2018年12月号 情報区

食のプロ37人が執筆
2019年版
日めくりカレンダー

 7年目となる 『味のカレンダー食べること365日』、2019年版を好評販売中。
 マッキー牧元氏、門上武司氏、加来耕三氏、中東久雄氏、山口祥二氏、小山進氏、森田敦子氏、山崎まゆみ氏など本誌連載中の方々ほか、赤坂『Wakiya一笑美茶樓』脇屋友詞氏、南青山『Essence(エッセンス)』薮崎友宏氏、『味の浜藤』森口一氏、『DEAN&DELUCA』横川正紀氏など名店会のシェフやオーナーも執筆陣に加わり、それぞれ思い入れのある食材にまつわるコラムを披露。毎年宗誠二郎氏が描き下ろすイラストも好評だ。
 テーマとなる食材名は英字表記もあり、海外へのお土産にも喜ばれている。年末年始のご挨拶、手土産にもおすすめ。数量限定につき、お早めにお求めください。
[本体]文庫本サイズ1穴リング綴
[価格]3,240円(税込・送料別)
●お問い合わせ・お申し込み
味の手帖カレンダー専用サイト
http://www.ajinocalendar.net/

日本醤油協会創立70周年
「醤油の日の集い」
全国醤油品評会など表彰

醤油の仕込みを始める10月は干支で10番目の「酉(とり)」にあたる。「酉」の字は甕(かめ)の形からできた象形文字で、かめで仕込む醤油の「醤」の字にも使われており、日本醤油協会は10月1日を「醤油の日」に制定。協会70周年となる今年の「醤油の日の集い」では、民俗学者神崎宣武氏による「魚醤と豆醤」と題した記念講演や、「全国醤油品評会」「醤油文化賞」「しょうゆもの知り博士功労賞」の表彰が盛大に行われた。また、毎年しょうゆものしり博士が全国の小学校で出前授業を行っており、生徒の感想文コンクールでの入賞作品も披露された。
●しょうゆ情報センター
https://www.soysauce.or.jp/
TEL 03-3666-3286

KOIKEYA PRIDE POTATO
人気の定番3品
“無添加”統一を開始

 「無添加」に対するお客様の関心の高まりをふまえ、老舗湖池屋が50年にわたり培った技術とノウハウを結集させ、2017年2月の発売以降好調を続けてきた「KOIKEYA PRIDE POTATO」シリーズを刷新。じゃがいも本来のおいしさを極めるべく、新たにうま味調味料・香料無添加へと生まれ変わったシリーズ定番3品「本格濃厚のり塩」「本格うす塩味」「本格コンソメ」を、全国コンビニエンスストア、スーパーマーケット等にて好評販売中。
●お問い合わせ
湖池屋 お客様センター
TEL ?0120-941-751(平日9時~17時)

八海醸造協力
学研プラスの学習漫画
『あまさけのひみつ』

学研プラスの「まんがでよくわかるシリーズ」から、『あまさけのひみつ』が刊行。八海醸造が制作に協力、全国の小学校・公立図書館に寄贈した。小学5年生の主人公が新潟県南魚沼市の『八海山あまさけ製造所』を訪れ、甘酒や麹の秘密を探るあらすじ。古墳時代は甘酒が夏の季語だったこと、江戸時代から飲まれていた栄養補給源だったことなど、大人も楽しめる内容。書店での取扱いはなく、希望者には八海醸造が販売する。
●お問い合わせ
八海醸造 お客様相談室
TEL 0800-800-3865

銀座 ア・ニュ
ソムリエが選ぶ飲物付
クリスマス特別メニュー

 『GINZA SIX』13階のフランス料理店『ロムデュタン シニエ ア・ニュ』。12月21日(金)~25日(火)のディナーはクリスマスコースのみ、料理7皿に、ソムリエが選んだ飲物とペアリングでの提供となる。シャンパン・ワイン5杯:47,520円、ノンアルコールスパークリング・ティー5杯:38,016円。ランチは料理のみ6皿で8,316円。22日(土)~24日(月)は17時半・19時・20時に1組2名×3組ずつとなる。人数、席など詳細は下記へ。
●お問い合わせ・ご予約
ロムデュタン シニエ ア・ニュ
TEL 03-6263-9773(水曜定休)

井桁良樹シェフ
新生飄香(ピャオシャン)スタート
伝統四川料理を発信

『中國菜 老四川 飄香』麻布十番本店は、オーナー井桁良樹シェフの長年の夢であった「昔から伝わる四川料理~経典川菜~」を、宴席形式で提供する店として新たにスタート。今年、成都にある宴席料理の名店『松雲澤』に入門し、伝統四川料理人としての称号を与えられた井桁シェフが、従来の四川料理とは異なる滋味深い料理の数々を、提供スタイル、器にも本場の香りを感じさせるコース構成(12,960円~/2名~)で表現する。
●お問い合わせ・ご予約
中國菜 老四川 飄香 麻布十番本店
TEL 03-6426-5664

『晴れの日本料理』
六本木ヒルズ写真展と
特装版販売

12月21日(金)~1月20日(日)、『六本木ヒルズA/Dギャラリー』にて、永坂早苗氏著『晴れの日本料理 青草?のひと刻』〝The Seasonal Beauty of Japanese Cuisine〟(求龍堂)の写真展を開催。四季折々の料理を中心に日本の一年を巡る。上田義彦氏のオリジナル写真、サイン入り特装版を限定部数で発売。葛西薫氏の装丁で、岩野市兵衛氏の和紙、唐長トトアキヒコ氏自摺の表紙が日本文化の素晴らしさを伝えてくれる一冊。
●お問い合わせ
株式会社インターカルチャー
TEL 03-3407-5510

マッキー牧元氏
食の工夫を詰め込んだ
新刊発売

人生において、料理を作ること、食べることをいかに楽しむかを探究し続けてきたマッキー牧元氏の集大成ともいえる一冊『超一流のサッポロ一番の作り方』(1,296円)。日頃手軽に食べているインスタントラーメンを、タンメン風から香港下町風まで、牧元氏ならではの独創的な9種の作り方を披露。その情熱は、焼きそばから卵料理、さらに卵かけご飯へと向けられ、自身が常に関心を寄せている食べ方の工夫へと章が進む。
●お問い合わせ
ぴあ 販売部
TEL 03-5774-5248
http://www.heichin.com

三浦 亜美

株式会社ima 代表取締役 /つくば市まちづくりアドバイザー

Gastro Kitchen JUNBOO
博士と匠を感じるお店

 新しい土地に引っ越してまず初めに行うことは、美味しいお店を探すことだ。

 行政の仕事をするために茨城県つくば市に引っ越し、見つけたのが、市役所から徒歩2分の場所にある『Gastro Kitchen JUNBOO(ガストロ・キッチン・ジュンブー)』。木の素材感を活かした、外の光を取り込む明るい店構え、駐車場も広く、店内はいつも賑わっている。

 オーナーシェフの矢田部淳さんは、英国人と日本人のハーフで、英国と東京の名だたる星付きレストランで修業され、腕は折り紙付きである。その矢田部シェフが、あえて東京ではなく生まれ育ったつくばに店を開き、土地の野菜や肉などの素材を使った最高の料理を提供してくれている。
  
 ランチは日替りの手打ちパスタ2種、ハンバーグ、やまと豚のソテーから選べるが、まず食べてほしいのはハンバーグだ。 やまと豚100%使用、炭火で焼き上げたボリュームたっぷりのハンバーグは、食べ応えがあり満足できること請け合い。

 ランチタイムに訪れると、正面には、『久松農園』を中心に、つくば近郊で採れた旬のオーガニック野菜だけを使ったサラダバーが出迎えてくれる。メインを選ぶと、まずはサラダバーへ。私が『JUNBOO』を好きなポイントの一つが、このサラダバーと手作りドレッシング。モロヘイヤやオクラなど、普段は生で食べない野菜が提供されているのだ。毎回野菜の内容は異なるが、どれも抜群においしい。今回はニンジンやカボチャなどの根菜をガッツリと。素材の味に合わせて用意される自家製ドレッシングとの組み合わせは最高で、いつも私はおかわりをしてしまう。

 スープは、毎回少し変わった手の込んだものが出てくるが、この日はコシヒカリのポタージュだった。丁寧に作られたポタージュはなめらかな舌ざわりで、どこか懐かしく優しい甘さをしている。

 そしていよいよ待ちに待ったメインの登場である。今回はプレーンのハンバーグにデミグラスソースを選んだ。この組み合わせがスタンダードながらも、やまと豚の味わいをしっかりと楽しめる。香ばしく焼き上げられた自家製パンと一緒に食べていると、あっという間になくなってしまった。
 
 最後はデザート。もうおなかはいっぱいだが、ここのデザートを食べないわけにはいかない。定番のチーズケーキはじっくりと低温調理されており、濃厚なチーズの味わいを感じる。

 寒さが増すこれからの季節、『JUNBOO』に通ってしっかりと食べて備えなければならない。

茨城県つくば市研究学園1-3-3
TEL 029(846)6667

2018年11月号

◆茂木友三郎対談◆

大八木 成男

帝人(株)相談役

◆とーやまの昼膳放談◆

杉山 恒太郎

(株)ライトパブリシティ代表取締役社長

◆味の見聞録◆

フランス料理の新店(2)
前号につづき、若い新進気鋭のシェフによる料理が楽しめる、話題の新しいフランス料理店を2軒ご紹介。

目次

茂木友三郎対談
大八木 成男(帝人(株)相談役)
「自身の経験を、次世代に伝えていく」

日々是好日なり
文・南 美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第167回「お受験」

食のタイムトラベル
文・加来 耕三(歴史家・作家)
第86回「陸援隊長・中岡慎太郎が奨励した、“柚子”の効能」

草を喰む
文・中東 久雄(「草喰なかひがし」主人)
第55回「収穫感謝の日」

はんなりと京菓子
文・山口 祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第32回「亥の子餅」

悪食三昧
文・樫井 雄介
第200回「人たらしの店」

味のパトロール
文・張 陽子(大学講師)
東京・麻布十番「Courage」


とーやまの昼膳放談
ゲスト:杉山 恒太郎((株)ライトパブリシティ代表取締役社長)

美味良宴
文・正田 隆(正田醤油(株)社長)
其の二百三十九「全米一住みやすい街は、また訪れたい、美食の街(2)」

味の見聞録
第262回「フランス料理の新店(2)」

おいしい!には訳がある
文・宮川 順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第35回「イライラよりのんび~りでおいしくなる!」

ふるさとの味、おふくろの味
文・渡邉 眞紀(三陸新報社専務取締役)
第3360回「春の香り満載の『バッケ味噌』」

台所と食卓の名脇役(新連載)
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第7回「南部鉄瓶『柚子』」

おいしいひとり旅
文・山崎 まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第20回「私の師匠 秋田県乳頭温泉郷『鶴の湯』」

口福の造り手を訪ねて
文/写真・猪 口由美(『セコムの食』商品バイヤー)
第152回「安曇野厨房の中華惣菜」

これをあげたい!
文・元井 雄大 (NPO法人和の学校会員)
第128回「京の柚子は、えぐみがない」

タネもシカケもある話
文・森田 敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第80回「季節の変わり目に良いケア」

ドクターの天眼鏡
文・石田 浩之(医学博士)
第128回「ドーバー海峡の向こう側」

ソムリエの呟き
文・渋谷 康弘(ソムリエ)
第181回「エビフライ、とんかつに合うワイン」

ハイ!!チーズ
文・皆見 敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第74回「ブルーチーズ」

コーヒーを巡る人々
文・門上 武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第39回「大坊さん」

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第55回「辛味の深みを知る楽しみ 伝統を今に伝える地場レストラン」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第287回「毛豆、本茶豆、黒枝豆の幸せ。」

さらり日記
文・遠山 正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第263回「誰かの何か」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮 麻子
第203回「長女の結婚」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・吉川 奈津紀(日本航空客室乗務員)
第308回「極上日本の朝ごはん」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・中村 亜紀
第176回「スタッフド・バゲット」

名店会ファイル
第245回「オー・プロヴァンソー」

ひと皿のことの葉
文・上條 宏昌(小誌編集部)
第92回「煮えばな」

フランス料理の新店(2)

サンプリシテ

堂々たるフランス料理の風格
日本の魚が中心のコース

 フランスやスイスの数々の星付き店にて研鑽を重ねて帰国し、『銀座レカン』スーシェフ、広尾『レヴェランス』、荻窪『ヴァリノール』料理長を歴任後、昨年12月に独立開業した、相原薫シェフの店である。

 日本の魚はキレイで、水のような澄んだ味わいがある。しかし熟成させると、たちまち内に眠っていた凛々しさが顔を出す。濃密に味が膨らんだ魚は油脂ともなじみ、さらりと軽い野菜のソースをかけても色気がにじみ出る。「1か月も熟成できる魚は世界中を探しても日本にしかない」という相原シェフは、極めて質の高い魚を仕入れ、それらを熟成させて、力強い野菜と合わせる。魚と野菜のたくましいミネラルが結合して、色気を醸し出す。 
 1コースのみで、昼は5000円(7~8皿)、夜は1万3000円(11~13皿)、税・サ別。完全予約制。

 ある夏の夜のコースは以下の通り。

  1. 2週間寝かせたサワラと焼き茄子ピュレにトマト。サワラの熟れた色気と、焼き茄子の香りが素晴らしく合う。
  2. サブレ・ブルトンヌに、ボルディエの海塩バター、68℃で火入れをしたシラスと卵黄、黒オリーブのマドレーヌ。マドレーヌの食感と香ばしさが食欲をくすぐる。
  3. パン・ド・カンパーニュ、ボルディエの海藻バター、釧路町昆布森の毛ガニ、ラトビアのキャビア「オシェトラ」。毛ガニの味の濃さが全てをまとめ上げている。
  4. 6日間寝かせたイワシとネギ、生姜。イワシの温度帯が素晴らしい。それが色気を醸して、ワインが飲みたくなる。
  5. ボタンエビ、ボタンエビ頭のコンソメ、ダークチェリー、バラの花。真空氷温漬けにしたボタンエビの濃縮した甘みが、ダークチェリーの甘酸味や華やかなバラの芳香と合わさり、ときめく瞬間がある。
  6. アワビ、アワビのフォンとクリームとバターのソース。トリュフ。ジャガイモのリゾット。
  7. 胡麻鯖、トマト水とグリーンオリーブのスープ。フィンガーライム、ルッコラ、カラマンシービネガー。生き生きとした胡麻鯖の肉が生み出す豊潤な滋味と爽やかな香り、トマト水やグリーンオリーブの旨味が醸し出す美しさに、うっとりとなる。
  8. スジアラ、小松菜のソース。5日間寝かせたスジアラの雄大な滋味と、小松菜の青々しい香りとの出合いにより、味に底知れぬ深みを生み出している。
  9. 京都七谷(ななたに)鴨とインゲン。赤ワインとマグロ節、イリコと椎茸、マッシュルームと白菜、昆布のソース。軽やかさと濃密さを両立させた味のソースが、精妙に火入れされた鴨肉の滋味を持ち上げて素晴らしい。
  10. ビーツと抹茶パウダー。ビーツの真髄だけを煮詰めたような濃縮感がいい。

 デセールは、ほうじ茶のフォンダンとソルベ。これまた香り高く、心を安らげる。最後は、小さなシュークリームと台湾茶。

 相原シェフの料理は、どの皿も堂々たるフランス料理の風格がある。精神を溶かし、肉体を弛緩させる。それはおそらく、フランスで長く修業して学んだ、彼の根っこにある、料理人としてのある種のしたたかさではないだろうか。そこに潜むフランス料理の哲学が、我々を魅了するのである。

東京都渋谷区猿楽町3-9 アヴェニューサイド代官山12階 
電話=03(6759)1096
営業時間=12時~13時半(L.O.)、18時~20時半(L.O.)
定休日=月曜日・第1火曜日(祝日の場合は翌日)

アルゴリズム

独創性を生み出す
良質の魚とクラシックなソース

『銀座レカン』『カンテサンス』で経験を積まれた、深谷博輝シェフが昨年秋に開いた店。モダンな内装、カウンターだけの店を、シェフとサービスの二人で切り盛りされている。1コースのみで、昼は8000円(7~8皿)、夜は1万4500円(10~11皿)。料理に合わせたペアリングのみの用意で、ワインペアリング4500円~1万500円(3~7杯)、ノンアルコールペアリング5500円(5杯)、税・サ・水込。完全予約制。

 ある夏の夜のコースは以下の通り。

  1. スイカのモヒート。半割りにした小さなスイカの中にモヒートが入れられ、涼が口の中を吹き抜ける。
  2. ピサラディエール。南仏郷土料理をアルゴリズム流で。温めた石の上にパンスフレ、玉ねぎのコンフィ、オリーブ。
    ?煮たレンズ豆と焼き茄子のフリット、白イカのソテー。レンズ豆、茄子、イカ、3者の甘みが見事に融合する。フランス料理のエスプリがある、上等なスナック。
  3. ウニのサバイヨン、アールグレイのビスク。面白い。サバイヨンによって、2種類のウニが生々しくなることなく、丸く色香を伴って甘みが引き立っている。
  4. 肝、湯あがり娘、つぶ貝のリゾット。オレンジ、オクサリス(カタバミ)。極めて質が高い500gアップの堂々たるつぶ貝と肝の旨味に、茹で具合が絶妙の、甘みが強い枝豆「湯あがり娘」の青々しい香りが抱き合う。そこに、オレンジやハーブが軽く酸味のアクセントを添える。
  5. オマール、アボカド、青リンゴ、バジル、インゲン、アメリケーヌソース。このオマールもまた質が高く、軽く仕上げながらも旨味が深いソースがさらに持ち上げる。
  6. マナガツオ、豆のつる先とロケットピーマン。2週間熟成させたマナガツオをシャンパーニュソースで。素晴らしく気品が立ち上る一皿。なんと均一な加熱だろう、フォークを入れると、カツオは生き生きと滋味を広げながらも滑らかに崩れていく。どこにも引っかかりがない、ムースである。慎重に噛みこめば、濃密な海の滋養が流れ出る。クラシックなシャンパーニュソースの柔らかくキレのある酸味が、カツオの甘みを抱き込んで優美にする。堂々たるフランス料理である。
  7. ランド産ホロホロ鳥とフォアグラ、ソース・ペリグー、赤オクラ、スベリヒユ(食べられる雑草)。マディラ酒をたっぷり使ったソース・ペリグーの深みがいい。
  8. 野菜のコンソメ焼き、とうもろこし風味。

 デセールは、赤肉メロンとメロンシャーベット、アーモンドメレンゲ。最後は、タルト、ヨーグルト、クリーム、黒イチジク。

 若いながら、クラシックなソースを大切にし、そのソースと質の高い魚介類を合わせ、独創的な料理を生み出す深谷シェフの力量は見事である。

東京都港区白金6-5-3 さくら白金102 
電話=03(6277)2199
営業時間=12時~13時(L.O.)、18時~20時(L.O.)
定休日=日曜日・月曜不定

フランス料理の新店(1)

L’Evol(レヴォル)

質の高い食材を
モダンクラシックな手法で表現

 外苑西通りから表参道に抜ける、通称「まい泉通り」に、今年三月に開店。ワインバーとウェイティングを兼ねた地下一階から階下に降りると、四十席のメインダイニングが広がる。白と深いピンク、黒で統一された店内は、ゆったりと席が配置されており、くつろいで過ごすことができる。

 シェフの高木和也さんは、渋谷「キャリエ」(昨年閉店)の評判を高めていた方で、「質の高い食材を、モダンクラシックな手法やソースで表現する」ことを目指し、腕をふるう。

 ディナーコースは、一万円(十皿)と、七千円(七皿)。ある夏の日の一万円のコースをご紹介。

 一皿目は、シェフが前の店から提供してきた「パテ・バーガー」。小さな小さなバンズでパテを挟み込んだバーガーで、練り肉ならではの香りが食欲を刺激する。

 二皿目は、雲丹をのせた「トウモロコシのムース」。トウモロコシの濃厚な甘みが舌に流れ、思わず微笑む。

 三皿目は「車エビとアスパラガスのアンサンブル」。直火で炙って冷水に取った車エビと、薄切りアスパラガスを交互に重ねた一皿で、中心がレアに保たれた車エビの繊細な甘みがいい。添えられるのは、軽く味付けした玉ねぎと茄子のラタトゥイユ。

 四皿目は、野菜の盛り合わせ「エコファームアサノと高農園の野菜~夏の香り~」。力強い野菜の下にはコンソメ、上には枝豆を泡状にしたものがのせられている。ミネラルに富む野菜と、滋味深く綺麗な味わいのコンソメとの出合いが素晴らしい。

 五皿目は「フォアグラのEvolution Ver.4」。白桃、赤桃のピュレ、パンドエピス(パン菓子)のクランブル、セルフィユ添え。低温で加熱されたフォアグラの、ねっとりと均一な艶を感じさせる食感と脂の香りに、桃たちが優美さを加える一皿。

 六皿目「イサキのパイ包み焼き、ソースショロン」。スズキを使ったボキューズのスペシャリテへのオマージュか。イサキと帆立のムースを詰めたパイである。そのパイの焼き具合がいい。焦げる寸前まで焼き込んだ香ばしさが魅力的で、一方、中のイサキは火が通り過ぎることなくしっとりと甘みを膨らませている。その加熱の見極めが、実に見事である。

 七皿目「ラ・フルール・ドゥ・ミモレット」。同店のオーナーソムリエ細野博明氏のスペシャリテである。本来はグラニテが置かれるところだが、口腔内や喉を冷やしすぎる点と、チーズは肉の脂を吸収することから考えついたという。フロマージュブランの上に、薄く削り花びら状にした、十八ヶ月熟成のミモレットをのせ、百花蜂蜜をかける。ミモレットの熟れた深い塩気とフロマージュブランの爽やかな酸味、濃厚な蜂蜜の甘みが共鳴し合う。

 八皿目の肉料理は三つの料理から選択する。その一つ「トゥーレーヌ産鳩のロースト、ソースサルミ」は見事なキュイソンで、口の中に肉汁がしたたり落ちる。そしてガラや内臓を煮詰めたソースサルミが妖艶さを演出する、堂々たるフランス料理である。

 デセールも三品から選択。「ノワゼッティーヌ、フランボワーズアイス」は、ヘーゼルナッツの香り高い焼き菓子に、ヘーゼルナッツを入れたチョコとフランボワーズソースを添える。そして、ミニャルディーズと氷温熟成珈琲で宴の幕が下りる。

 ランチコースは、四千五百円(五皿)と、七千五百円(七皿)。昼夜とも税・サ別途。
 
東京都渋谷区神宮前3-6-7 DEAR神宮前地下1階 
電話=03(6875)0357
営業時間=11時半~13時半(LO)、18時~21時半(LO) ※日曜日はランチのみ営業
定休日=月曜日

Restaurant Umi

生命の誕生の源である「海」に
感謝を込めた料理

 閑静な住宅街に、六月にオープンした一軒家レストラン。シェフは、パリの一つ星レストラン「Sola」でスーシェフとして活躍された、藤木千夏さん。

 福岡県の有明海を見て育った彼女の「海」への思い、生み出すことの「生み」、そして「Sola」へのオマージュを込めて「Umi」と店名をつけたという。

 ディナーコースは、八千五百円(七皿)と一万二千円(十一皿)。ある夏の日の一万二千円のコースは以下の通り。

 一皿目は、体を整え、喉を開き、また「食事の支度が揃っていますよ」ということを指し示す、日本古来の粥からスタートする。淡い「茶粥」は、喉を清めながら心を温め、ごぼうと白瓜、蕪のピクルスが食欲をゆっくりと開かせ、美しい滋味が宿ったコンソメ(牛、鶏、焼いた長崎のトビウオ、野菜類、しいたけ)が体を整える。

「長崎産アジのマリネと茄子のマリネ、茄子を炭化させたソース」。茄子のほのかな甘みと、品を感じさせるアジの脂の旨味を純粋に合わせて、他の要素を削った潔さがいい。雑味のない澄んだ味が味覚を開く。

「白イカのグリル、エンペラとゲソ、ズッキーニのソース、松の実などによるピストソース、シトロンキャビア」。白と緑の皿が美しい。ナッツの甘い香りとイカの甘い香りが呼応し合い、胸がときめく。

 スペイン・バスク地方の料理「ピミエント・レジェノ」(ピーマンのブランダード詰め)のアレンジ。宮崎県産の甘みの強い赤ピーマンにブランダード(鰯、タイム、じゃがいもと牛乳を合わせたもの)を詰め、パン粉とパプリカ粉をつけて焼き、赤ピーマンソースを添えた一皿。ほのぼのとした郷土料理の美味しさがあって、どこか懐かしいような気分にさせられる料理である。

 魚料理は「みやび鯛のパイ包み焼き、グレープフルーツ入りブールブランソース」。パイには、根セロリとタプナード(オリーブのペースト)、魚のムース、微量の柚子胡椒が入れられ、みやび鯛(天草のブランド鯛)の気品ある甘みを優美に持ち上げている。またブールブランの酸味の利かせ方が柔らかで、魚の旨味に対して優しい。

 肉料理は「シャラン産窒息鴨のロティ、泥つき人参とオレンジジュースと人参のピュレ、人参の花添え」。鴨のキュイソンに色気があり、見事。土の温かみを伝える人参の濃い甘みにため息が出る。

 そして「山梨県産サンタローザ(プラム)、レモンタルト、りんごのクラフティ」という、楽しい組み合わせのデセールで終了。

 ランチは土曜日のみで、六千円(七皿)のコース一種。昼夜とも税・サ別途。

東京都渋谷区恵比寿4-19-7 
電話=03(6456)4306
営業時間=12時~13時半(LO)、18時~21時(LO)※ランチは土曜日のみ
定休日=月曜日・日曜日

2018年10月号

◆牛尾治朗対談◆

田口 義隆

セイノーホールディングス(株)代表取締役社長

◆万由美の昼膳交遊録◆

松尾 豊

東京大学大学院工学系研究科特任准教授
◆味の見聞録◆

フランス料理の新店(1)
話題の新しいフランス料理店を、二号にわたってご紹介したい。若い新進気鋭の二人のシェフによる料理に、刺激を受け、楽しんでほしい。

目次

牛尾治朗対談
田口 義隆(セイノーホールディングス(株)代表取締役社長)
「会社を発展させ、社員を幸福にする」

日々是好日なり
文・南美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第166回「旅」

食のタイムトラベル
文・加来耕三(歴史家・作家)
第85回「西郷隆盛が〝荘内の西郷さん〟に振る舞った、豚肉の煮物」

草を喰む
文・中東久雄(「草喰なかひがし」主人)
第54回「縄文人に学ぶ」

はんなりと京菓子
文・山口祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第31回「麩焼き煎餅」

悪食三昧
文・樫井雄介
第199回「食いしん坊の世代断絶」

味のパトロール
文・伊藤 公一(伊藤病院院長)
愛知・名古屋「備長炭ステーキ炉 Sakai」

万由美の昼膳交遊録

ゲスト:松尾 豊(東京大学大学院工学系研究科特任准教授)

美味良宴
文・正田 隆(正田醤油(株)社長)
其の二百三十八「全米一住みやすい街は、また訪れたい、美食の街(1)」

味の見聞録
第261回「フランス料理の新店(1)」

おいしい!には訳がある
文・宮川順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第34回「薬膳料理は中華だけ?」

ふるさとの味、おふくろの味
文・渡瀬 昌彦(講談社常務取締役)
第335回「タカコさんの天麩羅」

台所と食卓の名脇役(新連載)
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第6回「ライスクッカー」

おいしいひとり旅
文・山崎まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第19回「指宿温泉『いぶすき秀水園』 やっぱり産地が一番うまい」

口福の造り手を訪ねて
文/写真・猪口由美(『セコムの食』商品バイヤー)
第151回「ほがらか最中アイス」

これをあげたい!
文・横山 操(京都大学大学院農学研究科研究員・NPO法人和の学校会員)
第127回「秋の調べ」

タネもシカケもある話
文・森田敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第79回「産前産後のケア」

ドクターの天眼鏡
文・石田浩之(医学博士)
第127回「食嗜好と記憶」

ソムリエの呟き
文・渋谷康弘(ソムリエ)
第180回「がんばれ『クラヴィスオレア』 どちらも一番になってほしい」

ハイ!!チーズ
文・皆見敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第73回「チーズバーガー」

コーヒーを巡る人々
文・門上武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第38回「モノアートコーヒーロースターズ」

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第54回「カカオの故郷メキシコ 肌で感じた未体験の食文化」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第286回「老練なうなぎ職人の巻」

さらり日記
文・遠山正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第262回「夕御飯」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮麻子
第202回「小休止」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・満名 禎恵(日本トランスオーシャン航空客室乗務員)
第307回「悠久の泡盛文化とともに」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・都築 理沙
第175回「ハーブ風味の肉団子 トマト煮込み」

名店会ファイル
第244回「新宿つな八つのはず庵」

ひと皿のことの葉
文・上條宏昌(小誌編集部)
第91回「分量外」

2018年9月号

◆宮内義彦対談◆

山田 進太郎

(株)メルカリ代表取締役会長兼CEO

◆とーやまの昼膳放談◆

戌井 昭人

俳優・劇作家・小説家

◆味の見聞録◆

話題のイタリア料理店
今年新しくオープンした話題のイタリア料理店をご紹介。まったくタイプの異なるこの二軒は、東京食文化の豊かさを教えてくれる店である。

目次

宮内義彦対談
山田 進太郎((株)メルカリ代表取締役会長兼CEO)
「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」日々是好日なり
文・南美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第165回「不眠症」食のタイムトラベル
文・加来耕三(歴史家・作家)
第84回「独楽吟にうたわれた食と酒」

草を喰む
文・中東久雄(「草喰なかひがし」主人)
第53回「雨ニモマケズ風ニモマケズ」

はんなりと京菓子
文・山口祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第30回「おはぎ」

悪食三昧
文・樫井雄介
第198回「鮎の焼き方」

味のパトロール
文・立松 典子 (百貨店勤務)
北海道・札幌「オステリアタッキーニ 」


とーやまの昼膳放談
ゲスト:戌井 昭人(俳優・劇作家・小説家)

美味良宴
文・マッキー牧元
其の二百三十七「『富山美食探訪満腹ツアー(最終回)」

味の見聞録
第260回「話題のイタリア料理店」

おいしい!には訳がある
文・宮川順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第33回「古漬けとヨーグルト どちらの酸味がお好き?」

ふるさとの味、おふくろの味
文・杉田 啓三(ミネルヴァ書房代表取締役社長)
第334回「ナスと『おふくろの味』」

台所と食卓の名脇役(新連載)
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第5回「手付きセラミック付き焼き網」

おいしいひとり旅
文・山崎まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第18回「『房総鴨川温泉 是空』アワビ踊り焼きとまご茶づけ」

口福の造り手を訪ねて
文/写真・猪口由美(『セコムの食』商品バイヤー)
第150回「山田製油のごま油」

これをあげたい!
文・辰野 勇 ((株)モンベル代表取締役会長・NPO法人和の学校理事)
第126回「式亭の『余情残心』と『お番菜』」

タネもシカケもある話
文・森田敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第78回「夏の終わりのフィトケア」

ドクターの天眼鏡
文・石田浩之(医学博士)
第126回「ボクシングと私」

ソムリエの呟き
文・渋谷康弘(ソムリエ)
第179回「世紀のワインコレクション ワインは飲むべきか、集めるべきか」

ハイ!!チーズ
文・皆見敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第72回「チーズセミナー」

コーヒーを巡る人々
文・門上武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第37回「アイスコーヒー」

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第53回「ジャンルを越えた『美味しいもの』へ レストランとしての次なるステージ」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第285回「初うなぎと鰻串の幸福」

さらり日記
文・遠山正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第258回「小山さん」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮麻子
第201回「アンチエイジング」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・上田 知子(日本航空客室乗務員)
第303回「由布院盆地を一望する 丘の上のピッツェリア」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・丸山 晶
第174回「タコとドライトマトのマリネ」

名店会ファイル
第243回「Wakiya迎賓茶樓」

ひと皿のことの葉
文・上條宏昌(小誌編集部)
第90回「こってり」