中西 悠

「子供地球基金」理事

アクイロット
待望のトラットリア 日吉にあらわる

 大好きな仲良し家族の住む日吉に、待望の本格トラットリアがオープンした。店の名前は「アクイロット」、イタリア語で鷲のヒナという意味らしい。仲良し家族曰く、工藤シェフは独立以前から料理人として凄腕、しかも男前で有名だったとか。

 学生さんの行き交う穏やかな商店街の先にあるレストランまで、日吉駅から徒歩三分。まるでイタリアの田舎に来たようなセンスの効いた「アクイロット」は突如目の前にあらわる。地下の酒蔵、隠れ家とも言える雰囲気を醸し出す外観や内装に、誰もが中を覗きたくなるだろう。

 季節は春を迎え、肉厚な天然鰆のカルパッチョ、フランス産ホワイトアスパラガス、つぶ貝のマリネと春野菜など、メニューはすっかり華やいでいた。ホワイトアスパラガスは、半熟温泉卵とゴルゴンゾーラソースでいただく温かい前菜。自家製のパンをちぎって皿に余ったゴルゴンゾーラソースを惜しみなくすくって平らげた。

 仲良し家族はこの店の常連なだけに、定番のカルボナーラを勧めてくれた。濃厚でありながらあっさりとしたソースにパスタがよく絡み、フォークが止まらず心がウキウキする。お代わりしたいぐらい気に入ったのは、ピリッとした辛さと苦みが特徴のハーブ、ルーコラとセルバチコのサラダ。ドレッシングは強めの大人な酸味。白ワインによく合う。

 パスタ好きな我々は、ニンニクの程よく利いた生桜海老のペペロンチーノもあっという間に平らげて、肉料理に走りだした。宮崎和牛フィレ肉のビステッカと迷ったあげく、黒毛和牛すね肉の赤ワイン煮を注文。時間をかけて煮込まれたすね肉の、コラーゲンがゼラチン化した食感を存分に楽しみ、赤ワインと最高の相性でトロトロと口の中で溶けてゆく。

 気に入ったワインボトルを持ち込みたい場合は、持ち込み料を支払えばOKである。とは言え、「アクイロット」自慢のワインセラーには気軽に飲めるものから、特別な一本までしっかりと揃っているらしい。親切で気さくに話しかけてくれるソムリエやシェフが、我ら食いしん坊の味方となっていろいろ教えてくれるので、頼ってしまえばいい。

 日吉にあらわれた本格トラットリア、この夏も心躍る一軒である。

神奈川県横浜市港北区日吉本町1-4-14 グレストビル1階
TEL 045(534)7714

長 直子

全日本空輸(株) 客室乗務員

Ordi-verre
人と人を繋ぐレストラン

 白金の商店街の路地の階段を降りると、フランスの片田舎を思い出す別世界が広がっている。「Ordi-verre(オルディヴェール)」。白壁とウッドを基調とした、清楚でこぢんまりとした温かな空間。オーナーソムリエの戸田健太郎さんの柔らかな笑顔のお出迎えで心が更に温まる。特別な日に利用したい非日常的なレストランでありながら、温かさに包まれた安心できる空間であることに、いつも感動を覚える。そして、機内でもこんな空間を作りたいと思うことがある。

 白いテーブルクロス、整ったテーブルセッティング、その上にレンコンとピーナッツの形をした陶磁器が無造作に置かれている。フランス料理という一種肩肘を張りかけた状況から、戸田さんの出身地である鳥取県産の陶磁器を見て笑顔がこぼれ会話が始まる。人と人とのコミュニケーションのきっかけともなる憎い演出である。

 本日のメインディッシュは大山(だいせん)の麓で育てた大山黒牛のグリエ、四日間煮込んだフォンドヴォーのカシスの香りのするソース。鳥取県産の食材が鳥取県産の食器に美しく盛り付けられた料理を見て、顔が自然とほころぶ。

 ワインは、自然派のナチュラルワインと希少価値のあるクラシックワインにこだわり、戸田さんが一番飲み頃のものを料理に合わせて勧めてくれる。ボルドーの粘土質土壌で育ち、小さなシャトーで、熟成させたフレーバーが香るワインは、赤身の強い肉によく合い、更に、その作り手はとても格好が良いとの説明に、期待が膨らむ。

 ワインの味、畑の特徴、製造工程、生産者の人柄とその思いを、飛松裕之シェフ、安田昌紘スーシェフの思いのこもった、クラシックでありながらも、現代的な要素も加えたフレンチ食材やソースの美味しさと重ね、わかりやすい言葉でマリアージュを説明してくれる。その戸田さんの説明と演出で、ワクワクしながら食事を進めると、肉汁とコクがありながらフルーティーなソースの味と、ワインとのハーモニーが口いっぱいに広がる。一緒に食事をしている人との会話が自然と弾み、笑顔が溢れる。きっと戸田さんは料理や食器、ワインを通じて人と人とを繋ぐ天才なのだと思う。

 また来たいと思える温かな、最高のレストランであり、人と人を繋げる素敵な空間である。

東京都港区白金3-9-8 スカーラ白金シティプラザ地下1階
TEL 03(6874)3380