フランス料理の新店(1)

L’Evol(レヴォル)

質の高い食材を
モダンクラシックな手法で表現

 外苑西通りから表参道に抜ける、通称「まい泉通り」に、今年三月に開店。ワインバーとウェイティングを兼ねた地下一階から階下に降りると、四十席のメインダイニングが広がる。白と深いピンク、黒で統一された店内は、ゆったりと席が配置されており、くつろいで過ごすことができる。

 シェフの高木和也さんは、渋谷「キャリエ」(昨年閉店)の評判を高めていた方で、「質の高い食材を、モダンクラシックな手法やソースで表現する」ことを目指し、腕をふるう。

 ディナーコースは、一万円(十皿)と、七千円(七皿)。ある夏の日の一万円のコースをご紹介。

 一皿目は、シェフが前の店から提供してきた「パテ・バーガー」。小さな小さなバンズでパテを挟み込んだバーガーで、練り肉ならではの香りが食欲を刺激する。

 二皿目は、雲丹をのせた「トウモロコシのムース」。トウモロコシの濃厚な甘みが舌に流れ、思わず微笑む。

 三皿目は「車エビとアスパラガスのアンサンブル」。直火で炙って冷水に取った車エビと、薄切りアスパラガスを交互に重ねた一皿で、中心がレアに保たれた車エビの繊細な甘みがいい。添えられるのは、軽く味付けした玉ねぎと茄子のラタトゥイユ。

 四皿目は、野菜の盛り合わせ「エコファームアサノと高農園の野菜~夏の香り~」。力強い野菜の下にはコンソメ、上には枝豆を泡状にしたものがのせられている。ミネラルに富む野菜と、滋味深く綺麗な味わいのコンソメとの出合いが素晴らしい。

 五皿目は「フォアグラのEvolution Ver.4」。白桃、赤桃のピュレ、パンドエピス(パン菓子)のクランブル、セルフィユ添え。低温で加熱されたフォアグラの、ねっとりと均一な艶を感じさせる食感と脂の香りに、桃たちが優美さを加える一皿。

 六皿目「イサキのパイ包み焼き、ソースショロン」。スズキを使ったボキューズのスペシャリテへのオマージュか。イサキと帆立のムースを詰めたパイである。そのパイの焼き具合がいい。焦げる寸前まで焼き込んだ香ばしさが魅力的で、一方、中のイサキは火が通り過ぎることなくしっとりと甘みを膨らませている。その加熱の見極めが、実に見事である。

 七皿目「ラ・フルール・ドゥ・ミモレット」。同店のオーナーソムリエ細野博明氏のスペシャリテである。本来はグラニテが置かれるところだが、口腔内や喉を冷やしすぎる点と、チーズは肉の脂を吸収することから考えついたという。フロマージュブランの上に、薄く削り花びら状にした、十八ヶ月熟成のミモレットをのせ、百花蜂蜜をかける。ミモレットの熟れた深い塩気とフロマージュブランの爽やかな酸味、濃厚な蜂蜜の甘みが共鳴し合う。

 八皿目の肉料理は三つの料理から選択する。その一つ「トゥーレーヌ産鳩のロースト、ソースサルミ」は見事なキュイソンで、口の中に肉汁がしたたり落ちる。そしてガラや内臓を煮詰めたソースサルミが妖艶さを演出する、堂々たるフランス料理である。

 デセールも三品から選択。「ノワゼッティーヌ、フランボワーズアイス」は、ヘーゼルナッツの香り高い焼き菓子に、ヘーゼルナッツを入れたチョコとフランボワーズソースを添える。そして、ミニャルディーズと氷温熟成珈琲で宴の幕が下りる。

 ランチコースは、四千五百円(五皿)と、七千五百円(七皿)。昼夜とも税・サ別途。
 
東京都渋谷区神宮前3-6-7 DEAR神宮前地下1階 
電話=03(6875)0357
営業時間=11時半~13時半(LO)、18時~21時半(LO) ※日曜日はランチのみ営業
定休日=月曜日

Restaurant Umi

生命の誕生の源である「海」に
感謝を込めた料理

 閑静な住宅街に、六月にオープンした一軒家レストラン。シェフは、パリの一つ星レストラン「Sola」でスーシェフとして活躍された、藤木千夏さん。

 福岡県の有明海を見て育った彼女の「海」への思い、生み出すことの「生み」、そして「Sola」へのオマージュを込めて「Umi」と店名をつけたという。

 ディナーコースは、八千五百円(七皿)と一万二千円(十一皿)。ある夏の日の一万二千円のコースは以下の通り。

 一皿目は、体を整え、喉を開き、また「食事の支度が揃っていますよ」ということを指し示す、日本古来の粥からスタートする。淡い「茶粥」は、喉を清めながら心を温め、ごぼうと白瓜、蕪のピクルスが食欲をゆっくりと開かせ、美しい滋味が宿ったコンソメ(牛、鶏、焼いた長崎のトビウオ、野菜類、しいたけ)が体を整える。

「長崎産アジのマリネと茄子のマリネ、茄子を炭化させたソース」。茄子のほのかな甘みと、品を感じさせるアジの脂の旨味を純粋に合わせて、他の要素を削った潔さがいい。雑味のない澄んだ味が味覚を開く。

「白イカのグリル、エンペラとゲソ、ズッキーニのソース、松の実などによるピストソース、シトロンキャビア」。白と緑の皿が美しい。ナッツの甘い香りとイカの甘い香りが呼応し合い、胸がときめく。

 スペイン・バスク地方の料理「ピミエント・レジェノ」(ピーマンのブランダード詰め)のアレンジ。宮崎県産の甘みの強い赤ピーマンにブランダード(鰯、タイム、じゃがいもと牛乳を合わせたもの)を詰め、パン粉とパプリカ粉をつけて焼き、赤ピーマンソースを添えた一皿。ほのぼのとした郷土料理の美味しさがあって、どこか懐かしいような気分にさせられる料理である。

 魚料理は「みやび鯛のパイ包み焼き、グレープフルーツ入りブールブランソース」。パイには、根セロリとタプナード(オリーブのペースト)、魚のムース、微量の柚子胡椒が入れられ、みやび鯛(天草のブランド鯛)の気品ある甘みを優美に持ち上げている。またブールブランの酸味の利かせ方が柔らかで、魚の旨味に対して優しい。

 肉料理は「シャラン産窒息鴨のロティ、泥つき人参とオレンジジュースと人参のピュレ、人参の花添え」。鴨のキュイソンに色気があり、見事。土の温かみを伝える人参の濃い甘みにため息が出る。

 そして「山梨県産サンタローザ(プラム)、レモンタルト、りんごのクラフティ」という、楽しい組み合わせのデセールで終了。

 ランチは土曜日のみで、六千円(七皿)のコース一種。昼夜とも税・サ別途。

東京都渋谷区恵比寿4-19-7 
電話=03(6456)4306
営業時間=12時~13時半(LO)、18時~21時(LO)※ランチは土曜日のみ
定休日=月曜日・日曜日