村瀬 英貴

『Barnezz』オーナー

Mangiafuoco

パスポートの要らない
イタリア食の旅

 「イタリアにイタリア料理はない。たくさんの郷土料理があるだけだ」とはよく言われる言葉である。南北に長いイタリアでは、山岳・平野・海洋と変化に富んだ気候風土が多彩な食材を育み、独特の調理法により数々の郷土料理が生まれた。

 つまり、我々日本人がイタリア料理と聞いて思いつくものの多くは、その郷土料理のひとつに過ぎないのだ。

 日本でも、それらを「イタ飯」と呼んだ軽薄な時代を経て、イタリア各地の郷土料理を楽しませてくれる専門店が増えてきた。

 その中で、今回ご紹介する『マンジャフォーコ』のコンセプトは〝イタリア食の旅〟。イタリア20州を、その郷土料理とワインで自在に旅することができるレストランだ。

 京王線初台駅からすぐ。店を切り盛りするご夫婦の朗らかなお人柄が表れた、明るく健康的な印象の店内。5月にオープンして2周年を迎えるが、すでに壁には、店を訪れたたくさんのワイン生産者らのサインが。ワインだけでなく食材においても、国内外の生産者を直接訪ねて旬のものを積極的にメニューに取り入れている。

 3月の初旬に伺った時には、ヴェネト産の太いホワイトアスパラガスを、ゆで卵を使った現地の食べ方で。また、同じくイタリアから取り寄せたラディッキオ・タルディーヴォ(チコリの仲間でキク科の野菜)のソテーは甘くほろ苦く、春の訪れを感じさせてくれる一品だった。

 そして特筆すべきは、魚介類を使ったメニューが充実している点。都内のサルディーニャ料理の名店やイタリアで経験を積んだシェフが、その日に入荷した魚に合う調理方法を提案してくれるのは楽しみのひとつだ。

 訪れるたびに異なる、旬がいっぱい詰まったメニューは夫妻の旅の記憶。

 こんなご時世だからこそ、パスポートの要らないイタリア食の旅へ。

東京都渋谷区初台1-38-10 1階
TEL 03(6276)1796