鹿児島の寿司屋

鮨匠 のむら

ご主人の軽快なトークも楽しい
魚への愛に満ちた逸品が揃う

「いろいろ喋るけど、気にしないで。マグロと同じで喋ってないと死んじゃうからね(笑)」という前振りから始まる、ご主人・野村伸治氏のトークも楽しく、初めての客でも寛いで過ごせるだろう。11月のある日のラインナップは以下の通り。

 刺身は、旨味のあるヒラメ、2日間寝かせた天然カンパチ、表面をサッと炙ったマナガツオ、甘い香りが広がる茹でタコ。

 続く小鉢には、酢飯の上に白子。滑らかで思わず唸るハガツオ。イクラと菜の花をのせた茶碗蒸しは、餅とさつま芋入り。

 そして握り。アオリイカ。細かく包丁目を入れ上にゴマと塩、ゆず皮。ねっとりと甘く、温かい香りがある。メイチダイ。じんわりと焦らすような、しぶとい甘みあり。

 スジアラ。シコッとした歯応えで、噛むと甘みが滲み出る。世界で鹿児島しか獲れないという珍しいナミクダヒゲエビ。〝身がしまった甘エビ〟という味わい。

 茹でたて車エビ。見事な甘さで、香り高い。皮ごと炙って皮を外したノドグロ。品のある脂で、艶のある味わい。コハダ。浅めの締めで、しなやかに酢飯と合う。

 スマガツオ。本日のベスト。滑らかな身にすうっと歯が包まれる。口をゆっくり動かすと、品のいい脂が流れ、甘い香りが口の中に広がっていく。あまりの旨さに、目を閉じて何も言えず、しばし動けなかった。

 シマアジ。噛めば、シコッとして凛々しい。サヨリ。ほのかな甘みが素晴らしい。

 アワビ。しなやかな食感。口の中から消えると、喉の奥から香りが立ち上ってくる。
「卵かけご飯です」と出されたのがイクラの握り。卵本来のねっとり濃密な甘み。

 仙鳳趾(せんぽうし)の牡蠣 。味に透明感がある。バショウカジキ。脂のきれいさが光っている。

 蒸した太刀魚。煮穴子。最後は、山芋と麦味噌とネギの味噌汁。しみじみと旨い。

●鮨匠 のむら 
鹿児島県鹿児島市松原町6-2 松原ハイツ1階
電話=099(226)1210
営業時間=応相談(完全予約制・昼でも夜でも可)
定休日=予約のない日

名山 きみや

本格的日本料理と握りが出され
酒とのマリアージュを楽しむ

 日本料理の職人である兄の一成さん、寿司職人の弟の一樹さん、木宮兄弟2人で営む。兄が日本料理を手がけ、弟が寿司を握り、日本酒やワインなど酒とのマリアージュがなされる。昨年2月に訪れたある日のコースをご紹介。

 まずは一杯のお茶から。2時間氷出ししたという知覧茶「さえみどり」は丸く甘く、心ほぐれる素晴らしきスタートである。

「鹿児島醤油で炙った平貝のアサクサ海苔巻き」。貝の甘みが濃い。「屋久島キンメ握り」は皮を炙り、出汁漬けにし、振り柚子。

「焼き白子、ウニ、海老芋」。子を潰し、ウニと混ぜて食べれば、最初に艶っぽい白子の精が来て、ウニの甘みが追いかける。今度は、炊いてから揚げた海老芋にたっぷりかけてやる。すると白子の色気とウニの濃密な旨味が抱き合って丸くなり、海老芋の実直な甘さが品良く浮き立ってくる。

「ウルイ、イイダコ、酢で炊いたウド、素揚げしたコゴミ、車海老、そら豆」。それぞれの素材の特性を活かした、丁寧な仕事が光る盛り込みである。

「サワラのタタキ」。燻製させた鹿児島醤油と、太白胡麻油を少し加えた、甘いタレがかけてある。

「穴子白煮握り」は塩と新スダチで。適度な鉄分と脂が心を溶かす「山口産あん肝握り」。きめ細かい「白身と和三盆の厚焼き卵」に続いて、「ノドグロお椀」。「コハダ握り」「イワシ握り」は、脂が乗って甘い。

「フォアグラの茶碗蒸し 磯海苔あん」。海苔の香りが顔を包む。「太刀魚照り焼き」は、すっと溶けていく、まるでムースである。溶けるように甘い「甑島(こしきしま)ヤリイカ握り」「カワハギと肝握り」「出水(いずみ)の蛤握り」。

 最後は、山椒の刺激が良い「アワビ、蕪、 牛蒡の有馬煮 ご飯」。そして、デザートの「自家製葛きり 黒蜜」で、全19品となる。

●名山 きみや 
鹿児島県鹿児島市名山町4-10 三宝ビル2階
電話=099(295)0922
営業時間=18時半~(完全予約制)
定休日=不定休

2019年1月号

◆新春鼎談◆

牛尾 治朗/茂木 友三郎/宮内 義彦

◆とーやまの昼膳放談◆

植原 亮輔

アートディレクター/『KIGI(キギ)』代表

◆味の見聞録◆

富山の美味しい店
名水がふんだんに満ち、その恩恵を受けた山や海の産物が豊富な富山県。地元の香り高き味わい深い食材を活かした料理を出す、若き2人の料理人の店をご紹介。

目次

新春鼎談
牛尾 治朗/茂木 友三郎/宮内 義彦
「日本を〝東洋のスイス〟に キーワードは『寛容の精神』」

日々是好日なり
文・南 美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第169回「栄枯盛衰」

食のタイムトラベル
文・加来 耕三(歴史家・作家)
第88回「酒で失敗して活躍の場を失った 横井小楠」

草を喰む
文・中東 久雄(「草喰なかひがし」主人)
第57回「新元号に臨む」

はんなりと京菓子
文・山口 祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第34回「松」

悪食三昧
文・樫井 雄介
第202回「発酵食品ツアー」

味のパトロール
文・小倉 秀一(株式会社いまでや)
東京・荒木町「の弥七」

とーやまの昼膳放談
ゲスト:植原 亮輔(アートディレクター/『KIGI(キギ)』代表)

美味良宴
文・浦上 聖子
其の二百四十一「バンコクにて『食』を考える」

名店会ファイル
第247回「レストラン ドンピエール銀座本店」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・玉井かおる(日本航空客室乗務員)
第310回「親しみある地元の街 東京・目黒の隠れた名店」

味の見聞録
第264回「富山の美味しい店」

おいしい!には訳がある
文・宮川 順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第37回「1苦い+1苦い=1苦い!?」

ふるさとの味、おふくろの味
文・木村 貴之(西日本新聞記者)
第338回「不滅のみそラーメン」

台所と食卓の名脇役(新連載)
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第9回「食洗機で洗える漆椀」

おいしいひとり旅
文・山崎 まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第22回「エリザベートゆかりの温泉 オーストリア バート・イシュル」

口福の造り手を訪ねて
文/写真・猪口 由美(『セコムの食』商品バイヤー)
第154回「美味しい出合い『養々麺』」

これをあげたい!
文・十四世 細辻伊兵衛 ((株)永楽屋代表取締役社長/NPO法人和の学校理事)
第130回「京都の風情を映した『心ばせ』」

タネもシカケもある話
文・森田 敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第82回「富士山静養園」

ドクターの天眼鏡
文・石田 浩之(医学博士)
第130回「さよなら、チョコフレーク」

ソムリエの呟き
文・渋谷 康弘(ソムリエ)
第183回「掘り出し物の赤ワインを発掘!」

ハイ!!チーズ
文・皆見 敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第76回「グラスフェッドバター」

コーヒーを巡る人々
文・門上 武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第41回「ゲイシャのこと」

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第57回「パティシエこそ料理人的感覚を エスコヤマのフードメニュー」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第289回「クロマグロ消滅危機。」

さらり日記
文・遠山 正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第265回「花畑」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮 麻子
第205回「ニュータウンまでの道のり」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・畠山 優子
第178回「ムラングココ」

ひと皿のことの葉
文・上條 宏昌(小誌編集部)
第94回「詰める」

新春鼎談

牛尾治朗 茂木友三郎 宮内義彦

日本を〝東洋のスイス〟に

   キーワードは「寛容の精神」

 2019年新年号にあたり本誌巻頭対談のホスト役を務めていただいている皆さまにお集まりいただき、さまざまな話を伺った。
世界を席巻するアメリカ・トランプ大統領の強硬な外交政策、台頭する中国、移民問題に揺れるヨーロッパ、混沌とする世界情勢の中で日本がなすべきことは何か、多分野にわたりお三方が意見を述べられた。

編集部
2019年新年号にあたり、本誌巻頭対談のホスト役を務めていただいている皆さまにお集まりいただきました。よろしくお願いいたします。

〈乾杯〉

編集部
まずは、茂木さんが平成30年度の文化功労者に選ばれたということで、おめでとうございます。

「食文化の国際交流」をモットーに、長年にわたりしょうゆや日本の食文化を海外に紹介され、日本国内における食文化の継承や食育の推進に努めてこられた。その働きが、「企業活動によるしょうゆの普及を通じて、国内外における日本の食文化の普及のみならず、食育活動にも積極的に関わるなど、食文化の普及と振興に果たしてきた功績」として認められ、顕彰されたということですね。

宮内
政府はいいところに注目したと思いますね。

牛尾
しょうゆの味というのは、日本の一つの文化ですから、その文化を国が称えるというのは、とてもいいことですよ。

茂木
おっしゃるとおり、しょうゆというのは日本の食文化の中心の一つですから、しょうゆを海外に紹介することは、日本の食文化を紹介することにもなるのだと、私は社内でも何十年も前からずっと言い続けているのです。世界の国々といろいろな文化交流をすることが大切ですが、その中でも食文化の交流というのは非常に重要だと思うのですね。「同じ釜の飯を食う」「寝食を共にする」という言葉があるように、同じものを食べると、みんな仲良くなれるでしょう。ですから、しょうゆに限らず日本の食を世界の人々に紹介して、触れてもらうことで、日本の文化、日本という国に対する理解を深めてもらえると同時に、友好の促進につながるだろうと。私は旗ふり役を長年務めさせていただいたと思いますが、実際に食文化の交流を実施するためには多くの方々のご支援・ご協力が必要でした。それらの皆さまのご支援・ご協力に対し、この機会に厚く御礼申し上げたいと思います。

牛尾
しょうゆが美味しいということを、しょうゆ文化のない国の人に知ってもらうのは大変なことですが、それをずっとやってこられた茂木さんの功績は大きいですよ。

茂木
私は「農林水産物等輸出促進全国協議会」(日本の高品質な農林水産物・食品の輸出を促進することを目的に2005年に設立)の会長を仰せつかって、しょうゆに限らず、日本の食文化を海外に広めようということでずっとやってきたわけですが、その出発点となったのは、内閣府の知的財産戦略会議事務局が2005年に設置した「食文化研究推進懇談会」でした。

牛尾
「食文化研究推進懇談会」は大成功でしたね。

宮内
日本の食が世界から注目され始めたのは、あの頃からですね。

茂木
「日本ブランド」を世界に誇れる知的財産と位置づけて、政府が中心となって海外展開に力を入れ始めたのですね。そこで、日本の食文化をその「日本ブランド」の一つとして捉えて、世界に発信するためにいかに具体的なアクションを起こすかということを、「食文化研究推進懇談会」で議論することになったわけです。私が会長で、副会長が国立民族学博物館名誉教授の熊倉功夫さん、そのほか『東京??兆』の湯木俊治さんや『オテル・ドゥ・ミクニ』の三國清三さん、『辻料理学館辻調理師専門学校』の辻芳樹さんをはじめ、料理人や食の研究者など各界の有識者が集まって、メンバーは14人でした。

世界で日本食を食べている人はどれくらいいるかというと、これは勘定が難しいのですが、「日本食を1年に1回以上食べる人」を「日本食人口」と定義して勘定すると、当時6億人という数字でした。その「日本食人口」を、官民の協力のもと、5年後に2倍の12億人にしようという計画を立てて、「日本の食文化とは何か」というところから始まって、それを普及するための具体的な取り組みについて議論がなされました。それが結果的に、2013年の「和食」のユネスコ無形文化遺産登録につながったわけです。

牛尾
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて、みんな喜んだでしょう。

茂木
本当に喜ばしいことでした。「食文化研究推進懇談会」から始まって、そこからいろいろな活動が生み出されてきたということですね。

富山の美味しい店

御料理 ふじ居

富山の豊穣な恵みを使用
自由闊達な感性を活かした料理

 店主藤井寛徳さんが、京都や金沢などの名店で修業後、開店した割烹。富山の海山の幸を自由闊達な感性を活かし料理する。

 例えば名物のブリは、あらゆる側面からその魅力を堪能させてくれる。①新湊の10㎏近い朝獲れを神経締めにしたブリを使った「お造り」は、クリッとした食感のカマ、コラーゲンと脂の甘みがある砂ずり、噛めばじっとりと脂が滲み出て溶けていく中トロ、大トロと並べられる。②当日揚がったものでしかできないという「血合いの刺し身」は、胡麻塩と生姜醤油でいただく。爽やかな血の香りと脂の甘い香りが同居していて、食べた瞬間笑いだすほどのうま味がある。③「中トロと砂ずりの湯引き、ポン酢添え」。やや温まって香りが丸く膨らみ、優しく歯が入っていく。④「ブリのモツ煮」。〝ふと〟と呼ばれる胃袋を中心に真子などと炊き合わせてあり、コリコリと弾む食感。⑤「カマの塩焼き」は、爆ぜるような肉と香ばしい皮に命が満ちている。⑥「ブリ大根」は、大根が淡い滋味を滴らせながら、見事にブリの滋味を抱き込んだ逸品。

 そのほか、「香箱蟹の和風ケジャン仕立て」や「ノドグロの杉板焼き」。新湊の鱧が動物的な逞しいうま味を広げ、れんこん餅が素朴な甘みで心を包む「お椀」。すうっと甘みを残しながら消えていく、きめ細かな「上市の里芋の煮物」。富山の蕪と白子を使った「かぶら蒸し」は、白子と蕪が一体となっていて、果てしなく優しい。

 春には、「蓬真丈と炙り白海老のお椀」や「四方のサクラマスのしゃぶしゃぶと花山椒」、「山菜の天ぷら」、「新玉ねぎの白海老の出汁餡かけ」、「焼き筍」など。ぜひ、富山の豊穣を味わいに出かけられたい。

●御料理 ふじ居 
富山県富山市五福5385-5
電話=076(471)5555
営業時間=11時~14時、18時~22時
定休日=月曜日・第3火曜日

ひまわり食堂

この店でなければ食べられない
地元の食材への愛に満ちた味

 田中穂積シェフによるイタリア料理店。黒板のメニューはどれも頼みたくなる魅力に満ちている。ある春の日の料理をご紹介。

「イワシのゼッポリーネ(ピッツァ生地に海藻を入れて揚げたもの)」。イワシのうま味と香りが広がる中、青海苔と香草が爽やかに吹き抜けていく。

「白海老と大麦、胡瓜のサラダ」。白海老の甘みが舌にもったりと広がっていく。そこに大麦のプチッとした食感と胡瓜の青い香りが加わった愉快な一皿。

「四方のサクラマスと八尾のアスパラ」。サクラマスのしなやかな体を口に入れると、清流の中を泳いできた魚が持つ上品な脂が、溶けるように滑らかに消えてゆく。

「ホタルイカとコシアブラのコルツェッティ(平たい円形のパスタ)」。名残のホタルイカとコシアブラが生き生きと香りを爆ぜる快感。「村田さんのブラウンスイスと池多牛ランプ肉の炭火焼き、玉ねぎ、鞘大根」。優しい滋味を忍ばせるブラウンスイスと噛むほどに滋味が滴る和牛。その合間に食べる玉ねぎの甘さに心が安らぐ。

「乳飲み仔ヤギのフォー」。黒部のヤギチーズ専門店 『Y&Co』の仔ヤギの肉は、鶏の胸肉のようないたいけな肉汁が、ゆっくりとこぼれ落ちる。それをパスタではなく、フォーに仕立てたセンスが素晴らしい。

 どの料理にも淀みがない。やりすぎない、うますぎない味わいは、富山の食材への深い理解と信頼、そして強い愛だろう。地方で外国料理を展開すると、世界中から食材を集める都心の店にどうしても負けてしまう。しかし田中シェフは、地元の恵みを使って何ができるか、何が喜んでもらえるかを誠実に考えた料理を出す。それが結果として、この店に来ないと食べられない、都会からも人を呼べる料理となっている。

富山県富山市石倉町1-30-1階
電話=076(482)6091
営業時間=18時~22時(LO)
定休日=日曜日・第3月曜日・不定休あり

2018年12月号

◆宮内義彦対談◆

浜田 敬子

『Business Insider Japan』統括編集長

◆万由美の昼膳交遊録◆

古市 憲寿

社会学者
◆味の見聞録◆

話題の中国料理店
今年もまた刺激的かつマニアックな、今まで東京にはなかった中国料理店が開店した。その中から、すでに人気となっている2軒をご紹介したい。

目次

宮内義彦対談
浜田 敬子(『Business Insider Japan』統括編集長)
「紙に負けないクオリティの情報を デジタルで若い世代に伝えたい」
日々是好日なり
文・南 美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第168回「インタビュアー」食のタイムトラベル
文・加来 耕三(歴史家・作家)
第87回「湯豆腐(湯やっこ)をこよなく愛した、“維新の奇跡”大村益次郎」草を喰む
文・中東 久雄(「草喰なかひがし」主人)
第56回「歳末の気色」

はんなりと京菓子
文・山口 祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第33回「年越し薯蕷」

悪食三昧
文・樫井 雄介
第201回「ウナギとヤクザ」

味のパトロール
文・三浦 亜美(株式会社ima 代表取締役 /つくば市まちづくりアドバイザー)
茨城県・つくば市「Gastro Kitchen JUNBOO」

万由美の昼膳交遊録
ゲスト:古市 憲寿(社会学者)

美味良宴
文・正田 隆(正田醤油(株)社長)
其の二百四十「全米一住みやすい街は、また訪れたい、美食の街(3)」

味の見聞録
第263回「話題の中国料理店」

おいしい!には訳がある
文・宮川 順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第36回「丹頂がおいしいって本当ですか!?」

ふるさとの味、おふくろの味
文・南出 裕(道新サービスセンター代表取締役社長)
第337回「食べて気持ちが安らぐラーメン」

台所と食卓の名脇役(新連載)
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第8回「砥石」

おいしいひとり旅
文・山崎 まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第21回「ウィーンで温泉と音楽」

口福の造り手を訪ねて
文/写真・猪口 由美(『セコムの食』商品バイヤー)
第153回「黒毛和牛とたけのこ丼」

これをあげたい!
文・渡邉 信子 (NPO法人和の学校会員)
第129回「ふるさとの味『蒲さし』」

タネもシカケもある話
文・森田 敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第81回「記憶に残る味」

ドクターの天眼鏡
文・石田 浩之(医学博士)
第129回「帰り来ぬ青春-Hier Encore-」

ソムリエの呟き
文・渋谷 康弘(ソムリエ)
第182回「ワインをビジネスツールとして役立てるには?」

ハイ!!チーズ
文・皆見 敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第75回「遠野のアルプスチーズ」

コーヒーを巡る人々
文・門上 武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第40回「新たな焙煎」

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第56回「結論、メキシコ料理はハイレベル 『また来たい』が詰まった国」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第288回「魚の国の人だから」

さらり日記
文・遠山 正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第264回「朝」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮 麻子
第204回「ファーマーズマーケット」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・横谷 有紀(ジェイエア客室乗務員)
第309回「家族で過ごす幸せな時間」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・中村 亜紀
第177回「アマレットソースのパネトーネ・ブレッドプディング」

名店会ファイル
第246回「テール・ド・トリュフ 東京」

ひと皿のことの葉
文・上條 宏昌(小誌編集部)
第93回「思い出の味」

話題の中国料理店

香辣里

辛い、うまい、酸っぱい
そして安い湖南料理

 神田で『味坊』などを展開する味坊グループが今年開いた湖南料理の店『香辣里』には、辛い、うまい、酸っぱい、そして安い料理が溢れている。

 湖南省は中国中部、洞庭湖(ドンティンフー)の南にあり、湖南料理は中国八大料理の一つに数えられている。高温多湿ゆえに生まれた料理なのだろう、辛いことで有名な四川料理より辛いといわれ、特徴は、?とびきり辛い(この店は本場よりかなり抑えている)、?発酵中華による酸っぱさと香り、?燻製肉料理が多い、?ハーブを多用した香り豊かな料理、ということにある。だから、デトックスにも向いている。

 四川料理が山椒の痺れと唐辛子の辛味が合わさった「麻辣(マーラー)」という味の特徴があるのに対して、湖南料理は「酸辣(スワンラー)」、酸っぱくて辛いのが特徴。その酸っぱさの元は、発酵食品にある。発酵させた穀物や野菜、魚などによる乳酸菌の練れた酸っぱさと辛味が合わさるのだから、クセになる。

 この店では、自ら発酵させた食品を使って攻めてくる。例えば、湖南の代表的なおかず「酸豆角肉泥」(インゲンの漬物と豚の挽肉の炒めもの)。食べればインゲンの香りと熟れた塩分、そして酸味が口の中で渦巻いて、大至急ご飯がほしくなる。

 もう一つの特徴が「香辣(シャンラー)」といい、口の中に入れた瞬間に汗が吹き出すほどのスカッと抜ける辛さ。

 その名を抱いた「香辣魚」は、塩漬け発酵させた魚を、唐辛子とともに蒸し煮にしたもので、食べた瞬間に一筋縄ではいかない独特の酸っぱい香りが広がり、そこへ魚本来のうまさと辛味が加わって虜になる。「臭魚」とも呼ばれ、このクセのある匂いがたまらない。ご飯や濃いめの白ワインが恋しくなる味である。

「酸湯牛肉」は、スープと油で煮た牛肉料理。山椒が弾けて痺れさせ、唐辛子が破裂して痛めつけ、クミンが鼻をくすぐり、酸味と牛肉のうま味が舌を抱く。複雑な辛酸味と香りが押し寄せ、顔が笑いながら放心状態となるは必至。

「酸豆角米粉」。インゲン漬物の汁ビーフンである。辛いのだが、発酵大根の角切りを入れてもらい、「思いっきり辛くして」と頼むといい。口から火を吹き、汗水垂れ流しながら、麺をすすってはスープを飲み、その癒しとして頼んだ醤油炒飯を食べ、再び麺と立ち向かう。
 料理の値段は、前菜が700円~、メインの「香辣魚」はその日の魚によって変動し、2300円~3500円(6人くらいで食べることができる)。「酸豆角米粉」は800円。

 そのほか、「腊肉炒香干」(スモーク豆腐と燻製豚肉の炒めもの)900円、「紫蘇煎黄瓜」(胡瓜の大葉ロースト)700円、「鉄鍋紅薯粉」(さつまいもと春雨の鉄鍋煮)900円もおすすめ。

東京都世田谷区太子堂4-23-11 GEMS三軒茶屋7階  
電話=03(6450)8791
営業時間=[月~木]11時半~14時半(L.O.)、18時~23時半(L.O.)[金]11時半~14時半(L.O.)、18時~翌2時半(L.O.)[土]11時半~翌2時半(L.O.)[日・祝]11時半~23時半(L.O.) 
年中無休

南方中華料理 南三(みなみ)

湖南・雲南・台南
食が面白い3地域の料理が融合

 湖南省、雲南省、台南の3地方の料理を提供するゆえに『南三』。『黒猫夜 銀座店』料理長だった水岡孝和さんが一人で調理し、サービスの方と二人で切り盛りする。食が面白いこの3つの地域の料理を融合させた、ほかではなかなかお目にかかれない中華料理が楽しめるとあって、今年5月の開店で、すでに3ヶ月先まで予約が埋まるという人気ぶり。

 アラカルトはなく、コース5400円のみ。冷菜盛り合わせ、自家製中国式ソーセージなど珍味盛り合わせ、野菜料理、魚料理、肉料理に、麺飯、デザートとなる。
ある夏の日の料理をご紹介。

 冷菜は以下の布陣。「つぶ貝と焼マコモの自家製沙茶醤和え」(台湾製干した舌平目、ピーナッツ、ココナッツ、台湾エシャロット)。「鴨ロースの燻製とフェンネルサラダ」。「穴子の唐揚げ カラメルと黒酢風味炒め、毛瓜(モーウイ)、ピクルス」は、穴子の味がしっかりあり、毛瓜のみずみずしくおいしいこと! さらに「押し豆腐、アボカド、アサリ」、「スッポンの煮こごり、じゅんさい」、「鹹蛋(アヒルの卵) とゴーヤの和え物」。

 珍味盛りは4種。味のバランスが見事な「豚肩肉とレバー、心臓、もち米のウイグル風ソーセージ」。大腸の脂の甘みをスッキリと生かした「豚の大腸ネギパリパリ揚げ」。「紅麹漬け豚肉タピオカ粉揚げ」は、これまた素晴らしい台湾風トンカツで、紅麹の風味が後から立ち上る。そして「鴨舌の燻製」。

「台湾産オオタニワタリと自家製ベーコンの炒め物」。オオタニワタリはゼンマイとツルナが合わさったような山菜で、茎は柔らかく優しく、葉は硬めで滑りがあり、かすかな甘みとえぐみがある。

「九層塔蝦捲」。台南エビフライと台湾バジル。エビのすり身とコーンを混ぜて網脂で揚げたもの。網脂、エビ、コーンの3種類の甘みが呼応する。

「火鍋醤烤鮎」。鮎は意外にしたたかであることをこの料理で知った。鮎のコンフィ火鍋ソースである。弱火でじっくり揚げた鮎が、辛く香り高く痺れるソースにまみれている。コンフィにすることでしっとりと身のうま味を凝縮させた鮎は、この強烈なソースに負けていない。辛い味によって、逆にそのほのかな甘みを輝かせている。ならば少し変化をつけて楽しんでみよう。鮎をグシャグシャに潰し、ソースを合わせてみたが、潰されてもなお鮎の風味があって、それが火鍋ソースと見事に抱き合うではないか。ご飯がほしい。辛い様々な香りの中でひっそりと息づく鮎の淡味を、熱々ご飯にのせて掻き込みたい。そんな衝動に駆られた。

「韮菜醤烤羊肉」。羊肩肉オーブン焼きに合わせたニラ、ミント、木姜(ムージャン)のソースが素晴らしく、溌剌とした様々な香りが肉のうま味に溶け込んでいる。

「台南米糕」。台南風おこわ魯肉(ルーロー)餡かけ。味が丸い。ポルチーニのうま味とピーナッツの香りが利いている。

 そして最後のデザートは、ツバメの巣と食感が似た「雪燕」という桃の樹液と、桃シャーベット、杏仁豆腐となる。

東京都新宿区荒木町10-14 伍番館ビル2階-B
電話=03(5361)8363
営業時間=18時~21時(最終入店)
定休日=日曜日・祝日

2018年11月号

◆茂木友三郎対談◆

大八木 成男

帝人(株)相談役

◆とーやまの昼膳放談◆

杉山 恒太郎

(株)ライトパブリシティ代表取締役社長

◆味の見聞録◆

フランス料理の新店(2)
前号につづき、若い新進気鋭のシェフによる料理が楽しめる、話題の新しいフランス料理店を2軒ご紹介。

目次

茂木友三郎対談
大八木 成男(帝人(株)相談役)
「自身の経験を、次世代に伝えていく」

日々是好日なり
文・南 美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第167回「お受験」

食のタイムトラベル
文・加来 耕三(歴史家・作家)
第86回「陸援隊長・中岡慎太郎が奨励した、“柚子”の効能」

草を喰む
文・中東 久雄(「草喰なかひがし」主人)
第55回「収穫感謝の日」

はんなりと京菓子
文・山口 祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第32回「亥の子餅」

悪食三昧
文・樫井 雄介
第200回「人たらしの店」

味のパトロール
文・張 陽子(大学講師)
東京・麻布十番「Courage」


とーやまの昼膳放談
ゲスト:杉山 恒太郎((株)ライトパブリシティ代表取締役社長)

美味良宴
文・正田 隆(正田醤油(株)社長)
其の二百三十九「全米一住みやすい街は、また訪れたい、美食の街(2)」

味の見聞録
第262回「フランス料理の新店(2)」

おいしい!には訳がある
文・宮川 順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第35回「イライラよりのんび~りでおいしくなる!」

ふるさとの味、おふくろの味
文・渡邉 眞紀(三陸新報社専務取締役)
第3360回「春の香り満載の『バッケ味噌』」

台所と食卓の名脇役(新連載)
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第7回「南部鉄瓶『柚子』」

おいしいひとり旅
文・山崎 まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第20回「私の師匠 秋田県乳頭温泉郷『鶴の湯』」

口福の造り手を訪ねて
文/写真・猪 口由美(『セコムの食』商品バイヤー)
第152回「安曇野厨房の中華惣菜」

これをあげたい!
文・元井 雄大 (NPO法人和の学校会員)
第128回「京の柚子は、えぐみがない」

タネもシカケもある話
文・森田 敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第80回「季節の変わり目に良いケア」

ドクターの天眼鏡
文・石田 浩之(医学博士)
第128回「ドーバー海峡の向こう側」

ソムリエの呟き
文・渋谷 康弘(ソムリエ)
第181回「エビフライ、とんかつに合うワイン」

ハイ!!チーズ
文・皆見 敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第74回「ブルーチーズ」

コーヒーを巡る人々
文・門上 武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第39回「大坊さん」

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第55回「辛味の深みを知る楽しみ 伝統を今に伝える地場レストラン」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第287回「毛豆、本茶豆、黒枝豆の幸せ。」

さらり日記
文・遠山 正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第263回「誰かの何か」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮 麻子
第203回「長女の結婚」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・吉川 奈津紀(日本航空客室乗務員)
第308回「極上日本の朝ごはん」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・中村 亜紀
第176回「スタッフド・バゲット」

名店会ファイル
第245回「オー・プロヴァンソー」

ひと皿のことの葉
文・上條 宏昌(小誌編集部)
第92回「煮えばな」

フランス料理の新店(2)

サンプリシテ

堂々たるフランス料理の風格
日本の魚が中心のコース

 フランスやスイスの数々の星付き店にて研鑽を重ねて帰国し、『銀座レカン』スーシェフ、広尾『レヴェランス』、荻窪『ヴァリノール』料理長を歴任後、昨年12月に独立開業した、相原薫シェフの店である。

 日本の魚はキレイで、水のような澄んだ味わいがある。しかし熟成させると、たちまち内に眠っていた凛々しさが顔を出す。濃密に味が膨らんだ魚は油脂ともなじみ、さらりと軽い野菜のソースをかけても色気がにじみ出る。「1か月も熟成できる魚は世界中を探しても日本にしかない」という相原シェフは、極めて質の高い魚を仕入れ、それらを熟成させて、力強い野菜と合わせる。魚と野菜のたくましいミネラルが結合して、色気を醸し出す。 
 1コースのみで、昼は5000円(7~8皿)、夜は1万3000円(11~13皿)、税・サ別。完全予約制。

 ある夏の夜のコースは以下の通り。

  1. 2週間寝かせたサワラと焼き茄子ピュレにトマト。サワラの熟れた色気と、焼き茄子の香りが素晴らしく合う。
  2. サブレ・ブルトンヌに、ボルディエの海塩バター、68℃で火入れをしたシラスと卵黄、黒オリーブのマドレーヌ。マドレーヌの食感と香ばしさが食欲をくすぐる。
  3. パン・ド・カンパーニュ、ボルディエの海藻バター、釧路町昆布森の毛ガニ、ラトビアのキャビア「オシェトラ」。毛ガニの味の濃さが全てをまとめ上げている。
  4. 6日間寝かせたイワシとネギ、生姜。イワシの温度帯が素晴らしい。それが色気を醸して、ワインが飲みたくなる。
  5. ボタンエビ、ボタンエビ頭のコンソメ、ダークチェリー、バラの花。真空氷温漬けにしたボタンエビの濃縮した甘みが、ダークチェリーの甘酸味や華やかなバラの芳香と合わさり、ときめく瞬間がある。
  6. アワビ、アワビのフォンとクリームとバターのソース。トリュフ。ジャガイモのリゾット。
  7. 胡麻鯖、トマト水とグリーンオリーブのスープ。フィンガーライム、ルッコラ、カラマンシービネガー。生き生きとした胡麻鯖の肉が生み出す豊潤な滋味と爽やかな香り、トマト水やグリーンオリーブの旨味が醸し出す美しさに、うっとりとなる。
  8. スジアラ、小松菜のソース。5日間寝かせたスジアラの雄大な滋味と、小松菜の青々しい香りとの出合いにより、味に底知れぬ深みを生み出している。
  9. 京都七谷(ななたに)鴨とインゲン。赤ワインとマグロ節、イリコと椎茸、マッシュルームと白菜、昆布のソース。軽やかさと濃密さを両立させた味のソースが、精妙に火入れされた鴨肉の滋味を持ち上げて素晴らしい。
  10. ビーツと抹茶パウダー。ビーツの真髄だけを煮詰めたような濃縮感がいい。

 デセールは、ほうじ茶のフォンダンとソルベ。これまた香り高く、心を安らげる。最後は、小さなシュークリームと台湾茶。

 相原シェフの料理は、どの皿も堂々たるフランス料理の風格がある。精神を溶かし、肉体を弛緩させる。それはおそらく、フランスで長く修業して学んだ、彼の根っこにある、料理人としてのある種のしたたかさではないだろうか。そこに潜むフランス料理の哲学が、我々を魅了するのである。

東京都渋谷区猿楽町3-9 アヴェニューサイド代官山12階 
電話=03(6759)1096
営業時間=12時~13時半(L.O.)、18時~20時半(L.O.)
定休日=月曜日・第1火曜日(祝日の場合は翌日)

アルゴリズム

独創性を生み出す
良質の魚とクラシックなソース

『銀座レカン』『カンテサンス』で経験を積まれた、深谷博輝シェフが昨年秋に開いた店。モダンな内装、カウンターだけの店を、シェフとサービスの二人で切り盛りされている。1コースのみで、昼は8000円(7~8皿)、夜は1万4500円(10~11皿)。料理に合わせたペアリングのみの用意で、ワインペアリング4500円~1万500円(3~7杯)、ノンアルコールペアリング5500円(5杯)、税・サ・水込。完全予約制。

 ある夏の夜のコースは以下の通り。

  1. スイカのモヒート。半割りにした小さなスイカの中にモヒートが入れられ、涼が口の中を吹き抜ける。
  2. ピサラディエール。南仏郷土料理をアルゴリズム流で。温めた石の上にパンスフレ、玉ねぎのコンフィ、オリーブ。
    ?煮たレンズ豆と焼き茄子のフリット、白イカのソテー。レンズ豆、茄子、イカ、3者の甘みが見事に融合する。フランス料理のエスプリがある、上等なスナック。
  3. ウニのサバイヨン、アールグレイのビスク。面白い。サバイヨンによって、2種類のウニが生々しくなることなく、丸く色香を伴って甘みが引き立っている。
  4. 肝、湯あがり娘、つぶ貝のリゾット。オレンジ、オクサリス(カタバミ)。極めて質が高い500gアップの堂々たるつぶ貝と肝の旨味に、茹で具合が絶妙の、甘みが強い枝豆「湯あがり娘」の青々しい香りが抱き合う。そこに、オレンジやハーブが軽く酸味のアクセントを添える。
  5. オマール、アボカド、青リンゴ、バジル、インゲン、アメリケーヌソース。このオマールもまた質が高く、軽く仕上げながらも旨味が深いソースがさらに持ち上げる。
  6. マナガツオ、豆のつる先とロケットピーマン。2週間熟成させたマナガツオをシャンパーニュソースで。素晴らしく気品が立ち上る一皿。なんと均一な加熱だろう、フォークを入れると、カツオは生き生きと滋味を広げながらも滑らかに崩れていく。どこにも引っかかりがない、ムースである。慎重に噛みこめば、濃密な海の滋養が流れ出る。クラシックなシャンパーニュソースの柔らかくキレのある酸味が、カツオの甘みを抱き込んで優美にする。堂々たるフランス料理である。
  7. ランド産ホロホロ鳥とフォアグラ、ソース・ペリグー、赤オクラ、スベリヒユ(食べられる雑草)。マディラ酒をたっぷり使ったソース・ペリグーの深みがいい。
  8. 野菜のコンソメ焼き、とうもろこし風味。

 デセールは、赤肉メロンとメロンシャーベット、アーモンドメレンゲ。最後は、タルト、ヨーグルト、クリーム、黒イチジク。

 若いながら、クラシックなソースを大切にし、そのソースと質の高い魚介類を合わせ、独創的な料理を生み出す深谷シェフの力量は見事である。

東京都港区白金6-5-3 さくら白金102 
電話=03(6277)2199
営業時間=12時~13時(L.O.)、18時~20時(L.O.)
定休日=日曜日・月曜不定