話題の中国料理店

香辣里

辛い、うまい、酸っぱい
そして安い湖南料理

 神田で『味坊』などを展開する味坊グループが今年開いた湖南料理の店『香辣里』には、辛い、うまい、酸っぱい、そして安い料理が溢れている。

 湖南省は中国中部、洞庭湖(ドンティンフー)の南にあり、湖南料理は中国八大料理の一つに数えられている。高温多湿ゆえに生まれた料理なのだろう、辛いことで有名な四川料理より辛いといわれ、特徴は、?とびきり辛い(この店は本場よりかなり抑えている)、?発酵中華による酸っぱさと香り、?燻製肉料理が多い、?ハーブを多用した香り豊かな料理、ということにある。だから、デトックスにも向いている。

 四川料理が山椒の痺れと唐辛子の辛味が合わさった「麻辣(マーラー)」という味の特徴があるのに対して、湖南料理は「酸辣(スワンラー)」、酸っぱくて辛いのが特徴。その酸っぱさの元は、発酵食品にある。発酵させた穀物や野菜、魚などによる乳酸菌の練れた酸っぱさと辛味が合わさるのだから、クセになる。

 この店では、自ら発酵させた食品を使って攻めてくる。例えば、湖南の代表的なおかず「酸豆角肉泥」(インゲンの漬物と豚の挽肉の炒めもの)。食べればインゲンの香りと熟れた塩分、そして酸味が口の中で渦巻いて、大至急ご飯がほしくなる。

 もう一つの特徴が「香辣(シャンラー)」といい、口の中に入れた瞬間に汗が吹き出すほどのスカッと抜ける辛さ。

 その名を抱いた「香辣魚」は、塩漬け発酵させた魚を、唐辛子とともに蒸し煮にしたもので、食べた瞬間に一筋縄ではいかない独特の酸っぱい香りが広がり、そこへ魚本来のうまさと辛味が加わって虜になる。「臭魚」とも呼ばれ、このクセのある匂いがたまらない。ご飯や濃いめの白ワインが恋しくなる味である。

「酸湯牛肉」は、スープと油で煮た牛肉料理。山椒が弾けて痺れさせ、唐辛子が破裂して痛めつけ、クミンが鼻をくすぐり、酸味と牛肉のうま味が舌を抱く。複雑な辛酸味と香りが押し寄せ、顔が笑いながら放心状態となるは必至。

「酸豆角米粉」。インゲン漬物の汁ビーフンである。辛いのだが、発酵大根の角切りを入れてもらい、「思いっきり辛くして」と頼むといい。口から火を吹き、汗水垂れ流しながら、麺をすすってはスープを飲み、その癒しとして頼んだ醤油炒飯を食べ、再び麺と立ち向かう。
 料理の値段は、前菜が700円~、メインの「香辣魚」はその日の魚によって変動し、2300円~3500円(6人くらいで食べることができる)。「酸豆角米粉」は800円。

 そのほか、「腊肉炒香干」(スモーク豆腐と燻製豚肉の炒めもの)900円、「紫蘇煎黄瓜」(胡瓜の大葉ロースト)700円、「鉄鍋紅薯粉」(さつまいもと春雨の鉄鍋煮)900円もおすすめ。

東京都世田谷区太子堂4-23-11 GEMS三軒茶屋7階  
電話=03(6450)8791
営業時間=[月~木]11時半~14時半(L.O.)、18時~23時半(L.O.)[金]11時半~14時半(L.O.)、18時~翌2時半(L.O.)[土]11時半~翌2時半(L.O.)[日・祝]11時半~23時半(L.O.) 
年中無休

南方中華料理 南三(みなみ)

湖南・雲南・台南
食が面白い3地域の料理が融合

 湖南省、雲南省、台南の3地方の料理を提供するゆえに『南三』。『黒猫夜 銀座店』料理長だった水岡孝和さんが一人で調理し、サービスの方と二人で切り盛りする。食が面白いこの3つの地域の料理を融合させた、ほかではなかなかお目にかかれない中華料理が楽しめるとあって、今年5月の開店で、すでに3ヶ月先まで予約が埋まるという人気ぶり。

 アラカルトはなく、コース5400円のみ。冷菜盛り合わせ、自家製中国式ソーセージなど珍味盛り合わせ、野菜料理、魚料理、肉料理に、麺飯、デザートとなる。
ある夏の日の料理をご紹介。

 冷菜は以下の布陣。「つぶ貝と焼マコモの自家製沙茶醤和え」(台湾製干した舌平目、ピーナッツ、ココナッツ、台湾エシャロット)。「鴨ロースの燻製とフェンネルサラダ」。「穴子の唐揚げ カラメルと黒酢風味炒め、毛瓜(モーウイ)、ピクルス」は、穴子の味がしっかりあり、毛瓜のみずみずしくおいしいこと! さらに「押し豆腐、アボカド、アサリ」、「スッポンの煮こごり、じゅんさい」、「鹹蛋(アヒルの卵) とゴーヤの和え物」。

 珍味盛りは4種。味のバランスが見事な「豚肩肉とレバー、心臓、もち米のウイグル風ソーセージ」。大腸の脂の甘みをスッキリと生かした「豚の大腸ネギパリパリ揚げ」。「紅麹漬け豚肉タピオカ粉揚げ」は、これまた素晴らしい台湾風トンカツで、紅麹の風味が後から立ち上る。そして「鴨舌の燻製」。

「台湾産オオタニワタリと自家製ベーコンの炒め物」。オオタニワタリはゼンマイとツルナが合わさったような山菜で、茎は柔らかく優しく、葉は硬めで滑りがあり、かすかな甘みとえぐみがある。

「九層塔蝦捲」。台南エビフライと台湾バジル。エビのすり身とコーンを混ぜて網脂で揚げたもの。網脂、エビ、コーンの3種類の甘みが呼応する。

「火鍋醤烤鮎」。鮎は意外にしたたかであることをこの料理で知った。鮎のコンフィ火鍋ソースである。弱火でじっくり揚げた鮎が、辛く香り高く痺れるソースにまみれている。コンフィにすることでしっとりと身のうま味を凝縮させた鮎は、この強烈なソースに負けていない。辛い味によって、逆にそのほのかな甘みを輝かせている。ならば少し変化をつけて楽しんでみよう。鮎をグシャグシャに潰し、ソースを合わせてみたが、潰されてもなお鮎の風味があって、それが火鍋ソースと見事に抱き合うではないか。ご飯がほしい。辛い様々な香りの中でひっそりと息づく鮎の淡味を、熱々ご飯にのせて掻き込みたい。そんな衝動に駆られた。

「韮菜醤烤羊肉」。羊肩肉オーブン焼きに合わせたニラ、ミント、木姜(ムージャン)のソースが素晴らしく、溌剌とした様々な香りが肉のうま味に溶け込んでいる。

「台南米糕」。台南風おこわ魯肉(ルーロー)餡かけ。味が丸い。ポルチーニのうま味とピーナッツの香りが利いている。

 そして最後のデザートは、ツバメの巣と食感が似た「雪燕」という桃の樹液と、桃シャーベット、杏仁豆腐となる。

東京都新宿区荒木町10-14 伍番館ビル2階-B
電話=03(5361)8363
営業時間=18時~21時(最終入店)
定休日=日曜日・祝日