2018年8月号

◆茂木友三郎対談◆

川淵 三郎

日本トップリーグ連携機構会長・日本サッカー協会相談役

◆万由美の昼膳交遊録◆

松田 誠

(株)ネルケプランニング代表取締役会長
◆味の見聞録◆

話題の和食店
魅力的な和食の店が、都内に新しく次々とオープンしている。今回はその中より選りすぐって、ぜひ訪れてほしい二つの店をご紹介。

目次

茂木友三郎対談
川淵 三郎(日本トップリーグ連携機構会長・日本サッカー協会相談役)
「地域コミュニティでスポーツを楽しむ環境を整える」
日々是好日なり
文・南 美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第164回「追っかけ」

食のタイムトラベル
文・加来 耕三(歴史家・作家)
第83回「“三井の番頭さん”と呼ばれた料理男子・井上馨(後編)」

草を喰む
文・中東 久雄(「草喰なかひがし」主人)
第52回「料理は仕合せ作り」

はんなりと京菓子
文・山口 祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第29回「地蔵盆」

悪食三昧
文・樫井 雄介
第197回「西麻布のあるバーの終焉」

味のパトロール
文・関野 了 (南青山「ゼファー」オーナー)
東京・南青山「海味」

万由美の昼膳交遊録

ゲスト:松田 誠((株)ネルケプランニング代表取締役会長)

美味良宴
文・マッキー牧元
其の二百三十六「富山美食探訪満腹ツアー(2)」

味の見聞録
第259回「話題の和食店」

おいしい!には訳がある
文・宮川 順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第32回「南インドのミールス」

地味礼賛
文・小橋 琢己((株)暮しの手帖社常務取締役)
第333回「作っているその場で買えるから 気持ちもお腹も満たされる『大学いも』」

台所と食卓の名脇役
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第4回「カレーのためのスプーン」

おいしいひとり旅
文・山崎 まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第17回「温泉を花火にたとえたら…」

口福の造り手を訪ねて
文/写真・猪口 由美(『セコムの食』商品バイヤー)
第149回「おめで鯛の一夜干し 」

これをあげたい!
文・種田 道一(金剛流能楽師・NPO法人和の学校理事)
第125回「変わらないもの」

タネもシカケもある話
文・森田 敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第77回「アーユルヴェーダの食事」

ドクターの天眼鏡
文・石田 浩之(医学博士)
第125回「ガリガリ君と熱中症」

ソムリエの呟き
文・渋谷 康弘(ソムリエ)
第178回「世界一おいしいステーキとシンデレラ・ワイン」

ハイ!!チーズ
文・皆見 敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第71回「カチョカヴァロ」

コーヒーを巡る人々
文・門上 武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第36回「珈琲屋さん」

共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第52回「料理が面白くってしょうがない 他ジャンルが羨む中国料理の真骨頂」

ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第284回「うなぎはミステリアスの巻」

さらり日記
文・遠山 正道((株)スマイルズ代表)
第260回「せめて鼻歌以上」

〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮 麻子
第200回「卒業式」

キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・吉原 真佐子(日本航空客室乗務員)
第305回「日本茶に魅せられて」

ケ・セ・ラ・さ・ら
文・中村 亜紀
第173回「バナナブレッド」

名店会ファイル
第242回「泉屋東京店」

ひと皿のことの葉
文・上條 宏昌(小誌編集部)
第89回「サクサク」

2018年8月号 情報区

銀座吉兆
夏を乗り切る特別献立
「納涼スタミナ懐石」

昨年の夏に好評を博した、銀座??兆の「酷暑を乗り切る特別献立」が今年も登場。7月24日(火)~9月2日(日)の期間限定で「納涼スタミナ懐石」を提供する。
口開けは、焼石の上で車海老や烏賊の酒盗風味を好みの加減で焼く「魚介の石焼」。お椀は、「鮑と玉子豆腐」もしくは「夏鴨叩き寄せ」。夏魚の鱧は、温かみを残した切り落としを梅肉山葵醤油で。続く焼物は、「鰻白焼??兆風」もしくは「黒毛和牛サーロインつけ焼」。最後の御飯は、「すっぽん土鍋御飯」もしくは天然鮎塩焼を炊き込んだ「鮎御飯」。あっさり締めたい方には「蒸し鮑と冷麦」の用意もある。
価格はお一人様27,000円(税込・サービス料別)。当日予約も可能。精のつく料理で暑気払いをぜひ。
※8月13日(月)~16日(木)は夏季休業。17日(金)は夜のみの営業。

●お問い合わせ・ご予約
銀座吉兆
TEL 03-3535-1177
https://www.kitcho.com/tokyo

後藤加寿子氏
和食文化を伝える
著書2冊刊行

茶道武者小路千家十三世家元有隣斎と千澄子氏の長女として生まれ、本格的な懐石料理を家庭に取り入れながら和食文化を伝える料理研究家、後藤加寿子氏の著書。
『和食のおさらい事典』(光文社)では、だしを冷凍保存したり、だしパックを利用す
るなど、忙しい毎日に役立つアイデアを提案。食育の基本からマナー、レシピまで親子で和食を学べる一冊。『後藤加寿子のおせち料理』(文化出版局)は、おせちの基本レシピやお重の盛り付け方などが丁寧に写真付で解説されている。共に1,944円。●お問い合わせ
光文社  TEL 03-5395-8172
文化出版局 TEL 03-3299-2540

銀座Sun-mi高松
フランス料理 エミュの
グルメセット

老舗の味が家庭で楽しめる、サンミオリジナルギフト「フランス料理エミュのグルメ3点セット」(8,640円)。10日間かけて作るデミグラスソースを使った、黒毛和牛ビーフシチュー×2人前、黒毛和牛ハンバーグステーキ×3人前、黒毛和牛ローストビーフ×2人前の真空パック。その他「黒毛和牛サーロインステーキ」(160g×5枚12,960円)、「黒毛和牛サーロインすき焼き」(800g12,960円)、「焼き肉セット」(800g8,640円)など。送料別。
●お問い合わせ・ご注文
銀座Sun-mi高松本店
TEL 03-5568-3300

銀座ドンピエール
フレンチのシェフが作る
カレーギフトセット

銀座で30年以上続く老舗フレンチ「レストランドンピエール銀座本店」。多くのメディアで紹介される極上の黒毛和牛ビーフカレーと、旨味とコクが特徴の黒毛和牛ハヤシのギフトセットが通販で購入できる。「黒毛和牛ビーフカレー」(冷凍・4袋5,616円)、「黒毛和牛ビーフカレー&黒毛和牛ビーフハヤシアソートセット」(冷凍・各2袋6,048円)、レトルトの「匠肉(たくみにく)ビーフカレー」(常温・4箱3,240円)など。送料無料。

●お問い合わせ・ご注文
ドンピエール受注センター
TEL 03-4405-3509
http://www.dompierre.tokyo/

銀座 ア・ニュ
フレンチと中国茶の
コラボイベント開催

「GINZA SIX」13階に昨年オープンし、人気を博しているフランス料理店「ロムデュタン シニエ ア・ニュ」で、8月20日(月)・21日(火)の両日12時から、ランチイベントを開催。京都の白川疎水沿いにある「銀月サロン」の中国茶ソムリエ、中国国家茶芸師・評茶員の高田小絵子氏を迎え、簑原祐一シェフによるフレンチと中国茶のペアリングが楽しめる。参加費はお一人様14,000円(料理ドリンク代・税・サービス料込)。ご予約はお電話で。

●お問い合わせ・ご予約
ロムデュタン シニエ ア・ニュ
TEL 03-6263-9773(水曜定休)

カツとカレーの店
「ジーエスG.S with旬香亭」
虎ノ門にオープン

静岡「旬香亭」斎藤元志郞氏がプロデュースしたカツとカレーの店が、虎ノ門にオープン。店名のジーエスは氏のイニシャルから。東京目白店や神田の姉妹店「ポンチ軒」で評判のカツをキャベツの千切りと盛り込んだ「カツカレー」1,300円。他に「チキンカレー」1,100円、「ロースカツセット」1,000円、夕方から「カツ皿」900円などを提供。

●お問い合わせ・ご予約
ジーエスG.S with旬香亭
東京都港区虎ノ門1-8-4
営業時間:11時~15時、17時~売切れ仕舞/定休日:日曜・祝日
TEL 03-6550-8141

ダイナースクラブ協賛
多様なフランス料理を
気軽に楽しむ17日間催

国内最大級のフランス料理イベント「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2018」が、9月22日(土)~10月8日(月・祝)に開催。全国600店以上の参加フレンチレストランで、ランチ2,500円または5,000円、ディナー5,000円の一律価格でのスペシャルコースメニューを提供(いずれも税・サ込)。今年は「トレ・ボン!日本のテロワール」をテーマに、各地の“和食材”を各店のシェフが取り上げ、フランス料理に仕上げる。

●お問い合わせ・お申し込み
フランス レストランウィーク事務局
https://francerestaurantweek.com/

森岡梨(あり)氏 レシピ本
おいしいお菓子を生む
レシピとおしゃれな形

青山の焼き菓子店「A.R.I.」を昨年閉店し、教室や期間限定の菓子販売等で活動中の森岡梨氏が『A.R.I.のお菓子のデザイン』(1,620円)を上梓。アートディレクションには本誌でお馴染みの藤枝リュウジ氏が参加。コーヒーケーキ、マフィンなど、7タイプの菓子からそれぞれのバリエーションを紹介。「完成形をイメージしてから作り始めると仕上がりに断然差が出る」という森岡氏が、おいしい味を生むレシピとおしゃれな形の理由を紹介。

●お問い合わせ
文化出版局
TEL 03-3299-2540

関野 了

南青山「ゼファー」オーナー

海味
作り手の生き方が投影された人々を虜にする寿司

 いつの間にか世界的な料理となった寿司。私が長年商いを営む南青山にも、少なからず名店があり、その技を日々競い合っています。

 その中のひとつが、多くの食通の支持のもと、界隈ですっかり名物となった、お客様を送迎する声が響き渡る「海味」。その店の名を上げ、通人の舌を唸らせているのが、まだ三十代ながら親方として店に立つ中村龍次郎君です。

 彼の師匠であり、先代親方としてその評判を不動のものとしたのが、故・長野充靖君、通称「みっちゃん」であったことは、読者の皆様であれば十分ご理解のことと思います。

 長野君があまりにも早すぎる別れをしてから、三年の月日が流れました。ある意味、破天荒で革命児的な生き方を、握る寿司の中に色濃く投影されていた彼のスタイルには、もう再び出合うことはできないものと、多くの彼の信奉者は半ば諦めていたことと思います。

 多くの料理はその味を、作り手の技量だけにとどまらず、生き方をも反映したものとして、私たちの前に提供されています。

 長野君が築き上げた寿司の世界は、彼を師と仰ぎ、徹底的に鍛え上げられた弟子たちに確実に伝承され、さらに洗練されて見事に蘇りました。

 先程、ご紹介させていただいた中村君は、忠実な弟子として「海味」の流れを守りながら、徐々にその姿を彼の感性のもとに変貌させつつ、古くからの「海味」ファンを満足させております。

 そして、僅か二年で人気店となり、今や予約困難な「天本」。その大将・天本正通君は、十数年来、右腕として親方の長野君を支え、技の全てを叩き込まれた、正に直弟子であります。彼もまた、その技をもとに、千変万化する求道者として、東麻布の一角で世のグルメたちを虜にさせております。

 また、東京を離れた地でも、「海味」の味は多くの弟子たちに依って引き継がれ、福岡の博多では「鮨さかい」の大将・堺大悟君が、長野県諏訪では「中野屋」を営む中山洋介君が名声を得ています。

 寿司を喰らう姿を満足気に見つめ、してやったりの笑顔を浮かべていた故人の技は、弟子たちに依って今日も私たちを幸せにしてくれているのです。

東京都港区南青山3-2-8 三南ビル1階
TEL 03(3401)3368

茂木友三郎対談


早稲田大学時代に日本代表に選ばれ、古河電工入社後も選手として活躍、監督も務められた川淵三郎さん。
同社を退社後、〝豊かなスポーツ文化の振興〟を理念に「Jリーグ」を創設、今日の日本サッカー界隆盛の礎を築かれた。
日本サッカー協会(JFA)会長、首都大学東京理事長を歴任後、日本バスケットボール界の救世主として分裂していた二つのリーグを統合、「Bリーグ」創設へと導く。
現在は、日本トップリーグ連携機構会長、JFAの相談役を務められ、日本のスポーツ全体を良くしていくために尽力されている。

川淵 三郎(日本トップリーグ連携機構会長・日本サッカー協会相談役)
地域コミュニティでスポーツを楽しむ環境を整える

茂木
ようこそお越しくださいました。

川淵
お招きいただきまして、ありがとうございます。

茂木
川淵さんは大阪のお生まれなのですね。

川淵
高石市です。百人一首の『音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の 濡れもこそすれ』で知られる高師浜です。子どもの頃はよく海で泳いで遊んでいました。

茂木
小学生の頃に演劇をされていたそうですね。

川淵
児童文化研究家の吉岡たすく先生(一九一五~二〇〇〇)が、私が四年生の時に母校の高石小学校に赴任してこられて、五年生の時に先生が立ち上げられた演劇部に入りました。先生はNHKのラジオドラマの脚本も書かれていて、私も何度も出演させていただきました。おそらく百回以上出ていると思います。

ラジオドラマのために約一カ月間の稽古をするのですが、学校が終わったあと、吉岡先生のご自宅に行って二時間ぐらい台本の読み合わせをして、それからNHKに行って演出家と本読みをするんです。私が中学一年生の時に民間放送が立ち上がり収録の放送も始まったのですが、それまでNHKは全部生放送でした。今はマイクの集音能力が高いので周囲で少々しゃべっていても問題ありませんが、その頃のマイクの性能は今ほど良くなくてちょっとした音も入ってしまいますから、台詞を言っている人以外は音を立ててはいけないんです。それと、普段は大阪弁でしたから、標準語のアクセントには苦労しました(笑)。

茂木
それはいつ頃まで続けられたのですか。

川淵
高校二年生まで続けました。なぜやめたかというと、放送を聞いて自分の声にショックを受けたからなんです(笑)。

というのは、NHKは生放送でしたし、再放送されても学校に行っている間に放送されていたので、自分がしゃべっているのを聞いたことがなかったんです。ところが、高校二年のある日、サッカーの練習が終わって、出演しているラジオドラマが放送されるからみんなで一緒に聞こうということになった。それで、いつも部活動の帰りに寄るパン屋さんに十人ぐらいで行って、その時に生まれて初めて自分の声を聞いたわけです。その声があまりにもイメージしていたのと違っていて、「これが自分の声!?」とガッカリしまして、二度とやらないと決めました(笑)。

茂木
しかし、小学五年生から高校二年生まで、多感な時期に七年間演劇を続けられたというのは大きいですね。

川淵
振り返ると、その後の人生において演劇は大変プラスになりました。小さい時から吉岡先生に鍛えられたおかげで、対人間ということに関しては、人付き合いで困ることはなかったですし、人前でしゃべることに抵抗がないのです。それと、かつて東大阪市にあった毎日大阪会館や中之島にある大阪市中央公会堂などでも公演したりしていましたが、マイクなしで大声をあげて台詞をしゃべっていましたから、今でも私の声は大きくてよく通ると言われるのはそのおかげですよ(笑)。

話題の和食店

てのしま

瀬戸内の山海の幸を盛り込んだ
新しいかたちの日本料理

「菊乃井」主人・村田吉弘氏に師事し、本店副料理長、赤坂店料理長を務めた経験を持つ林亮平氏が、青山一丁目駅より徒歩三分、青葉公園の向いのビルの二階に、今年三月二十日に開いた「てのしま」。林氏は香川県手島(てしま)の出身で、瀬戸内の山海の幸をふんだんに使った日本料理を出す。〝割烹未満、居酒屋以上〟といった雰囲気で、気軽に料理を楽しむことができる。

 一万円の一コースのみで、二十一時以降は単品のアラカルトの用意もあり、気軽に一品、一杯から立ち寄れる。

 六月のある日のコースは以下の通り。

 突き出しは「とうもろこし冷やし茶碗蒸し」。十二分にとうもろこしの甘みが引き出された冷やし茶碗蒸しの上に、よもぎの餡がかけられている。甘さと苦みのバランスのセンスが素晴らしい。

「稚鮎のコンフィ 胡瓜蓼おろし」。レモン、木の芽添え。塩焼きではなく、コンフィにすることによって、鮎の持つすべての良さが引き出されている。胡瓜の爽やかな青々しさを加えた蓼酢のピュレとの相性がよく、このあと続く料理に向き合う気持ちを高めてくれる。

 出汁の味わいが優しい「甘鯛と翡翠茄子の煮物椀」に続き、「お造り」は、金目鯛、スズキ、石鯛の盛り合わせ。いずれも香り高く、程よい脂の乗り具合と食感で、非常に質が高い。

「鱧 温南蛮」。鱧のフリットに赤玉ねぎの酢漬けを汁ごとかけ、松の実を添える。揚げた鱧の甘みに、赤玉ねぎの甘みと酸味のコクが加わり、酒を呼ぶ逸品。

「はなが牛醤油ステーキ 和ハーブバター」。愛媛県西予市宇和町で、豊かな自然のもと、地元産の飼料米を与えて育てられる「はなが牛」は、健康な証だろう、脂肪が少なく、味がしっかりとして濃い。その肉に、レモン汁とパセリを混ぜ込んだステーキ定番のメートルドテルバターならぬ、和ハーブを練り込んだバターを合わせるところが心憎い。

「てのしま寿司」。おいなりさんと鯖寿司。どちらも端正な作りで美味しい。

「いりこだしにゅうめん」。しなやかな食感と小麦の香りが良い、小豆島・船波製麺所のそうめんに、伊吹島のいりこで取っただしのつゆがホッとする優しい味わい。最後のデザートは「くずきり」が供される。

 ドリンクペアリングは六千円。日本酒は、通好みから一般的な人気のあるものまで品揃えが見事。ワインの揃えもいい。
 
東京都港区南青山1-3-21  1-55ビル2階
電話=03(6316)2150
営業時間=18時~23時(LO)
定休日=日曜日・月2回不定休 
※消費税・サービス料10%別途

久丹(くたん)

情熱とまごころのこもった
質の高い料理の数々

 元麻布「日本料理かんだ」で長年働いていた中島功太郎氏が、今年の四月七日に開いた店。白を基調としたモダンな内装に、赤の絵が華を添えている。真っ白な空間に赤を飾ることが理想だったという店主の言葉通り、清さと情熱が感じられ、場と空気が凛とする効果が得られている。

 コースは二万三千円。「かんだ」で養われた食材を吟味する眼を生かした、極めて質の高い料理が次々と出される。

 六月のある日のコースは、「メヒカリとインゲンの天ぷら」から始まった。インゲンをメヒカリで巻いて天ぷらにしたもので、メヒカリの淡い甘さが食欲を刺激する。
続いて「広島蓴菜(じゅんさい)、舞鶴のアワビ、胡瓜、合わせ酢」。蓴菜と厚く切ったアワビ、細切りの胡瓜を合わせ、上に花付きのミニ胡瓜があしらってある。アワビの厚み、胡瓜の細さにちゃんと意味があり、すべてが口中で馴染む美しさがある、涼を呼ぶ一皿。

「アオリイカの黄身和え、オランダのオシェトラキャビア」。細切りのイカを卵の黄身で和え、キャビアが載せられている。イカの甘みと黄身の甘み、キャビアの香りと塩気が、優雅に混じり合う。

 お造りの一皿目は「舞鶴産とり貝」。見事な分厚いとり貝で、噛むとじっとり甘いエキスが滲み出て喉に落ち、メロンのような甘い香りを残す。

 続いて「宇和島のオコゼ」。皮の湯引きも添えてあり、やや乳白色が差した半透明の刺身を食べると、確かな弾力があって、その中からゆるゆると甘い滋味が染み出してくる。鴨頭ねぎだけ添えた、シンプルな盛り付けもいい。

 蓋裏に松や梅の文様があしらわれた黒塗椀に入れられた煮物椀は、「アイナメ、針茗荷、ゆずの花」である。つゆを一口飲めば、「かんだ」譲りの淡く、実に素直できれいな味わいだが、飲むほどにしみじみとしたうま味が積もっていき、余韻が丸い。椀種のアイナメは見事な大きさで、優しい甘みを舌に落としながら滑らかに口中に消えていく。その滋味が溶け出して、次第に味わいが深まっていき、胸が高鳴る。そして、最後の一滴を飲み干したクライマックスに陶然となるは必至。

 次は、「島根定置網、マグロの手巻き寿司」である。赤と白と黒。まさにこの店の空間を模したものであろうか―。海苔の香りが素晴らしく、マグロの香り、酢飯の香りと共鳴し合う。

「若鮎の焼き物」。頭から齧れば、実に香ばしく、苦味、甘みが渾然と口の中で混じり合い、うねり合う。

「毛ガニ」は、ヤングコーンとつるむらさきの取り合わせで。ふっくらとした毛ガニ足のむき身は、心休まるような、ふくよかな甘みがある。そのあとは、カニみそ和えのカニの身を、少量のご飯の上に載せて供される。

 続いては「天然鰻」。鰻を一旦開いてから閉じて焼いたものである。「めそ」と呼ぶ小ぶりな鰻ゆえに、香ばしい甲殻類の殻のような香りが放たれる。

 締めは「もずくご飯」。塩をせず、蛤の出汁だけをはった小鉢に、ご飯とあられ、青森のもずくが入れられる。うま味過剰ではない、サラリとした締めのごはんもオツなものである。添えた香の物は鰹節を和えたキャベツで、これまた素朴でいい。

 最後のデザートは、「さくらんぼとゼリー、カスタードクリーム」。

 店名の「久丹」の「久」は、次世代まで残る店にしたいとの願いから「永久の〝久〟」を一字取り、 それに、食欲をそそる色・情熱の〝赤い色〟や〝まごころ〟などの意味を持つ「丹」の字を合わせたもの。正に、その想いが伝わる料理の数々である。

東京都中央区新富2-5-5 新富MSビル1階 
電話=03(5543)0335
営業時間=17時半~22時半(LO)完全予約制
定休日=日曜日・祝日 
※消費税・サービス料10%別途

2018年7月号

◆牛尾治朗対談◆

柳川 範之

東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授

◆とーやまの昼膳放談◆

石上 純也

建築家


◆味の見聞録◆

とんかつ
様々な飲食店が集う大阪神戸にて、気軽に行けて、美味しい料理が待ち構える、話題の店を各種ご紹介。

目次

牛尾治朗対談
柳川 範之(東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)
「新しい時代を見据えた 新しい『日本的経営』のあり方」

 
日々是好日なり
文・南美希子(エッセイスト・コメンテーター)
第163回「歌の力」

 
食のタイムトラベル
文・加来耕三(歴史家・作家)
第82回「“長州三尊”の一人で 料理男子だった井上馨(前編)」

 
草を喰む
文・中東久雄(「草喰なかひがし」主人)
第51回「天の川と祇園囃子」

 
はんなりと京菓子
文・山口祥二(「京菓子司 末富」代表取締役社長)
第28回「祇園祭」

 
悪食三昧
文・樫井雄介
第196回「地方のドミナント戦略」

 
味のパトロール
文・木村 忠史(兵庫県三田市木村クリニック院長)
兵庫・神戸「中国菜 二位」

 

とーやまの昼膳放談
ゲスト:石上 純也(建築家)

 
美味良宴
文・マッキー牧元
其の二百三十五「富山美食探訪満腹ツアー」

 
味の見聞録
第258回「大阪神戸話題の店」

 
おいしい!には訳がある
文・宮川順子(MIIKU(社)日本味育協会代表)
第31回「ショートや粒々のうどんがないのは何故?」

 
地味礼賛
文・佐藤 淳(コスミック出版取締役編集統括部長)
第332回「旅先で『賜る』味」

 
台所と食卓の名脇役(新連載)
文・細萱 久美(元(株)中川政七商店バイヤー)
第3回「THE GLASS」

 
おいしいひとり旅
文・山崎まゆみ(温泉エッセイスト/ノンフィクションライター)
第16回「おいしい温泉とまずい温泉」

 
口福の造り手を訪ねて
文/写真・猪口由美(『セコムの食』商品バイヤー)
第148回「女将さんのちりめん山椒」

 
これをあげたい!
文・梶田 真章(法然院貫主・NPO法人和の学校理事)
第124回「Dari Kのカシューチョコ」

 
タネもシカケもある話
文・森田敦子((株)サンルイ・インターナッショナル代表/植物療法士)
第76回「女性のセンシュアリティー」

 
ドクターの天眼鏡
文・石田浩之(医学博士)
第124回「反則タックル狂騒曲」

 
ソムリエの呟き
文・渋谷康弘(ソムリエ)
第177回「スペインのパワーに圧倒されたマドリッドの夜」

 
ハイ!!チーズ
文・皆見敦子(栄養士/チーズシュバリエ)
第70回「放牧の季節」

 
コーヒーを巡る人々
文・門上武司((株)ジオード代表取締役/フードコラムニスト)
第35回「コーヒー新世代」

 
共感する食のフィロソフィー
文・小山 進(「パティシエ エス コヤマ」オーナーシェフ)
第51回「父から継いだ味覚と技を洗練し 個性へと昇華させる若き探求者」

 
ジパング式素材交遊録
文・マッキー牧元(タベアルキスト)
第283回「好きな食べ物、嫌いな食べ物」

 
さらり日記
文・遠山正道((株)スマイルズ代表取締役社長)
第259回「お出迎え」

 
〈シドニー発〉麻子ママ奮戦記
文・中宮麻子
第199回「フィジオセラピー」

 
キャビンアテンダント私のお気に入り
文/写真・和田 恵美(日本航空客室乗務員)
第304回「釣り紀行的フードツーリズム」

 
ケ・セ・ラ・さ・ら
文・松本 圭子
第172回「サンマの佃煮」

 
名店会ファイル
第241回「赤坂ジパング スーパーダイニング」

 
ひと皿のことの葉
文・上條宏昌(小誌編集部)
第88回「さらさら」

大阪神戸話題の店

TAMANEGI

食材を温かく見つめた
素直でしみじみとうまい料理

「縁の下の力持ちというか、様々な料理のベースになるけど目立たない、でもないと味が成り立たない、そんな『玉ねぎ』を店名につけようと思ったんです」

 そう「TAMANEGI」の地頭方(じとほう)貴久子シェフはおっしゃった。ここは、ソムリエのご主人と二人で切り盛りされている、大阪の小さなイタリア料理店である。

 爆ぜるような身を持つ長崎産の凛々しい穴子には、優しいそら豆とビワを合わせる。

 鶏のフォンで茹でた筍、スナップエンドウ、インゲン、カリフラワーなど季節の温野菜には、「カルボナーラ仕立て」にして、卵の甘みとチーズの旨味を添える。

「ピチ、明石小ダコのピリ辛トマトソース」は、煮詰め過ぎない的確な火入れのトマトソースと、あえてタコの味をソースに溶かさず、タコとピチの食感を楽しませる。

 クニュッと弾むショートパスタのクルセートの食感の中で、足寄町「石田めん羊牧場」の羊肉のラグーは滋味を優しく滲ませていて、思わず唸る。

 そして「黒峰シャモ」の胸肉は、見事な加熱によって繊細な胸肉の持ち味が生かされていて、噛むごとに柔らかな旨味が溢れ、ため息をつかせる。

 どの料理も派手さはなく、食材を温かく見つめた素直な料理である。それでいながら、どこかで出合った料理とは違う、ささやかな個性があって、何よりしみじみとうまいのである。
 
大阪府大阪市西区新町1-20-15 
電話=06(6536)0085
営業時間=11時半~14時、18時~22時
定休日=火曜日

和洋遊膳 中村

豊富なアラカルトはどれも秀逸
近所にあれば通いたくなる店

 豊富なアラカルトを自由に頼めるという、大阪独自の板前割烹スタイルの店。ご主人の中村正明さんは「浪速割烹き川」「志摩観光ホテル」で修業された。ずらりと並ぶメニューは刺身、焼物、煮物、揚物、洋食、小菜、ご飯物と、全八十三種類に及ぶ。

 まず魚がいい。昆布で締めた「コハダ」や、脂の乗り具合が程よい「きずし」、木の芽を噛ませた「鯛」に、メロンのような香りがする「生鳥貝」、立派な青柳を使った「ヌタ」など、極めて質の高い魚が揃っている。

「野菜の盛り合わせ」を頼めば、筍山椒煮、赤コゴミ胡麻和え、ヤングコーンきんぴら、独活の酢どり、蕗梅煮、ワラビ、こんにゃく、しいたけ、焼き松の実白和えといった具合で、季節の野菜をそれぞれに別の味付けで丁寧に料理されたものが出される。

 マスカルポーネ、キンカンを射込んだ「フォアグラ最中」はサイズが程よく、「鯛白子一味焼き」は焼き具合が精妙。

「サクラマスの木の芽焼き」には優しい甘みの野菜ソースが添えられ、「ビフカツ」に添えられた、マグロだしと角煮のタレとウースターによるソースもなんともうまい。「鱧は落としで食べるより、フライにしてウースターでしょ」という、揚げられた鱧は、噛めば甘みが弾け飛ぶ。

 胡麻油をかけた「白海老とウニのユッケ」で笑わせ、互いの淡い甘みが生きた「桜海老とゆり根のかき揚げ」で再びビールを飲ませる。さらには、おじさんを陥落させる「ジャガイモミルフィーユグラタン」や、上品な味付けで芋の香りが生きた「ポテトサラダ」なんてのも控えている。

 そして締めには、デュラムセモリナ粉の素麺と鯛アラだしによる「自家製チャーシュー麺」や、志摩観光ホテル譲りの「シーフードカレー」まである。

 このシーフードカレーがいけません。海の滋養がたっぷりと含まれ、エレガントな旨味が後を引く、一流レストランでも出合えないようなカレーの味わいが割烹でいただけるなんて、食いしん坊冥利につきるじゃありませんか。

 深夜まで営業しているのも嬉しい。予算は飲んでも一人一万五千円ほど。近所にあれば間違いなく通いたくなる店である。

大阪府大阪市中央区西心斎橋2-3-22 
電話=06(6212)9217
営業時間=17時~翌1時頃
定休日=日曜日

bb9 ベベック

柔らかく逞しい薪の火を入れ
食材に隠された力を引き出す

 坂井剛シェフが薪の熾火(おきび)だけで調理するレストラン。その火の柔らかさと逞しさは様々な食材に隠された力を引き出し、心を揺り動かす。昼夜ともおまかせメニュー一万二千円~一万六千円(税サ別。季節の食材入荷状況により価格の変動あり)。

 まずはコース以外に追加リクエスト(別料金)した「焼きキャビア」。冷たい時には感じなかった、命の源となる濃密な卵の味わいが襲ってくる。温められた塩気は旨味に変化して心を揺する。次は「自家製水牛バターとパン、トリュフ」。スモーク(野味)とトリュフ(エレガント)の香りが立ち上る。野味とエレガントの交錯。

 三皿目「生牡蠣と加熱した牡蠣」。色香と純真な味わいの交錯。四皿目「小浜の鯖」。躍動と静謐(せいひつ)の交錯。澄んだ味わいがありながら、噛むと旨味が爆発する。

 五皿目「白子」。加熱されているのに、外側は柔らかく、中もとろりと柔らかい。味わいを濃密にしつつ、澄んでいる。六皿目「剣先イカと雲丹、玉ねぎ」。艶かしさと優しさの交錯。甘みがじっとりと出たイカと玉ねぎの穏やかな甘みが抱き合う。

 七皿目「アーティチョーク」。逞しさと脆弱の交錯。しなやかな甘みと猛々しさがある。八皿目「本ミル貝とプチヴェール」。清洌と豊潤の交錯。貝の清洌な滋味が滲み出て、さらに噛めば圧倒的な旨味が膨み、口を満たす。サルサヴェルデの酸味が絶妙。

 九皿目「ノドグロとその出汁のリゾット」。豊満の中の凛々しさ。脂が乗っているが、深海魚特有の脂のだらしなさがなく、綺麗で凛々しい。十皿目「天城軍鶏、ゆり根、ほうれん草」。繊細と大胆の交錯。胸肉の繊細さ、モモ肉の豪胆さがあり、ゆり根はこの上なく甘い。デザートは「薪焼きいちご」。野生と可憐の交錯。最後は「燻製アイスクリームに危険なものをかけて」。

 ソムリエの西川正一さんがセレクトする、各種ワインのペアリングも素晴らしい。

兵庫県神戸市中央区元町通3-14-5 
電話=050(3186)4889
営業時間=[ランチ]12時[ディナー]18時・19時・20時
定休日=不定休 
※予約は2~6名まで。6名以上は要相談。

木村 忠史

兵庫県三田市 木村クリニック院長

中国菜 二位
巨漢シェフの生み出す繊細かつ優しい中華

 友人が関西に来ると必ずお勧めする「中国菜 二位」。

 美味しい中華料理店目当てに神戸へ通うこと三十余年。足繁く通っていた店の雇われシェフが辞めたことで味が変わり、他を探していた私に友人が紹介してくれた。以来、我が家の中華料理店一位は「二位」。元町は南京街が近く中国人シェフの店が多い中、「二位」のご主人は日本人シェフで〝ヌーベル・シノワ〟の先駆者でもある。

 四人掛け・六人掛けのテーブルが三卓、カウンター三、四席の家庭的な店で、「二位」の店名には 《大勢で堪能するのが常識の中華料理店でありながら、少人数で来られてもしっかり満足できる店でありたい》というシェフの思いが込められている。

 バラエティーに富むメニューは約七十種。必ず頂くのは「手羽先の辣子鶏」。二分割し五~六センチほどにカットした手羽先が二種の唐辛子油で唐揚げされ、たっぷりの鷹の爪と四川の朝(チャオティエンジャオ)天(チャオティエンジャオ)椒(チャオティエンジャオ)に埋もれた状態で出される。一口食べれば滝汗必至。ただ辛いのではなく、朝天椒が巧く利いていてクセになる旨辛さ。この料理、唐辛子を炒める煙でお客さんが一斉に咳き込むけれど病み付きになる。

 前菜は「蟹ほぐし身強火炒め」。渡り蟹をほぐし、蟹の持つ塩味だけで葱と和えたものが甲羅に盛られる。上にかけたトビコのぷりぷり感、蟹爪の殻にはアクセントの生姜。これも絶品。「ふかひれお刺身風」は、てっさのように真っ白なふかひれが皿に並び、白葱とピーナッツ油のタレで頂く。

 海鮮なら「ミル貝の湯引き葱ソース」。ミル貝を覆い尽くすほどの長葱。二種のオイスターと醤油のタレで頂く。「渡り蟹入り海鮮・春雨薄ピリ辛土鍋煮」も外せない。海老、帆立、烏賊が入り、渡り蟹の出汁が染み込んだ春雨をおこげと共に頂く。

 〆は、生姜入りの葱スープが飲み干せるほどに優しい味の「葱ソバ」や、淡路島産由良ウニがてんこ盛りの「贅沢炒飯」で。

 寡黙で身長百八十センチの巨漢のシェフは一見怖そうだが、話すと優しい雰囲気に包まれる。店内にいつもお客さんの満足そうな笑顔が溢れているのも「身体に優しい料理」を作られるシェフと、すべての人を癒し、和ませる笑顔の奥様の人柄のなせるワザだろう。このお二人が織りなす心も身体も喜ぶ唯一無二の中華料理は、グルメ疲れした胃を本当に優しく癒してくれる。

兵庫県神戸市中央区北長狭通3-2-9 ジョイビル1階
TEL 078(334)7291