2019年8月号

◆牛尾治朗対談◆

岡崎 裕子

陶芸家

◆とーやまの昼膳放談◆

白木 夏子

ジュエリーブランド『HASUNA』Founder&CEO

◆味の見聞録◆

札幌のラーメンとスープカレー
札幌といえば、味噌ラーメン、そしてスープカレーである。今までの常識を覆す店を中心にご紹介したい。

目次

牛尾治朗対談
岡崎 裕子(陶芸家)
「陶芸家の道を歩んで10年 仕事、出産、病気を経て得た絆」

日々是好日なり
文・南 美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第176回「私が美容で心掛けている7つのルール」

食のタイムトラベル
文・加来 耕三(歴史家・作家)
第95回「〝肥前の熊〟・龍造寺隆信と年越料理」

草を喰む
文・中東 久雄(「草喰なかひがし」主人)
第64回「夏バテに苦味と脂物を取るべし」

はんなりと京菓子
文・山口 祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第41回「夏の干菓子」

味のパトロール
文・佐藤 崇史(株式会社資さん「資さんうどん」)
福岡・大名「赤坂こみかん」

とーやまの昼膳放談
ゲスト:白木 夏子(ジュエリーブランド『HASUNA』Founder&CEO)

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第64回「『旨味を抑える天才』 引き算の鮨、大人の鮨」

名店会ファイル
第254回「うなぎ はいばら 築地2号店」

美味良宴
文・正田 隆(正田醤油(株)社長)
其の二百四十八「多民族国家ミャンマーの坩堝、ヤンゴンで食文化探訪の旅(1)」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・馬淵 未来(日本トランスオーシャン航空客室乗務員)
第317回「美味しい料理と楽しい会話で心身をリフレッシュ」

味の見聞録
第271回「札幌のラーメンとスープカレー」

おいしい!には訳がある
文・宮川 順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第44回「ビールで健康!?」

ふるさとの味、おふくろの味
文・田中 裕士(文藝春秋 プロモーション部長)
第345回「意外と知らない『わさび』の歴史」

台所と食卓の名脇役
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第16回「ヨーグルトカップ」

おいしいひとり旅
文・山崎 まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第29回「おいしい旅館 福島県穴原温泉『吉川屋』」

一期一食
文・横川正紀(ディーン&デルーカ 代表)
第5回「カレーの日」

これをあげたい!
文・曽和 鼓堂(能楽師 幸流 小鼓方・NPO法人和の学校講師)
第137回「竹水羊かん」

タネもシカケもある話
文・森田 敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第89回「お蚕さま」

ドクターの天眼鏡
文・石田 浩之(医学博士)
第137回「今こそ『パピヨン』」

ソムリエの呟き
文・渋谷 康弘(ソムリエ)
第190回「ビジネスに役立つワインの知識─ロゼワインとオレンジワイン、どちらが美味い?─」

ハイ!!チーズ
文・皆見 敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第83回「チーズを楽しむ人々」

コーヒーを巡る人々
文・門上 武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第48回「でがらし」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第296回「ジビーフの真実」

さらり日記
文・遠山 正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第272回「あの日、あの出来事」

百年つづけ
文・伊藤章良(食随筆家)
第3回「東西の鮨文化が重なり合う」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・北川 麻子
第185回「アニサキスアレルギーの私が作るアレンジキムチ」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮 麻子
第212回「オージーのキノコ人気」

ひと皿のことの葉
文・上條 宏昌(小誌編集部)
第101回「マッシュポテト」

悪食三昧
文・樫井 雄介
第209回「謎の約束」

佐藤 崇史

株式会社資さん『資さんうどん』

赤坂こみかん

元気をもらえる福岡の名酒場

 福岡には、元気な勢いのある店が多い。客をもてなすことを心底楽しむ料理人たちが腕を振るう。最近はそんな店が増えてきた。大名にある『赤坂こみかん』も、福岡でひときわ輝きを放つ店である。

 京都の料亭で修業した大将による、地元福岡の食材を使った料理をあてに、厳選した季節の日本酒やワインを嗜む。酒好きには堪らない店だ。

 暖簾をくぐると威勢のいい掛け声。活気溢れる空間だ。厨房を囲むカウンターに、お竈(くど)さんと大きな天ぷら鍋が存在感を示す。席には手書きの名札が。一寸した気配りが嬉しいではないか。

 まずは、キンキンに冷えたビールから。お通しは、その場で山わさびを削り落とす、温かい出汁漬けのお稲荷さん。清々しくも優しい味がビールの喉ごしを引き立て、寛ぎのひと時の始まりを告げる。

 最初に頼むのは、名物にしたいコールスロー。自家製マスタードが掛かるキャベツのタワーをゆっくり崩すと、中からゆで卵が。遊び心も楽しい。

 庶民的な天ぷら店が多く、天ぷら好きの多い福岡だが、この店の料理の主役も天ぷらだ。揚げたての天ぷらを一品ずつ注文。まずは、福岡定番のごぼう天。新ごぼうのさくさくの歯ごたえが嬉しい。ぷりぷりに揚がる子持ち昆布も最高の酒の肴になる。変わり種は、大ぶりの牡蠣をピーマンに詰めたカキピー。齧ると熱々の牡蠣汁が溢れ、ピーマンの青みと相まって食欲を掻き立てる。

 ここで突然、「こんな感じで炊けてます」と、大将自ら土鍋を手に炊きたての白ごはんが客席にお披露目された。「欲しい人は手を挙げて」という声に思わず全員が挙手。この店のいつもの風景だ。

 大将の久留米の実家で収穫した米のみを炊いたこだわりの白ごはん。そのお供に最高なのが名物の、鴨と糸島クレソンのくわ焼きだ。軽く焼いた鴨とクレソンにすき焼き風の割り下をつけて七輪で焼く。香ばしい味が口いっぱいに広がり、白ごはんと抜群の相性を発揮する。思わずごはんをおかわり。たっぷりのいくらをぶっかけて、いくら丼にして2度満足。

 大将の末安拓郎さんは、気配りの人。常に笑顔を絶やさない。人柄は店全体に伝わり、実に居心地がいい。気付くと皆に笑顔が溢れる。最後は大将自ら外まで見送り、お土産にみかん飴を手渡す。

 店は人である。同業者としてつくづくそう思う。連日にぎわう店からは学ぶことが多い。料理と酒と人が紡いだ笑顔に元気をもらえる店である。

福岡県福岡市中央区大名1-7-101 ワコウハイツ1階
TEL 092(734)3090

牛尾治朗対談

神奈川県横須賀市に陶房を構え 、2009年陶芸家としてデビューした岡崎裕子さん。
出自は、小説『華麗なる一族』のモデルとされる岡崎家である。
その後意欲的に創作活動に取り組むが、 第2子の授乳期に乳がんを罹患、約1年間の治療を経て今年2月、復帰後初の個展を開き好評を博す。
現在は、仕事と子育てを両立しながら、「がんと言われても動揺しない社会」を目指し
産官民学を巻き込んだ社会活動にも努められている。

岡崎 裕子(陶芸家)
陶芸家の道を歩んで10年 仕事、出産、病気を経て得た絆

牛尾
お越しいただきまして、ありがとうございます。岡崎さんにこの対談に出ていただくのは2回めになりますが、前回が2010年8月号でしたから、9年ぶりですね。

岡崎
また呼んでいただいて光栄です。牛尾さんとは代々のご縁があって、いつも大変お世話になっています。

牛尾
山崎豊子の『華麗なる一族』は、岡崎家がモデルとなっていると言われていますが、あなたは登場したのでしたっけ?

岡崎
そう言われているようですね。私は登場しておりませんが、岡崎家の祖は神戸岡崎銀行を設立、父は神戸で生まれ育ち、5人兄弟の長男ですので、設定は似ています。志摩観光ホテルで毎年新年を祝っていたことも同じだそうです。

牛尾
今日は、この9年間で変わったことを中心にお話を伺いたいのですが、独立されて何年になりますか。

岡崎
2007年に神奈川県横須賀市芦名に自宅兼アトリエを持って、初めて広尾で個展を開いたのが2009年ですから、前回この対談に呼んでいただいたのは、陶芸家としてスタートして間もない頃でした。

牛尾
ご結婚されたのも独立したのと同時期でしたね。その後、お子さんが2人生まれて、おいくつになられましたか。

岡崎
上の子は8歳、下の子は4歳になりました。我が家の食に関しては「地産地消」という言葉につきます。子どもたちは、ほとんど三浦野菜で育っています。あのエリアの新鮮な野菜のおいしさに、子どもたちも目覚めてしまっているのですよ。近くに無人の、昔ながらの100円とか150円とかお金を入れて、置いてある野菜を持って帰るような直売所がたくさんあるのです。「あっ、今日はオクラがあるよ」「今晩食べようか」などと言って、子どもたちと一緒に買って帰って、ごま和えにして食べたり。特に今の時期は、モロヘイヤやトウモロコシ、枝豆など、買ってきた旬の野菜をさっと茹でるだけでご馳走になるので、とても楽です(笑)。

私の住んでいる地域は、暮らしのナチュラルさを大事にされている方や、お子さんを自然に触れられる環境で育てることを意識している方が多いです。「お味噌を作りましょう」と友人たちで声掛けがあって、みんなで大豆を茹でるところから始めたり、「自宅で作れる玄米塩こうじのキットを取り寄せようと思うんだけど、一緒に頼みましょうか?」「じゃあ、うちも1個」とお願いしたり。そういうことがしょっちゅうあります。

牛尾
あの辺りは海の幸も豊富ですね。

岡崎
うちは佐島の漁港のすぐ近くなので、ワカメやタコ、ヒジキなど、時期になると、漁師さんのところに直接買いに行ったりします。いい魚屋さんもいっぱいありますし、お隣さんが「アジを釣り過ぎちゃったから、おすそわけ」と言って、釣ってきた魚を持って来てくださることもあります。それを3枚におろしてフライにして食べたり(笑)。

横須賀というと、軍港の街というイメージを持っていらっしゃる方が多いと思うのですが、エリアによって雰囲気が全く違うのです。うちがある芦名や、秋谷、佐島などの横須賀の西エリアは葉山に隣接していて、そちらはわりと、別荘をお持ちの方や東京から移住されているお宅があって、食の意識と感度が高い方が多いなぁと思います。

牛尾
おいしいお店も多いでしょう。

岡崎
そうですね。でも、我が家はほとんど外食はしませんね。子どもが小さいので、家族で外にご飯を食べに行くことのほうが負担で、それより家でちゃちゃっと作って食べたほうがいいわ、という感じです(笑)。

特集リスト

2019年7月号

◆宮内義彦対談◆

大宅 映子

評論家・公益財団法人大宅壮一文庫理事長

◆編集長の昼膳放談◆

飯田 陽狩

(株)シェアダイン代表取締役社長

◆味の見聞録◆

札幌の鮨
ウニ、鮑、ホタテ、ホッキなど、北海道を代表する魚介類をメインに、素晴らしき料理を出す、札幌の鮨屋を2軒ご紹介。

目次

宮内義彦対談
大宅 映子(評論家・公益財団法人大宅壮一文庫理事長)
「母として、女性として、令和の時代をどう輝いて生きるか」

 

日々是好日なり
文・南 美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第175回「後進」

食のタイムトラベル
文・加来 耕三(歴史家・作家)
第94回「道経一体の提言者 渋沢栄一の好んだ ねぎ入り煮ぼうとう」

草を喰む
文・中東 久雄(「草喰なかひがし」主人)
第63回「胡瓜紋に許し願う」

はんなりと京菓子
文・山口 祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第40回「葛饅頭」

味のパトロール
文・石原 寛子(通訳)
愛知・安城「cobaco ne cobaco」

編集長の昼膳放談
ゲスト:飯田 陽狩((株)シェアダイン代表取締役社長)

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第63回「この若さにして超一流 〝植田将道〟の世界観(後編)」

名店会ファイル
第253回「西陣魚新」

美味良宴
文・マッキー牧元
其の二百四十七「北イタリア満腹ツアー アルバのレストラン(最終回))」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・吉田理恵子(日本航空客室乗務員)
第316回「夏を乗り切る美味しい料理で 体と心に栄養を」

味の見聞録
第269回「札幌の鮨」

おいしい!には訳がある
文・宮川 順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第43回「貝たちは独立主義!?」

ふるさとの味、おふくろの味
文・林下 英二(中西出版株式会社代表取締役)
第344回「『花見酒』には『ジンギスカン』」

台所と食卓の名脇役
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第15回「蕎麦猪口」

おいしいひとり旅
文・山崎 まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第28回「炭酸泉とおにぎりと福島県奥会津の秘湯」

一期一食
文・横川正紀(ディーン&デルーカ 代表)
第4回「スパイスにラブ」

これをあげたい!
文・中島 文雄((株)静好堂中島 表具師 ・京表具伝統工芸士・NPO法人和の学校会員)
第136回「『聚洸』さんの季節の御菓子」

タネもシカケもある話
文・森田 敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第88回「三河地方って、すごい!!」

ドクターの天眼鏡
文・石田 浩之(医学博士)
第136回「もうすぐ寿命になる前に」

ソムリエの呟き
文・渋谷 康弘(ソムリエ)
第189回「ビジネスに役立つワインの話─アメリカ大統領とワインの意外な関係─」

ハイ!!チーズ
文・皆見 敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第82回「茂喜登牛」

コーヒーを巡る人々
文・門上 武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第47回「旧い焙煎機」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第295回「正しい肉の道。」

さらり日記
文・遠山 正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第271回「旅の想いで」

百年つづけ
文・伊藤章良(食随筆家)
第2回「若き3代目が守る『和』の暖簾」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・中村 亜紀
第184回「バスク風白身魚のスープ」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮 麻子
第211回「プラスチック汚染の対策」

ひと皿のことの葉
文・上條 宏昌(小誌編集部)
第100回「グリル」

悪食三昧
文・樫井 雄介
第208回「日米のお金の使い方」

宮内対談

評論家として、テレビやラジオ、講演などで活躍され、『公益財団法人大宅壮一文庫』理事長も務める大宅映子さん。
これまで多くの政府審議会の委員を歴任し、日本の構造改革にも関ってこられた。
1978年から始めたマスコミ活動では、国際問題・国内政治経済から、ご自身の幼少期や2人のお嬢さんを育てられた経験を生かし、食文化・子育てに至るまで、多分野にわたり情報を発信。
広い視野と同時に、飾らない人柄とわかりやすい言葉で繰り出されるコメントが、好評を博している。

大宅 映子(評論家・公益財団法人大宅壮一文庫理事長)
母として、女性として、令和の時代をどう輝いて生きるか

宮内
ようこそお越しくださいました。

大宅
お招きいただきまして、ありがとうございます。

宮内
父上の大宅壮一さんは、一時代を画した社会評論家として大変活躍されていました。亡くなられてどれくらいになるでしょうか。

大宅
父は1900年生まれで、1970年に満70歳で亡くなりました。その当時の平均寿命弟子た。元々「太く短く生きたい」と本人は言っていましたから、その通りの人生だったのではないでしょうか。

宮内
お母さまはどのような方だったのですか。

大宅
母の昌は1906年、富山県魚津市の生まれで、県内で女子師範学校を出てから小学校の教師をしていました。7年間教師を務めて辞めた時に、ちょうど父が『婦人公論』の文化講演会で富山を訪れて、母は友達に誘われて出かけて行ったのです。そうしたら、途中で「講演会終了後、地元の職業婦人を集めて座談会を開くので、出席されたし」と書かれた紙が回ってきたと。後で聞いたら、母はその時、顔におできができて絆創膏を貼っていたのですが、美人でしたから、父が壇上から見初めて、あの絆創膏を呼ぶようにと、お付きの人に言ったそうです(笑)。2人はその翌月に結婚したのですよ。

父はなんでも論理的に考える人でした。その父曰く、「富山の薬売りは薬を売りに全国を回っていて家にはほとんどいなかった。その留守を1人で守っていた、富山の女性は強い」と。しかも母は丙午(ひのえうま)の生まれですから、「丙午の富山の女性は強いに決まっている」と言っていたようです(笑)。

宮内
そのDNAが娘の映子さんにも入っているわけですね(笑)。

大宅
私にも入っています(笑)。

宮内
ごきょうだいは何人いらっしゃるのですか。

大宅
私は大宅壮一家1男3女の末っ子なのです。1番上の兄とは9歳、2番目の長姉とは8歳、3番目の次姉とは5歳離れていまして、男・女・女ときて、両親がもう1人男の子がほしいと思っていたところに生まれたのが私でした。そう言うとひがんでいるように思われるかもしれませんが、期待されていなかった分、ある意味放っておかれましたから、私には生まれた時から自由があった。こんなラッキーなことはないです。お陰で、なんでも1人でやる子に育ちました。姉2人は母に似て美少女でしたし、いいお嬢さんをやらなきゃいけなかった。でも私だけ「1番下のお嬢さんは先生にそっくりですね」と、家に来るお客さん10人が10人言うわけです。そのたびに私はブスだと言われているようで、ふくれて奥の部屋に入っていました。なんであんなに父親に似ていると言われなきゃいけないのかと思う一方で、私はブスで玉の輿にのることなんてないから、自分の人生は自分で切り開いて生きていこうと考えていました。

それで、高校を卒業してから、アメリカに留学しようと思ったのです。あの頃のアメリカは、日本にないものがなんでもあった。車にしてもファッションにしてもそうですし、アメリカのすべてに憧れていたのです。でも、留学させてほしいと父にお願いしたら、「アメリカに骨をうずめる気なら行ってもよろしい。だがそうじゃないのなら、日本で学ぶことはまだたくさんあるだろう」と言われて、行かせてもらえませんでした。ガッカリしましたが、確かにそれもごもっともだなと。あの時に行っていたら、多分そのまま帰ってこずに、今頃アメリカにいるでしょうね(笑)。

石原 寛子

通訳

cobaco ne cobaco
上質な日常 ここに有り

JR三河安城駅から車で5分程、街の喧噪が嘘のような田園風景の中にひっそり佇む一軒家『cobaco ne cobaco』。2015年オープンの喫茶店である。自家焙煎コーヒーと手作りケーキがメインだが、お昼時にはランチもいただける。

3年前。偶然車で通り掛かった際、随分おしゃれな家が建ったけれど何だろうと思ったのが最初の出会い。しかしその見た目ゆえ、デザイナー建築の展示住宅かと思っていた。半年以上経った頃であろうか、「OPEN」の看板が目に留まり、恐る恐る入ってみた。

期待を裏切られた。良い意味で。扉を開けた瞬間深いコーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。年季の入った背丈以上ある重厚な焙煎機がすぐ隣にあるのを見て納得。コーヒーを注ぐ女性とオーダーをとる若い女性が目に入る。言われなくても母娘だと分かった。そこに流れる空気は安心のしるし。

厨房にも娘さん? 何と表現したら良いのだろうか、そう、みんなふんわりしていてあったかい感じ。懐かしさも感じる。きっとおやつの味もそうなのだろう。

窓際のカウンターが心地よい。遠くに岡崎、幸田の山々が青々しており、元気をもらう。

手書きのメニューが手渡される。革で綴じられており丁寧さが伝わる。ノンオイルシフォンケーキがお薦めらしい。迷わず、ハワイコナとともに。

真っ白な四角のお皿に盛りつけられたお菓子には、ころんとしたバニラアイスと鮮やかなフレッシュフルーツ。美味しいものを少しずつ。一目見ただけで幸せになる。もちろん、シフォンもふわっふわ。あっさりしていて、雑味が全くない。次女の娘さんが作ったという。ケーキから伝わる真剣さと優しさ。安心していただけるお店が少しずつ減るなか、この居心地をずっと求めていた。

お目当ての自家焙煎コーヒー。南国の花を感じさせる甘く気高い香り。舌の先で感じる切れ味のよい酸味。直火式焙煎ならではの苦味が絶妙である。最高品質と称されるコナの個性が最大限に引き出されている。現在も焙煎教室で勉強を続けられているというお母さんのセンスと努力の賜物である。

私はその日を境に自宅でコーヒーを焙煎するのをやめてしまった。なぜなら、いつでもこの店に足を運ぶ理由が欲しいから。

愛知県安城市二本木町西切替111-3
TEL 0566(74)2775

2019年7月号 情報区

VACCA ROSSA
6周年記念
特別コースメニュー

特製トスカーナ暖炉の薪火で焼き上げるビステッカが名物の赤坂『ヴァッカ・ロッサ』。強い火力でありながら熱が肉に柔らかく伝わるため、焼きたてをカットしても肉汁が外に出ることなく、香ばしくてジューシーな味わいが楽しめると好評。
6周年特別コースは、ノレソレ(穴子の稚魚)のスープ仕立てからスタートし、ホロホロ鳥、アスパラガスの前菜2品と続き、メインディッシュのビステッカは、今年2月に解禁になったばかりの、きめ細やかな肉質のアイルランド産牧草牛“ヘアフォードプライム牛”を。その後は、サザエを使った冷製パスタ、高知県夜須産“エメラルドメロン”のドルチェが最後を飾る。フィレ肉コース10,000円、Lボーンコース12,000円。要予約。
●お問い合わせ・ご予約
VACCA ROSSA
Tel 03-6435-5670
http://vaccarossa.com/

山崎まゆみ氏新刊
バリアフリー温泉の
マニュアル本

温泉エッセイスト・山崎まゆみ氏の新刊「さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう!」1,458円(河出書房新社刊)が上梓された。2012年からの取材を通して、数々のバリアフリー温泉を知る筆者ならではの温泉旅行のノウハウを紹介。実際に施設を利用された方の旅ルポから始まり、宿選びのポイント、必需品チェック、入浴時の注意まで、細かいアドバイス満載で、「行ってみたい」「家族を連れて行きたい」方の背中をそっと押してくれる1冊になっている。
●お問い合わせ
河出書房新社
Tel 03-3404-8611

ワンダーテーブル
赤坂ARK Hillsに
期間限定ビアガーデン

アークヒルズのアーク・カラヤン広場に「YONA YONA BEER GARDEN in ARK Hills」が、9月1日(日)までオープン。「よなよなエール」の他、今回のために特別醸造した“ARK Hills Ale 2019”(共に700円)も。「オリジナルソーセージ3本セット」(2,000円)など料理も充実。
●お問い合わせ・ご予約
YONA YONA BEER GARDEN in ARK Hills
東京都港区赤坂1-12-32
17時~22時(土日祝11時~)
[L.O.]Food21時/Drink21時半
Tel 03-5458-8176

湖池屋
ハワイ州観光局公認の
ポテトチップス新発売

ハワイの豊かな自然をイメージさせる「ポテトチップス FEEL ALOHA」(オープン価格)2種を新発売。ココナッツのやさしい風味にほどよい塩味の「ココナッツ&ソルト」と、マンゴーの華やかな甘みにバターのコクを加えた「マンゴー&バター」。パッケージは、アパレルブランド「Lilly & Emma」とコラボし、「FEEL ALOHA」のロゴをあしらって、ハワイの自然とアロハスピリッツを表現している。
●お問い合わせ
湖池屋 お客様センター
Tel 0120-941-751(平日9~17時)

HUGE(ヒュージ)
モダンアジアン2号店
銀座コリドー街に誕生

“ALL NATURAL”を掲げた多ジャンルのレストランを展開する『HUGE』が、「マダム ミイ モダン タイ ベトナメーゼ」をオープン。ベトナム、タイ料理他、激辛唐辛子やアジア全土から取り寄せる無添加の魚醤など、旨辛のエッセンスを大胆に加えたモダンアジアン料理が楽しめる。
●お問い合わせ・ご予約
マダム ミイ モダン タイ ベトナメーゼ
東京都中央区銀座8-2-1-1F
11時~24時(土日祝11時半~)※8月から深夜営業あり
Tel 03-6625-5500

札幌の鮨

鮨菜 和喜智

 北海道出身の田村光明氏が、東京で修業後、2003年に開業。独自の研究を重ねた鮨は美しく、「鮨菜」という店名の通り、鮨の前に出される料理も素晴らしい。

6月初旬の料理は以下の通り。

「カニ茶碗蒸し、口子添え」。茶碗蒸しというよりカニ主体の卵寄せ。カニの穏やかな甘みを、卵黄の甘みがそっと持ち上げる。

「シマアジ皮炙り、背と腹身」の次は、「ウマヅラハギ昆布締め、肝のせ」。この魚の旨味を感じるように切られた厚さが絶妙で、じっとりとした甘みが滲み出る。

「ツブ貝とサクラマス、オクラのせ」。塩もみしたツブ貝は食感よく、コリッでもサクッでもない噛み応えを感じさせつつ、サクラマスの脂、オクラの粘りと一つになる。

「鮑ご飯」。鮑に香りがあり、味が濃密。

「太刀魚の塩焼」。空気を含んだような食感、素朴な甘み。「蓴菜(じゅんさい)、アスパラすり流し」は、白アスパラの香りが素晴らしい。

「ホタテ磯辺巻き」。醤油とホタテの単調な甘みを、紫蘇が引き締める。

ここから握り。「アオリイカ」は、包丁目を入れて、ねっとりと甘い。「フエダイ」。噛んでも噛んでも、旨味が途切れることなく湧き出てくる。うまい!

品がある「中トロ」に続き、「あん肝」。なめらかで見事な血抜き。舌の上で崩れる。

片面を軽く炙った「ホッキ」の次は、「シマエビ」。甘エビともボタンエビとも違う、このエビならではの甘みが舌に流れる。

「ミニウニ丼」の次は、「キンキ」。片面を少し炙ったキンキは、余分な脂は落としながら香りが増して、食感の複雑さがあり、ピタリと赤酢の酢飯と合う。甘みと旨味が相乗して体がのけぞるほどうまい。

最後は、ガリと鯖を巻いた「鯖巻き」。

●鮨菜 和喜智
北海道札幌市中央区南二条西25-1-22
電話=011(640)3768
営業時間=18時~20時、20時~22時 (2交代制)
※日のみ昼営業 12時~14時
定休日=月曜日・月1回不定休

鮨一幸

全国の鮨屋や産地を巡り
研究を重ねて独自の仕事を確立

店主の工藤順也氏は、25歳で真駒内郊外で父が営んでいた鮨屋を継ぎ、休日は全国の鮨屋や産地を巡り研究を重ね、独自の仕事を確立。予約の取れない店へと成長させ、2012年一つ星、2013年に札幌に移転し、2017年に二つ星に輝く。

その独自の仕事の表れの一つが、年間出される「カスゴ」(チダイの子供)の握りだろう。「赤ちゃんゆえに、3時間を過ぎると味が抜けてしまう」との理由で、締めてから3時間後に握りのトップバッターとして登場する。そのカスゴと、仕込んでから1時間半経った酢飯が共鳴し、まるで一つの生き物のような食感を感じさせる。「刺身から握りに移る一貫めなので、刺身を超える衝撃がなくてはいけない」という狙い通り、余分な水分が抜け、品のある甘みだけを厚い身に潜ませたカスゴはねっとりと舌の上で身悶える。その時、散りゆく酢飯の粘りがカスゴの肌合いと合一し、艶を滲ませながら口の中から消えていく。

もう一つは5月の「生のシャコ」の握り。シャコは自己消化が激しく、採られた瞬間から味が落ちていく。そのため港で漁師から受け取ったら、車を飛ばして店まで運ぶ。店で手当てをし、自己消化の速度を緩める。切り口から見えるオレンジ色の卵はとろりと輝いて、我々を誘う。柔らかな身にそっと歯を入れると、色香をたっぷりと含んだ濃密な甘みがポタポタと滴り落ちる。

その他の5月下旬の料理は、以下の内容。

「アマテガレイの刺身」 「鮑」「キンメのしゃぶしゃぶ」「子持ちヤリイカのウニ詰」「口子」。握りは、「サヨリ」「赤身」「中トロ」「余市バフンウニ」「太刀魚」「鬼アジ」「煮ホタテ」「穴子」「玉子」「鉄火巻き」など。

また、7月に出される、さっと茹でた「トリ貝」も素晴らしい。

●鮨一幸
北海道札幌市中央区南二条西5-31-45 スカレッタビル2階
電話=011(200)1144
営業時間=18時~、20時半~(2交代制)
定休日=水曜・祝日・不定休