札幌の鮨

鮨菜 和喜智

 北海道出身の田村光明氏が、東京で修業後、2003年に開業。独自の研究を重ねた鮨は美しく、「鮨菜」という店名の通り、鮨の前に出される料理も素晴らしい。

6月初旬の料理は以下の通り。

「カニ茶碗蒸し、口子添え」。茶碗蒸しというよりカニ主体の卵寄せ。カニの穏やかな甘みを、卵黄の甘みがそっと持ち上げる。

「シマアジ皮炙り、背と腹身」の次は、「ウマヅラハギ昆布締め、肝のせ」。この魚の旨味を感じるように切られた厚さが絶妙で、じっとりとした甘みが滲み出る。

「ツブ貝とサクラマス、オクラのせ」。塩もみしたツブ貝は食感よく、コリッでもサクッでもない噛み応えを感じさせつつ、サクラマスの脂、オクラの粘りと一つになる。

「鮑ご飯」。鮑に香りがあり、味が濃密。

「太刀魚の塩焼」。空気を含んだような食感、素朴な甘み。「蓴菜(じゅんさい)、アスパラすり流し」は、白アスパラの香りが素晴らしい。

「ホタテ磯辺巻き」。醤油とホタテの単調な甘みを、紫蘇が引き締める。

ここから握り。「アオリイカ」は、包丁目を入れて、ねっとりと甘い。「フエダイ」。噛んでも噛んでも、旨味が途切れることなく湧き出てくる。うまい!

品がある「中トロ」に続き、「あん肝」。なめらかで見事な血抜き。舌の上で崩れる。

片面を軽く炙った「ホッキ」の次は、「シマエビ」。甘エビともボタンエビとも違う、このエビならではの甘みが舌に流れる。

「ミニウニ丼」の次は、「キンキ」。片面を少し炙ったキンキは、余分な脂は落としながら香りが増して、食感の複雑さがあり、ピタリと赤酢の酢飯と合う。甘みと旨味が相乗して体がのけぞるほどうまい。

最後は、ガリと鯖を巻いた「鯖巻き」。

●鮨菜 和喜智
北海道札幌市中央区南二条西25-1-22
電話=011(640)3768
営業時間=18時~20時、20時~22時 (2交代制)
※日のみ昼営業 12時~14時
定休日=月曜日・月1回不定休

鮨一幸

全国の鮨屋や産地を巡り
研究を重ねて独自の仕事を確立

店主の工藤順也氏は、25歳で真駒内郊外で父が営んでいた鮨屋を継ぎ、休日は全国の鮨屋や産地を巡り研究を重ね、独自の仕事を確立。予約の取れない店へと成長させ、2012年一つ星、2013年に札幌に移転し、2017年に二つ星に輝く。

その独自の仕事の表れの一つが、年間出される「カスゴ」(チダイの子供)の握りだろう。「赤ちゃんゆえに、3時間を過ぎると味が抜けてしまう」との理由で、締めてから3時間後に握りのトップバッターとして登場する。そのカスゴと、仕込んでから1時間半経った酢飯が共鳴し、まるで一つの生き物のような食感を感じさせる。「刺身から握りに移る一貫めなので、刺身を超える衝撃がなくてはいけない」という狙い通り、余分な水分が抜け、品のある甘みだけを厚い身に潜ませたカスゴはねっとりと舌の上で身悶える。その時、散りゆく酢飯の粘りがカスゴの肌合いと合一し、艶を滲ませながら口の中から消えていく。

もう一つは5月の「生のシャコ」の握り。シャコは自己消化が激しく、採られた瞬間から味が落ちていく。そのため港で漁師から受け取ったら、車を飛ばして店まで運ぶ。店で手当てをし、自己消化の速度を緩める。切り口から見えるオレンジ色の卵はとろりと輝いて、我々を誘う。柔らかな身にそっと歯を入れると、色香をたっぷりと含んだ濃密な甘みがポタポタと滴り落ちる。

その他の5月下旬の料理は、以下の内容。

「アマテガレイの刺身」 「鮑」「キンメのしゃぶしゃぶ」「子持ちヤリイカのウニ詰」「口子」。握りは、「サヨリ」「赤身」「中トロ」「余市バフンウニ」「太刀魚」「鬼アジ」「煮ホタテ」「穴子」「玉子」「鉄火巻き」など。

また、7月に出される、さっと茹でた「トリ貝」も素晴らしい。

●鮨一幸
北海道札幌市中央区南二条西5-31-45 スカレッタビル2階
電話=011(200)1144
営業時間=18時~、20時半~(2交代制)
定休日=水曜・祝日・不定休