇る焼きガレイの焼けた面が香ばしく、旨みが凝縮している。これをご飯にぶっかけて食べたら、幸せだろうなぁ。

「イカの塩辛かやき」は、塩辛自体の味が綺麗で雑味なく、発酵しかかった浅さがまたよい。火が通り、載せてある大根おろしが塩辛色に染まってくると、なんともエレガントな味わいになる。匂いだけでも酒が飲める逸品である。

 虜にさせるその味わいは、青森県に暮らした先人たちの知恵の結集なのであった。

●武田屋
青森県むつ市柳町1-1-7
電話=0175(23)7811
営業時間=17時半~23時(22時半L.O.)
定休日=日曜日(月曜日が祝日の場合は連休)

すずのや/やきそば 鈴木

やきそば

 『すずのや』は、30数軒ある黒石市の名物「つゆやきそば」の人気店。

「黒石つゆやきそば」550円は、炒めたソース焼きそばを丼に入れ、鰹節だし醤油味のスープを注ぎ、揚げ玉とネギを載せたやきそば。スープに浸かっているが、堂々たる焼きそばの味である。温かい汁に浸かっているため麺はやわらかいが、伸びないように粘りの強い粉をブレンドして製麺している。一方、具で重要なのは天かすで、「天かすの食感と油分が入らないと、わさびのない寿司のように腑抜けになります」と、店主は言う。

ソースやきそばのようでありながら、かけそばのようでもあり、そのなんとも言えない曖昧さに親しみがわく。つまりソースと醤油の持つ旨さ、両方のスイッチを押されるわけで、そこがクセになるのだ。

その他、普通のやきそばが丼で出され、途中で熱々のスープを注いで変身させる「化け焼きそば」650円もおすすめ。

 もう1軒は、青森市にある昭和36年創業の『やきそば 鈴木』。3代目店主は気品があるお母さんである。

 ここの「ソースやきそば」(中盛300円・大盛350円・特盛400円)の味は丸い。麺は、市内にある十数軒のやきそば店に麺を卸している『原田製麺』の太麺を使用。そのやや四角く太いシコッとした歯ごたえのある麺にソースが絡むのだが、穏やかな甘さがあって、妙な懐かしさが脳をよぎる。2種類のソースを調合しているという、甘く旨いソースの味わいが太麺とよく合う。スルスルと胃袋に収まってしまう、優しさがあるやきそばである。

●すずのや  
青森県黒石市前町1-3
電話=0172(53)6784
営業時間=11時~15時 
定休日=火曜日
●やきそば 鈴木  
青森県青森市青柳2-8-9 
電話=017(777)8166
営業時間=10時半~18時
定休日=日曜日・月曜日