新春鼎談

牛尾治朗 茂木友三郎 宮内義彦

日本を〝東洋のスイス〟に

   キーワードは「寛容の精神」

 2019年新年号にあたり本誌巻頭対談のホスト役を務めていただいている皆さまにお集まりいただき、さまざまな話を伺った。
世界を席巻するアメリカ・トランプ大統領の強硬な外交政策、台頭する中国、移民問題に揺れるヨーロッパ、混沌とする世界情勢の中で日本がなすべきことは何か、多分野にわたりお三方が意見を述べられた。

編集部
2019年新年号にあたり、本誌巻頭対談のホスト役を務めていただいている皆さまにお集まりいただきました。よろしくお願いいたします。

〈乾杯〉

編集部
まずは、茂木さんが平成30年度の文化功労者に選ばれたということで、おめでとうございます。

「食文化の国際交流」をモットーに、長年にわたりしょうゆや日本の食文化を海外に紹介され、日本国内における食文化の継承や食育の推進に努めてこられた。その働きが、「企業活動によるしょうゆの普及を通じて、国内外における日本の食文化の普及のみならず、食育活動にも積極的に関わるなど、食文化の普及と振興に果たしてきた功績」として認められ、顕彰されたということですね。

宮内
政府はいいところに注目したと思いますね。

牛尾
しょうゆの味というのは、日本の一つの文化ですから、その文化を国が称えるというのは、とてもいいことですよ。

茂木
おっしゃるとおり、しょうゆというのは日本の食文化の中心の一つですから、しょうゆを海外に紹介することは、日本の食文化を紹介することにもなるのだと、私は社内でも何十年も前からずっと言い続けているのです。世界の国々といろいろな文化交流をすることが大切ですが、その中でも食文化の交流というのは非常に重要だと思うのですね。「同じ釜の飯を食う」「寝食を共にする」という言葉があるように、同じものを食べると、みんな仲良くなれるでしょう。ですから、しょうゆに限らず日本の食を世界の人々に紹介して、触れてもらうことで、日本の文化、日本という国に対する理解を深めてもらえると同時に、友好の促進につながるだろうと。私は旗ふり役を長年務めさせていただいたと思いますが、実際に食文化の交流を実施するためには多くの方々のご支援・ご協力が必要でした。それらの皆さまのご支援・ご協力に対し、この機会に厚く御礼申し上げたいと思います。

牛尾
しょうゆが美味しいということを、しょうゆ文化のない国の人に知ってもらうのは大変なことですが、それをずっとやってこられた茂木さんの功績は大きいですよ。

茂木
私は「農林水産物等輸出促進全国協議会」(日本の高品質な農林水産物・食品の輸出を促進することを目的に2005年に設立)の会長を仰せつかって、しょうゆに限らず、日本の食文化を海外に広めようということでずっとやってきたわけですが、その出発点となったのは、内閣府の知的財産戦略会議事務局が2005年に設置した「食文化研究推進懇談会」でした。

牛尾
「食文化研究推進懇談会」は大成功でしたね。

宮内
日本の食が世界から注目され始めたのは、あの頃からですね。

茂木
「日本ブランド」を世界に誇れる知的財産と位置づけて、政府が中心となって海外展開に力を入れ始めたのですね。そこで、日本の食文化をその「日本ブランド」の一つとして捉えて、世界に発信するためにいかに具体的なアクションを起こすかということを、「食文化研究推進懇談会」で議論することになったわけです。私が会長で、副会長が国立民族学博物館名誉教授の熊倉功夫さん、そのほか『東京??兆』の湯木俊治さんや『オテル・ドゥ・ミクニ』の三國清三さん、『辻料理学館辻調理師専門学校』の辻芳樹さんをはじめ、料理人や食の研究者など各界の有識者が集まって、メンバーは14人でした。

世界で日本食を食べている人はどれくらいいるかというと、これは勘定が難しいのですが、「日本食を1年に1回以上食べる人」を「日本食人口」と定義して勘定すると、当時6億人という数字でした。その「日本食人口」を、官民の協力のもと、5年後に2倍の12億人にしようという計画を立てて、「日本の食文化とは何か」というところから始まって、それを普及するための具体的な取り組みについて議論がなされました。それが結果的に、2013年の「和食」のユネスコ無形文化遺産登録につながったわけです。

牛尾
「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されて、みんな喜んだでしょう。

茂木
本当に喜ばしいことでした。「食文化研究推進懇談会」から始まって、そこからいろいろな活動が生み出されてきたということですね。

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