特集リスト

最新・東京の中国料理店

中國菜 四川 雲蓉(ユンロン)

高い実力を持つ若き料理人による
四川を中心とした料理

 原宿『龍の子』、麻布十番『中國菜 老四川 飄香(ピャオシャン)』、本場中国で修業した若き料理人、北村和人さんが昨年12月に開店。四川を中心とした料理がいただける。

 ある日の8000円のコースから一部をご紹介。まずは前菜6種から始まった。茄子とピータン、万願寺唐辛子の黒酢ソース「擂椒白茄子皮蛋」、シマエビのレモングラスと香菜、酸辣ソース「酸辣生態蝦」、甘辛い品の良い味付けが光る「涼拌空心菜」など。前菜だけで極めて高い実力が窺える。

 続いては、滋味深く、澄んだ味わいのスッポンと烏骨鶏のスープ「霸王別■」。

「宮保夏天蠣」は、宮保(ゴンバオ)という四川風のソースで、揚げた岩牡蠣(三陸赤崎産)を絡めたもの。牡蠣のミルキーなエキスと甘酸っぱいソースとが抱き合う悦楽がある。

「乾焼刺?參」。キックの効いた本場四川のチリソースの中で、高価であろう小さく棘が立ったナマコが輝いている。

「?椒蒸東星斑」。身が盛り上がった見事な赤ハタ(長崎県産神経〆)に、納豆のような香りがする黄豆?、泡菜(パオツァイ)(漬物)の酸味、質が高い山椒の抜けがいい痺れをもたらして、辛味が渾然一体となった味わいに酔う。

「回鍋甜燒白」。豚バラを6時間蒸して切ってから、餡饅に入れる餡ともち米を一緒に蒸しあげて煎り焼きしたもの。脂、餡、もち米、3者の甘みが溶け合った優しい味。

 〆は、自家製麺による、羌族■肉(自家製豚肉燻製)と空芯菜の泡菜の「酸辣湯麺」。新生姜の泡菜の塩分と、少量の中国の醤油、保寧醋(パオニンツゥ) (四川の黒酢)、自家製辣油、新ニンニクで味付けしてあり、止まらないおいしさである。

 最後のデザートは「眉山紅糖冰粉」。ゼリーに似た冰粉(ビンフェン)と、桃の木の樹液などを合わせた、四川風あんみつ。

●中國菜 四川 雲蓉 
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-14-1
電話=0422(27)5988
営業時間=11時半~14時(L.O.)、18時~21時半(L.O.)
定休日=月曜日・火曜日(祝日の場合は翌日定休) 

サエキ飯店

 神宮前『楽記』の料理長だった佐伯悠太郎さんが独立して4月に開いた店。香港の一流店で食べられるような力ある心打たれる料理に、早くも予約至難となっている。

 ある日の8000円のコースをご紹介。

「伊達鶏の紹興酒漬け」。最初の一口から嬉しくなってくる、綺麗な味である。良い塩梅を知っている料理人の味である。

「豚耳煮こごりと鶏レバーのムース」。中国にはない酒のアテ。煮こごりをムースにつけると、無性に酒が恋しくなる。

「3種の揚げ物」。南乳に3日間漬けたズッキーニ、エシャロットとパクチーで煮つけた豚肉、出汁で炊いた大根餅の揚げ物。いずれも香りと甘みの複雑さがあって、これまた酒が進む味である。

「ツブ貝の煮物」。広東米酒とクミン、豆板醤と二番出汁で炊いた料理。様々な香りが渦巻く中、ツブ貝がそっと乳白色の甘みを覗かせる。その兼ね合いがたまらない。

「うずら肉のスープ」。素晴らしい。一口飲んだ瞬間に体の力が抜けていく。うずらの滋味に溢れ、上湯、党参、蓮の実、竜眼肉、クコの実、杏仁に、ココナッツジュース、生姜の味や香りが溶け込んで、雑味なく、豊かな旨味に溢れている。

「ハタの唐揚げ醤油煮」。凛々しいハタの肉が爆ぜ、コラーゲンの甘みが舌を包む。

「冬瓜と春雨の上湯煮」。美しい味である。淡味に仕上げ、品格ある上湯の滋味が冬瓜と春雨をエレガントに輝かせている。

「乳鳩醤油煮」。鳩の鉄分と煮汁の深く丸い旨味が溶け合って、唸るような、鼻息が荒くなるようなうまさである。

 〆は、ご飯の香ばしさとハムユイの香りが混ざり合った「ハムユイ炒飯」と「上湯麺」。

 デザートは「紹興酒キャラメルパルフェ」 と「マンゴーパルフェ」。

●サエキ飯店 
東京都目黒区三田2-10-30 荒井ビル1階 
電話=03(6303)4735
営業時間=18時~24時
定休日=不定休

札幌のラーメンとスープカレー

喜来登

定番の味噌ラーメンでは、『喜来登』をおすすめしたい。ネギをてんこ盛りにし、もやしがたっぷり入った味噌ラーメンは、余計なことをなにもしていない素直さがある。そして食べ進むにしたがって、優しい味から濃い味に変わっていく不思議がある。出過ぎずに、ふんわり心を捉える塩梅もいい。挽き肉も昔ながらの味わいで、それもまた穏やかさに一役買っている。

●喜来登 
北海道札幌市中央区南2条西6-3-2
電話=011(242)6070
営業時間=11時40分~21時半(LO)
定休日=木曜日

高級麺料理 昼膳 無聊庵

独創的麺料理でおすすめは、『高級麺料理 昼膳 無聊庵(ぶりょうあん)』。夜は居酒屋となるが、麺料理は昼だけの営業で、10名限定予約制。

メニューは6種類で、ホゲット(ラムとマトンの間)、蝦夷鹿、キャビア、ウニ、長芋、山わさびなど、ラーメンとは思えないような料理名が並ぶ。

「足寄町石田めん羊牧場さんのホゲット肉のグリル、羊骨と鰹出汁の熱々麺」3000円を頼むと、太田了光(のりみつ)店長が「少々おまちください」と言って、肉を焼きだした。肩ロースをソテーし、特製麺を茹で、羊の骨とアキレス腱、鰹節でとったスープを張り、特別な白アスパラと緑アスパラを載せる。

スープを飲めば、鰹節の香りの向こうから羊の大群がやってきて、味覚を鼓舞する。麺をすすれば、小麦の香りが立ち上り、噛んでいくと、ほのかな甘みが顔を出す。ホゲットに齧り付けば、勇壮なる滋味が舌に滴り落ちる。アスパラも香り高く、緑と白それぞれのミネラルが満ちている。生命力のたくましさに唸り、豊かな味わいに笑う。もはや麺料理ではない、北海道の凛々しき大地である。北海道の厳選した食材に敬意を払って、プロが作り上げた傑作である。

「せたな町ファームブレッスドウィンドさんの放牧黒豚 ローストポークと季節の野菜、トンコツと鰹の合わせ出汁」2000円も、豚肉の美しい味に目を丸くする。

共に、デザート3種とハーブティー付き。

●高級麺料理 昼膳 無聊庵 
北海道札幌市中央区南2条西4 oyoyo valley2階 Magazzino内 
電話=080(9617)5430
営業時間=11時50分~13時45分
定休日=日曜日・月曜日・火曜日(臨時休業あり)

ソウルストア

『ソウルストア』は、今までにないスープカレーが楽しい店である。「のりたまチキン(磯のりと温泉卵と野菜)のカレー」、「紅茶豚となめこのカレー」、「牛肉の塩煮込みと舞茸天ぷらのカレー」、「赤い豆腐のカレー」といったふうに変わっている。

トッピングも、ブーラージャン(粗挽き豚肉をスパイスや香味野菜、ジャンなどで炒めたもの)、寄せ豆腐、海老香り粉、ごぼうバー、よだれ鶏、紅奴(梅風味の豆腐)、紅茶豚、ソーキと、こりゃあ悩む喜びがあるじゃありませんか。

カレースープは、「クラシック」、濃厚で甘みのある「BOSSA」、ココナッツと柑橘が混ざる「PYCHE」、 辛い中華風の「自家製麻辣醤」の4種から選ぶ。

初めてなら「クラシック」に、不動の人気No1だという「チキンと野菜のカレー」の組み合わせもいいが、「超粗挽きラムと青山さんちのよせ豆富のカレー」もおすすめ。ここに香菜、白菜とグレープフルーツのアチャール(漬物)をトッピングするのはどうだろう。

ラム挽き肉を噛み締めれば、ラムの香りと様々なスパイスの香りが勇壮に響き合う。さらに、辛さの中で優しい豆腐の甘みが舌に流れる。その辛さと優しさのせめぎ合いが、たまりません!

店の名は『ソウルストア』と、韓国料理風だが、いやそうじゃない。スープカレーの可能性を探るべく、日夜魂を焦がしていますという、心意気なのかもしれない。

●ソウルストア 
北海道札幌市中央区南3条西7-3-2 F-DRESS7BLD 2階 
電話=011(213)1771
営業時間=11時半~15時(LO)、17時半~20時半(LO)
定休日=不定休

札幌の鮨

鮨菜 和喜智

 北海道出身の田村光明氏が、東京で修業後、2003年に開業。独自の研究を重ねた鮨は美しく、「鮨菜」という店名の通り、鮨の前に出される料理も素晴らしい。

6月初旬の料理は以下の通り。

「カニ茶碗蒸し、口子添え」。茶碗蒸しというよりカニ主体の卵寄せ。カニの穏やかな甘みを、卵黄の甘みがそっと持ち上げる。

「シマアジ皮炙り、背と腹身」の次は、「ウマヅラハギ昆布締め、肝のせ」。この魚の旨味を感じるように切られた厚さが絶妙で、じっとりとした甘みが滲み出る。

「ツブ貝とサクラマス、オクラのせ」。塩もみしたツブ貝は食感よく、コリッでもサクッでもない噛み応えを感じさせつつ、サクラマスの脂、オクラの粘りと一つになる。

「鮑ご飯」。鮑に香りがあり、味が濃密。

「太刀魚の塩焼」。空気を含んだような食感、素朴な甘み。「蓴菜(じゅんさい)、アスパラすり流し」は、白アスパラの香りが素晴らしい。

「ホタテ磯辺巻き」。醤油とホタテの単調な甘みを、紫蘇が引き締める。

ここから握り。「アオリイカ」は、包丁目を入れて、ねっとりと甘い。「フエダイ」。噛んでも噛んでも、旨味が途切れることなく湧き出てくる。うまい!

品がある「中トロ」に続き、「あん肝」。なめらかで見事な血抜き。舌の上で崩れる。

片面を軽く炙った「ホッキ」の次は、「シマエビ」。甘エビともボタンエビとも違う、このエビならではの甘みが舌に流れる。

「ミニウニ丼」の次は、「キンキ」。片面を少し炙ったキンキは、余分な脂は落としながら香りが増して、食感の複雑さがあり、ピタリと赤酢の酢飯と合う。甘みと旨味が相乗して体がのけぞるほどうまい。

最後は、ガリと鯖を巻いた「鯖巻き」。

●鮨菜 和喜智
北海道札幌市中央区南二条西25-1-22
電話=011(640)3768
営業時間=18時~20時、20時~22時 (2交代制)
※日のみ昼営業 12時~14時
定休日=月曜日・月1回不定休

鮨一幸

全国の鮨屋や産地を巡り
研究を重ねて独自の仕事を確立

店主の工藤順也氏は、25歳で真駒内郊外で父が営んでいた鮨屋を継ぎ、休日は全国の鮨屋や産地を巡り研究を重ね、独自の仕事を確立。予約の取れない店へと成長させ、2012年一つ星、2013年に札幌に移転し、2017年に二つ星に輝く。

その独自の仕事の表れの一つが、年間出される「カスゴ」(チダイの子供)の握りだろう。「赤ちゃんゆえに、3時間を過ぎると味が抜けてしまう」との理由で、締めてから3時間後に握りのトップバッターとして登場する。そのカスゴと、仕込んでから1時間半経った酢飯が共鳴し、まるで一つの生き物のような食感を感じさせる。「刺身から握りに移る一貫めなので、刺身を超える衝撃がなくてはいけない」という狙い通り、余分な水分が抜け、品のある甘みだけを厚い身に潜ませたカスゴはねっとりと舌の上で身悶える。その時、散りゆく酢飯の粘りがカスゴの肌合いと合一し、艶を滲ませながら口の中から消えていく。

もう一つは5月の「生のシャコ」の握り。シャコは自己消化が激しく、採られた瞬間から味が落ちていく。そのため港で漁師から受け取ったら、車を飛ばして店まで運ぶ。店で手当てをし、自己消化の速度を緩める。切り口から見えるオレンジ色の卵はとろりと輝いて、我々を誘う。柔らかな身にそっと歯を入れると、色香をたっぷりと含んだ濃密な甘みがポタポタと滴り落ちる。

その他の5月下旬の料理は、以下の内容。

「アマテガレイの刺身」 「鮑」「キンメのしゃぶしゃぶ」「子持ちヤリイカのウニ詰」「口子」。握りは、「サヨリ」「赤身」「中トロ」「余市バフンウニ」「太刀魚」「鬼アジ」「煮ホタテ」「穴子」「玉子」「鉄火巻き」など。

また、7月に出される、さっと茹でた「トリ貝」も素晴らしい。

●鮨一幸
北海道札幌市中央区南二条西5-31-45 スカレッタビル2階
電話=011(200)1144
営業時間=18時~、20時半~(2交代制)
定休日=水曜・祝日・不定休

札幌・函館のイタリアン

セミーナ

北イタリアの郷土料理を中心に
北海道の食材が揃う

 同じ場所にあった人気店「サグラ」の田中寿史シェフが、居抜きで開店。壁には道内48の生産者を記した黒板が掲げられている。4月のある日のコースより。

「ホタテとあずき菜 発酵レモン」。ホタテのミネラルとレモンの酸味が手を結ぶ。

「本マスのスモーク桜のチップ、ファットリアビオ北海道のデイル入りリコッタチーズ、貝の汁でゆでた菜花」。菜花の味が濃いこと。甘みだけでなく強い旨みが奥底にあり、本マスの味を膨らます。

「北島農場の豚のプロシュート・コットと春紅玉に山わさび、天然クレソン」。リンゴの柔らかい甘みとハムの塩気、山わさびの刺激が見事に重なり合う。

「無農薬全粒粉の自家製フォカッチャ」。噛めば歯を押し返す弾力があって、小麦の甘い香りと焦げ香が漂い、飲み込む時にふわりと鼻に抜けていく。いつまでも噛んでいたい滋味がある。

「白アスパラとグリーンアスパラのグリル、スクランブルエッグ、北島農場のピートスモークのベーコン」。アスパラ、卵、ベーコン、3者の甘みと香りが出合う喜び。

「余市の一年ムール貝と松前の海苔のパスタ」の次は「オホーツクの流氷明け毛ガニと新ひだか町の木の芽のリゾット」。毛ガニの甘みと木の芽の爽やかな刺激香が、美くし抱き合う。

「北島農場の豚のアロスト」。豚の甘い香り、脂の溶け具合とコクが素晴らしい。

「四種のキノコのタヤリン」。極細タヤリンに、キノコの香りがまとわりついてなんともうまい。最後のドルチェは「パンナコッタとイチゴだけのジェラート」。

豊かな北海道の地で、薬を与えず健やかに育った野菜と海の生物、陸の生物を生かしたい。そんな田中シェフの哲学を実直に表現した料理は、精神を安寧へと導く。

●セミーナ 
北海道札幌市中央区南1条西8丁目20-1 ライオンズMS大通公園 小六ビル1階
電話=011(219)4649
営業時間=12時~13時(L.O.)、17時半~24時(L.O.)
※土日祝のランチは13時半(L.O.)
不定休/dd>

コルツ

希少な道産ワインと
多彩な料理とのマリアージュ

 函館出身の佐藤雄也シェフによる、地元の産物を生かした、丁寧な仕事が光る数々の料理が魅力。4月のある日のコースより。

「ヤギのチーズと黒にんにくの焼き菓子」「新玉ねぎの冷たいスープと生うに」に続いて「カルパッチョ」。脂が乗ったイシガレイ、身質がしっかりとしたクロソイ、ニシン、ババガレイ、マコガレイに、セミドライ大根、わさびドレッシングが合う。

 次は前菜。「白樺樹液」「豚スネ肉、山葡萄ソース」「蓴菜ピクルス」「大沼のエビのバルサミコとカラメルの佃煮」「しどけの無濾過菜種油とごま和え」「パテ・ド・カンパーニュ、紫玉ねぎ甘酢漬」「浅葱とマスカルポーネ、山わさびとホッキ貝の和え物」「燻製鯨の豆腐とサワークリームペースト挟み、焼きなすソース」「熊肉のリエット、栗粉で作ったケークサレ」「王様しいたけの子供、椎茸パウダーで作ったチャルダ」など、実に楽しい盛り合わせ。

「バッカラ・マンテカート」。干しダラを煮てペースト状にしたものに、細かく切った胃袋も混ぜてあり、食感が面白い。

「ジャガイモとマスカルポーネのムース、鶉の卵黄、十勝マッシュルームのスライス」。ジャガイモ、マスカルポーネ、鶉の卵黄の淡い甘みに酔っていると、後からマッシュルームの香りが漂う。素晴らしい!

「岩海苔を巻いたホタテのソテー」「枝豆のラヴィオリ」の次は「蝦夷鮑、鮑の煮汁と百合根のソース」。蒸し煮した蝦夷鮑に歯を入れると、海の滋養が溢れ出し、そこに百合根の上品な甘みが流れ込む。

「キンキの若布ソース」「ジビーフのしんたま」「あずき菜とマスのスパゲッティ」と続き、ドルチェ2皿でコースが終了。

希少な道産ワインが数多くあり、ぜひ料理とのマリアージュを楽しみたい。

●コルツ 
北海道函館市本町4-10
電話=0138(55)5000
営業時間=12時~13時半(L.O.)、18時~21時半(L.O.) 
定休日=月曜日・日曜日のディナー

高知のイタリアン

オンベリーコ

自家製ハムやソーセージ
丁寧な作りが光る逸品揃い

 メニューにはハムやソーセージ、カプレーゼ、カルボナーラなど、おなじみの料理名が並ぶ。「ハム・ソーセージ類は何がありますか?」とシェフに聞くと、「今日は3種類のサルシッチャがあります。『土佐あかうし』の首、鹿肉、『土佐はちきん地鶏』の腿と胸で作ってます。あとは、モルタデッラ、ソプレッサータ、これも自家製です」

 手間のかかる仕込みをしている。前菜は、その自家製ハム・ソーセージ類がおすすめ。豚の挽肉と脂などによる「モルタデッラ」は、余計な旨味がない自然な味で、どこまでも優しく、豚の頭、耳、舌などによる「ソプレッサータ」は、コラーゲンの甘みに富んでいて素晴らしい。豚腿と土佐はちきん地鶏のレバーによる「パテ・ド・カンパーニュ」も、丁寧な作りが光っている。

 そのほか「サルシッチャ」は、旨味が弾ける赤牛首、後から鉄分が湧き上がる鹿肉、鶏の香りに満ちた胸や腿肉によるものなど、三者三様の個性があり、実に楽しい。

「インサラータ・カテリーナ」は、羊のチーズ、自家製塩漬けアンチョビ、ケイパー、トマト、葉っぱ類、ゆで卵によるサラダで、アンチョビの深い旨味が利いている。

「トリッパの煮込み」は、仔牛の胃を使い、ミントを利かせたローマ風。「土佐はちきん地鶏のアロスト(ロースト)」は、よく運動した鶏ならではの滋味に富んでいる。

 パスタは3種を。「トマトソース」は、徳谷トマトの甘みと酸味が生きていて、赤牛の逞しさと豚肉の優しさが抱き合った「ボロネーゼ」は、旨味が穏やかで丸い。さらに「カルボナーラ」は、パンチェッタの優しい塩気とチーズの旨味、卵の甘みが一体化した見事な味わい。

「イタリアンは和食やフレンチに比べると手間暇がかからないと思われてますが、実は時間がすごくかかる料理なんですよ」とシェフ。その顔は妙に嬉しそうであった。

●オンベリーコ 
高知県土佐郡土佐町田井1353-2
電話=0887(72)9186
営業時間=11時~14時、18時~21時 
定休日=水曜ディナー・木曜 
※ディナーは要予約

レストラン ティラ

厳選した高知県産食材を使った
静かに丸く心を包む料理

 エーゲ海のサントリーニ島に建つホテルをそのままにイメージした、白壁と青い屋根の「リゾートホテル ヴィラ サントリーニ」内のレストラン。若き井原尚徳シェフの手による、厳選した高知県産の食材を使った、静かに丸く心を包む料理がいただける。ある日のディナーは以下の通り。

「高知産インカのめざめを使ったびっくりトリュフ」に続き、 「カツオのタリアータ」。黒にんにくとお米のソース、土佐酢の泡、塩と四万十海苔、春野町キャビア、フェンネルやディルなど数種類の野菜のガスパチョ添え。3日間かけて漉したガスパチョの澄んだ味が良く、カツオとマリアージュさせれば、海と山の共鳴が響く。

「フォアグラのブディーノ(フラン)、コンソメと蕪のすりながし」。蕪の生き生きとした甘みと香りが、フォアグラの味をより華やかにさせる。

「ホエーに漬けた黒ムツの炭火焼、ヴァンブランソース、原木なめこ、焼き菜花」。黒ムツは脂をじっとりとまとわせ、身が舌に吸い付くように口の中で崩れていく。「うまい」。思わず呟いた。ヴァンブランソースは、旨味と酸味で料理を膨らませ、焼き菜花は香りと苦味でアクセントをつける。

「ブラックカカオとナツメグを練りこんだタリアッテレ、猪と四方竹のラグーソース」。上にチョコレートを削ってかけてあり、甘い香りの中で猪の滋味が笑う。

「土佐あかうしハラミの炭火焼」。噛むと、血の味と脂の甘い香りが混じり合い、和牛としてのたしなみを感じる。さらに「塩二郎」を振りかけると、甘い味わいが膨らんで、顔が崩れるのであった。

 最後は、「池上千佳さんが作る土佐ジローの卵」によるTKGで締め、デザート。

●レストラン ティラ 
高知県土佐市宇佐町竜599-6 リゾートホテル ヴィラ サントリーニ内
電話=088(856)0007
営業時間=11時半~13時(LO)、18時~19時(LO)
不定休 
※ランチ・ディナー共に要予約

高知の魚が美味しい店

ゆうき屋

高知といえばカツオ
質の高い刺身と銀皮造りをぜひ

 ご夫婦で切り盛りする寿司・小料理屋さん。市内にカツオが食べられる店は多々あるが、質の高さを考えれば、『ゆうき屋』。事前予約を入れて、カツオもお願いし、来店するといいだろう。

 刺身と銀皮作りがあるが、両方食べてほしい。赤い身に歯を立てれば、むちっとした歯応え。この上なく新鮮で、品のある脂の甘みの奥に逞しい鉄分が眠っている。こんなカツオは、他ではなかなか出合えない。

 さらにすごいのが、滅多にとれない幻の魚「モンスマガツオ」。もっちりとした身はきめ細かく滑らかで、脂をしっとり漂わせ、消えていく。中トロのようだが、マグロの圧倒感とは違う神秘的な味の奥行きがある。

 そして「金目鯛」。脂は乗っているのだが、さらりと舌を流れていく。伊豆より海水が高温なのに、身も味もだれていない。これが高知の金目鯛だという。仏(ぶっ)手柑(しゅかん)を搾って、醤油にチョンと浸けて食べれば、優しい甘みがゆるゆると流れて、なんとも旨い。

 さらに、腹身はシコシコと、背側はもちもちと歯を喜ばせる「清水サバ」、淡白ながら奥底に滋味を覗かせる「アカバ」、柚子で味付けた酢飯と〆サバによる「いお寿司」、脂がほどよい「鰻の握り」など。

 締めは「カツオ茶漬け」で決まり。熱々の出汁をかけ、色が変わった頃合いで掻き込めば、出汁にカツオの滋味が溶け込んで、笑いが止まらない。一心不乱に食べ、完食。

●ゆうき屋 
高知県高知市帯屋町1-9-251
電話=088(873)0388
営業時間=18時~材料が無くなり次第終了 
定休日=日曜日

池澤本店 上町食堂

1階の魚屋で魚と調理法を選び
2階の食堂でランチを楽しむ

 高知で150年営む老舗魚屋『上町池澤本店』。1階の魚屋で食べたい魚を選び、2階の『上町食堂』にて好みの調理法(塩焼き、フライ、天ぷら、刺身など)で料理してくれる。天然シマアジの刺身、カツオのたたき、サバの塩焼き、カツオの心臓塩焼きに、ポテサラや野菜の煮物などの惣菜、海鮮丼や定食などもある。もうキラキラと輝く魚を見ているだけでコーフンする。

「スマガツオと天然シマアジは刺身にして。ホウボウとブリの白子は煮付けで。煮付けは時間かかる? 残念。なら、この太いマサバ焼いて。あとドロメもね」といった具合に次々と頼むのである。これは落ち着いていられない。しかも、スマガツオ980円、天然シマアジが1850円と、安い。

 サバは品のいい脂をまとっていて、すかさず「ご飯!」と叫び、カツオはきめ細やかな身に、しっとりと脂を乗せている。天然シマアジは、甘い脂がすうっと溶ける。魚、ご飯、魚、ご飯と食べれば、幸せ!

●上町池澤本店 上町食堂 
高知県高知市上町4-3-11
電話=088(823)5225
営業時間=毎週木金土の3日間のみ営業11時~14時
定休日=日曜日・月曜日・火曜日・水曜日・祝日

魚兼

魚屋の立ち食いスタンドで
土曜日限定の美味しい魚ランチ

 街道沿いにある小さな魚屋。その魚ケースの前に小さなテーブルを一つ置き、毎週土曜日のみ、魚料理を出す。立ち食いながら、どの料理も割烹並みのレベル。ご主人は、京都の割烹『あと村』で働いたのち、家業の魚屋を継がれた料理人なのである。

 イワシの酸味と旨味が、甘酢で味付けて2度濾したおからのきめ細やかさと共鳴する「ウルメイワシのおから寿司」。塩麹漬け鮎を酢洗いした「鮎寿司」。出汁の味が決まった「冷やし梅茶碗蒸し」。そのほか、「赤魚のすまし汁」、「りゅうきゅうとウルメイワシの酢の物」、「とうもろこしのかき揚げ」、「マグロ漬けと葉わさびのたたき」、「塩麹漬けウルメイワシの焼き物」、「出汁巻き卵」、「筍とうすいえんどうの煮物」など、どの料理にも気品があり、素晴らしい味わい。

●魚兼 
高知県吾川郡いの町藤町15
電話=088(892)0216
営業時間=10時~19時
定休日=市場が休みの水曜日・日曜日・祝日
※立ち食いスタンド営業=毎週土曜のみ営業11時~14時(春~秋限定、仕入れによって休む場合もあり)
営業状況はFacebookページで確認を
https://www.facebook.com/sakanayauokane

盛岡、宮古のウマい店

和かな 盛岡本店

最上質の肉を熟練の技で焼き上げる
ステーキ・鉄板料理

 熟成庫でエイジングされた最上質の「いわて短角牛」や「前沢牛」を堪能できる、盛岡を代表するステーキの店。1階と2階に70席、半個室と完全個室と、様々なタイプのテーブルで鉄板焼きをいただける。

 赤茶色をしていることから、郷土玩具の「赤べこ」の愛称で親しまれてきた岩手の短角牛は、国内年間流通が1%程の稀少ブランド。脂肪分が少ない赤身肉は噛みしめるほど美味しい。同店では久慈市の『田村牧場』から一頭買いをしているが、自然放牧、自然交配と希少であるため、事前予約をおすすめしたい。一方、奥州前沢牛はとろけるような霜降りで岩手を代表する肉。

 特選ステーキコースは、①岩手県産黒毛和牛のサーロイン150gまたはフィレ100g、8000円 ②短角牛サーロイン150gまたはフィレ100gまたは希少部位、7000円 ③短角牛のおまかせ部位120g、4800円 ④和かな厳選牛おまかせ部位150g、4800円から選べる。そのほかアワビや伊勢海老、季節の魚介と特選ステーキを楽しむコースもあるが、締めのご飯はガーリックライスがおすすめ。

 鉄板の上で繰り広げられる熟練の技はもちろん、坂下大輔社長の食材に対する情熱が肉のみならず前菜や付け合わせの野菜、香の物にまで行きわたっていて、こちらでは最上質のものを楽しむことができる。

●和かな 盛岡本店
岩手県盛岡市大沢川原1-3-33
電話=019(653)3333
営業時間=11時半~14時(L.O.)、17時~20時半(L.O.)
定休日=火曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始
http://www.wakanagroup.com

よし寿司

四季折々の新鮮な魚介を
リーズナブルに楽しめる人気店

 宮古駅から徒歩5分。地元宮古の人々に愛され続ける『よし寿司』は、四季折々の新鮮な魚介をリーズナブルにいただける。

 ある日のお造りは、チダイ、カツオ、マグロ、イカ、鰯、海老と、それぞれの歯ごたえと香り、うま味を楽しむ一皿。続いて蛸、マツモ、ホヤ、メカブの酢の物。「マツモ」は岩礁に生息する海藻で、一般には流通していない高級品。水揚げしてすぐに乾燥させたものが売られているが、酢の物やお椀に入れると豊かな磯の香りが広がる逸品だ。続いて「どんこ」と呼ばれるアイナメの肝和えと海老の頭の塩辛。さらにワカサギ、根昆布、穴子の天ぷらに、キンキの焼物。酒は、市内浄土ヶ浜近くの湧き水で造られる「千両(せんりょう)男山(おとこやま)」を合わせる。握りは、イシカゲ貝、マグロ、海老、鰊、雲丹に、先ほどのチダイのお頭を潮汁でいただく。

 旬の味に舌鼓を打つ客で連日盛況。

●よし寿司 
岩手県宮古市保久田4-27
電話=0193(62)1017
営業時間=11時~14時(L.O.)、16時半~21時半(L.O.)
定休日=月曜日・不定休

Ristorante KATUYAMA

地物の山海の幸と新鮮な野菜を
ふんだんに使ったイタリアン

 盛岡で人気イタリアンを経営していたオーナーシェフの勝山國信さんが地元宮古に戻り開店した店。ランチに訪れたこの日の前菜は、マンボウのこわた(内臓)、サバのマリネ、穴子、イシカゲ貝、ツブ貝、ホヤクリーム、「天使の海老」、鮎のマリネ、鯨のフリットと、この一皿だけでも充分に楽しめる。パスタはトマトの酸味が繊細に調和するワタリガニとトマトのスパゲティ。メインは牛タンの煮込み。こっくりとしたワインソースが味わい深い。地物の山海の幸と新鮮な野菜をふんだんに使う勝山さんのイタリアンはまだまだ奥が深そうだ。

 黄色が目印のウッディな造りの一軒家。骨つき生ハムが置かれたカウンター席でシェフと会話を楽しんだり、明るい陽が差し込む席でおしゃべりしながらランチする地元の主婦や、記念日のディナーに訪れるという常連客に愛されている。

●Ristorante KATUYAMA 
岩手県宮古市黒田町6-29
電話=0193(62)0022
営業時間=11時半~14時(L.O.)、18時~21時(L.O.)
定休日=水曜日

鹿児島の寿司屋

鮨匠 のむら

ご主人の軽快なトークも楽しい
魚への愛に満ちた逸品が揃う

「いろいろ喋るけど、気にしないで。マグロと同じで喋ってないと死んじゃうからね(笑)」という前振りから始まる、ご主人・野村伸治氏のトークも楽しく、初めての客でも寛いで過ごせるだろう。11月のある日のラインナップは以下の通り。

 刺身は、旨味のあるヒラメ、2日間寝かせた天然カンパチ、表面をサッと炙ったマナガツオ、甘い香りが広がる茹でタコ。

 続く小鉢には、酢飯の上に白子。滑らかで思わず唸るハガツオ。イクラと菜の花をのせた茶碗蒸しは、餅とさつま芋入り。

 そして握り。アオリイカ。細かく包丁目を入れ上にゴマと塩、ゆず皮。ねっとりと甘く、温かい香りがある。メイチダイ。じんわりと焦らすような、しぶとい甘みあり。

 スジアラ。シコッとした歯応えで、噛むと甘みが滲み出る。世界で鹿児島しか獲れないという珍しいナミクダヒゲエビ。〝身がしまった甘エビ〟という味わい。

 茹でたて車エビ。見事な甘さで、香り高い。皮ごと炙って皮を外したノドグロ。品のある脂で、艶のある味わい。コハダ。浅めの締めで、しなやかに酢飯と合う。

 スマガツオ。本日のベスト。滑らかな身にすうっと歯が包まれる。口をゆっくり動かすと、品のいい脂が流れ、甘い香りが口の中に広がっていく。あまりの旨さに、目を閉じて何も言えず、しばし動けなかった。

 シマアジ。噛めば、シコッとして凛々しい。サヨリ。ほのかな甘みが素晴らしい。

 アワビ。しなやかな食感。口の中から消えると、喉の奥から香りが立ち上ってくる。
「卵かけご飯です」と出されたのがイクラの握り。卵本来のねっとり濃密な甘み。

 仙鳳趾(せんぽうし)の牡蠣 。味に透明感がある。バショウカジキ。脂のきれいさが光っている。

 蒸した太刀魚。煮穴子。最後は、山芋と麦味噌とネギの味噌汁。しみじみと旨い。

●鮨匠 のむら 
鹿児島県鹿児島市松原町6-2 松原ハイツ1階
電話=099(226)1210
営業時間=応相談(完全予約制・昼でも夜でも可)
定休日=予約のない日

名山 きみや

本格的日本料理と握りが出され
酒とのマリアージュを楽しむ

 日本料理の職人である兄の一成さん、寿司職人の弟の一樹さん、木宮兄弟2人で営む。兄が日本料理を手がけ、弟が寿司を握り、日本酒やワインなど酒とのマリアージュがなされる。昨年2月に訪れたある日のコースをご紹介。

 まずは一杯のお茶から。2時間氷出ししたという知覧茶「さえみどり」は丸く甘く、心ほぐれる素晴らしきスタートである。

「鹿児島醤油で炙った平貝のアサクサ海苔巻き」。貝の甘みが濃い。「屋久島キンメ握り」は皮を炙り、出汁漬けにし、振り柚子。

「焼き白子、ウニ、海老芋」。子を潰し、ウニと混ぜて食べれば、最初に艶っぽい白子の精が来て、ウニの甘みが追いかける。今度は、炊いてから揚げた海老芋にたっぷりかけてやる。すると白子の色気とウニの濃密な旨味が抱き合って丸くなり、海老芋の実直な甘さが品良く浮き立ってくる。

「ウルイ、イイダコ、酢で炊いたウド、素揚げしたコゴミ、車海老、そら豆」。それぞれの素材の特性を活かした、丁寧な仕事が光る盛り込みである。

「サワラのタタキ」。燻製させた鹿児島醤油と、太白胡麻油を少し加えた、甘いタレがかけてある。

「穴子白煮握り」は塩と新スダチで。適度な鉄分と脂が心を溶かす「山口産あん肝握り」。きめ細かい「白身と和三盆の厚焼き卵」に続いて、「ノドグロお椀」。「コハダ握り」「イワシ握り」は、脂が乗って甘い。

「フォアグラの茶碗蒸し 磯海苔あん」。海苔の香りが顔を包む。「太刀魚照り焼き」は、すっと溶けていく、まるでムースである。溶けるように甘い「甑島(こしきしま)ヤリイカ握り」「カワハギと肝握り」「出水(いずみ)の蛤握り」。

 最後は、山椒の刺激が良い「アワビ、蕪、 牛蒡の有馬煮 ご飯」。そして、デザートの「自家製葛きり 黒蜜」で、全19品となる。

●名山 きみや 
鹿児島県鹿児島市名山町4-10 三宝ビル2階
電話=099(295)0922
営業時間=18時半~(完全予約制)
定休日=不定休

富山の美味しい店

御料理 ふじ居

富山の豊穣な恵みを使用
自由闊達な感性を活かした料理

 店主藤井寛徳さんが、京都や金沢などの名店で修業後、開店した割烹。富山の海山の幸を自由闊達な感性を活かし料理する。

 例えば名物のブリは、あらゆる側面からその魅力を堪能させてくれる。①新湊の10㎏近い朝獲れを神経締めにしたブリを使った「お造り」は、クリッとした食感のカマ、コラーゲンと脂の甘みがある砂ずり、噛めばじっとりと脂が滲み出て溶けていく中トロ、大トロと並べられる。②当日揚がったものでしかできないという「血合いの刺し身」は、胡麻塩と生姜醤油でいただく。爽やかな血の香りと脂の甘い香りが同居していて、食べた瞬間笑いだすほどのうま味がある。③「中トロと砂ずりの湯引き、ポン酢添え」。やや温まって香りが丸く膨らみ、優しく歯が入っていく。④「ブリのモツ煮」。〝ふと〟と呼ばれる胃袋を中心に真子などと炊き合わせてあり、コリコリと弾む食感。⑤「カマの塩焼き」は、爆ぜるような肉と香ばしい皮に命が満ちている。⑥「ブリ大根」は、大根が淡い滋味を滴らせながら、見事にブリの滋味を抱き込んだ逸品。

 そのほか、「香箱蟹の和風ケジャン仕立て」や「ノドグロの杉板焼き」。新湊の鱧が動物的な逞しいうま味を広げ、れんこん餅が素朴な甘みで心を包む「お椀」。すうっと甘みを残しながら消えていく、きめ細かな「上市の里芋の煮物」。富山の蕪と白子を使った「かぶら蒸し」は、白子と蕪が一体となっていて、果てしなく優しい。

 春には、「蓬真丈と炙り白海老のお椀」や「四方のサクラマスのしゃぶしゃぶと花山椒」、「山菜の天ぷら」、「新玉ねぎの白海老の出汁餡かけ」、「焼き筍」など。ぜひ、富山の豊穣を味わいに出かけられたい。

●御料理 ふじ居 
富山県富山市五福5385-5
電話=076(471)5555
営業時間=11時~14時、18時~22時
定休日=月曜日・第3火曜日

ひまわり食堂

この店でなければ食べられない
地元の食材への愛に満ちた味

 田中穂積シェフによるイタリア料理店。黒板のメニューはどれも頼みたくなる魅力に満ちている。ある春の日の料理をご紹介。

「イワシのゼッポリーネ(ピッツァ生地に海藻を入れて揚げたもの)」。イワシのうま味と香りが広がる中、青海苔と香草が爽やかに吹き抜けていく。

「白海老と大麦、胡瓜のサラダ」。白海老の甘みが舌にもったりと広がっていく。そこに大麦のプチッとした食感と胡瓜の青い香りが加わった愉快な一皿。

「四方のサクラマスと八尾のアスパラ」。サクラマスのしなやかな体を口に入れると、清流の中を泳いできた魚が持つ上品な脂が、溶けるように滑らかに消えてゆく。

「ホタルイカとコシアブラのコルツェッティ(平たい円形のパスタ)」。名残のホタルイカとコシアブラが生き生きと香りを爆ぜる快感。「村田さんのブラウンスイスと池多牛ランプ肉の炭火焼き、玉ねぎ、鞘大根」。優しい滋味を忍ばせるブラウンスイスと噛むほどに滋味が滴る和牛。その合間に食べる玉ねぎの甘さに心が安らぐ。

「乳飲み仔ヤギのフォー」。黒部のヤギチーズ専門店 『Y&Co』の仔ヤギの肉は、鶏の胸肉のようないたいけな肉汁が、ゆっくりとこぼれ落ちる。それをパスタではなく、フォーに仕立てたセンスが素晴らしい。

 どの料理にも淀みがない。やりすぎない、うますぎない味わいは、富山の食材への深い理解と信頼、そして強い愛だろう。地方で外国料理を展開すると、世界中から食材を集める都心の店にどうしても負けてしまう。しかし田中シェフは、地元の恵みを使って何ができるか、何が喜んでもらえるかを誠実に考えた料理を出す。それが結果として、この店に来ないと食べられない、都会からも人を呼べる料理となっている。

富山県富山市石倉町1-30-1階
電話=076(482)6091
営業時間=18時~22時(LO)
定休日=日曜日・第3月曜日・不定休あり