森本 チヅ子

美容家

いかだ荘山上(さんじょう)』

味と眺めと人情の宿

 ナチュラルワインの世界では知らない人はいないという「スロベニアワイン」を日本に輸入している友人に連れられ、伊勢志摩の『いかだ荘山上』を訪れました。

 先ずは、いかだ荘に着いて中に入った瞬間、眼下に広がる穏やかで美しい的矢湾(まとやわん)に心奪われると同時に、広島生まれの私は故郷に帰ったような懐かしさを感じました。そんな風景に見とれていると、「帆船の時代、的矢は風待ちの港として、船乗りさん達が航海の疲れを癒していた所なんですよ」と、見るからに優しそうな、若女将の陽子さんが教えてくださいました。そのお話を伺い、だからこんなにも癒されるのかと納得しました。

 そして、いよいよ夕食。古くは朝廷に納めていたほど豊かな海産物が育つ伊勢志摩ですから、「きっと御馳走だろうな」とは想像していましたが、それは想像をはるかに超えるものでした。目の前の湾で獲れた伊勢エビやヒラメ、アワビなど、魚介類は全て新鮮。夢見心地でいただきました。

 中でも素晴らしかったのは的矢牡蠣のプレミアムオイスターです。普通の牡蠣とは違って少し小ぶりで、濃厚なうま味がぎゅっと詰まっていて、牡蠣特有のエグみもなく、シャキシャキした不思議な食感。広島生まれの私は牡蠣は食べ慣れているつもりでしたが、今まで食したことがない味で、そのあまりの美味しさに、プレミアムオイスターの秘密が知りたくなり調べてみました。

 普通、牡蠣の養殖は筏から海に垂直に牡蠣を重ねて垂らして育てますが、プレミアムオイスターは網目で細長いドラム缶のようなものを横にしてその中で牡蠣の幼生を成長させます。そうすることで、ふ化から収穫までバラバラで育てられるようになり、沢山の餌が得られ、牡蠣自体運動することができるので美味しく育ちます。

 さらに、「真牡蠣の旬は真冬」という常識を破ったのが「三倍体牡蠣」(産卵しないように処理した牡蠣)です。これによって、さらに私たちは美味しいプレミアムオイスターを一年中食べることができるようになりました。

 そうした新しい取り組みによって生み出された、美味しい料理の数々が運ばれるごとに、感嘆と称賛を発し、幸せをかみしめながら味わう私を、友人は誇らしげに傍で微笑んで見ていました。きっと、私も次回はお友達を誘って、皆の感嘆と称賛を聞き、「こんなに食べてこの料金!」と喜んでいる姿を、傍で誇らしげに見ていることでしょう。

三重県志摩市磯部町的矢883-12
TEL 0599(57)2035