大阪神戸話題の店

TAMANEGI

食材を温かく見つめた
素直でしみじみとうまい料理

「縁の下の力持ちというか、様々な料理のベースになるけど目立たない、でもないと味が成り立たない、そんな『玉ねぎ』を店名につけようと思ったんです」

 そう「TAMANEGI」の地頭方(じとほう)貴久子シェフはおっしゃった。ここは、ソムリエのご主人と二人で切り盛りされている、大阪の小さなイタリア料理店である。

 爆ぜるような身を持つ長崎産の凛々しい穴子には、優しいそら豆とビワを合わせる。

 鶏のフォンで茹でた筍、スナップエンドウ、インゲン、カリフラワーなど季節の温野菜には、「カルボナーラ仕立て」にして、卵の甘みとチーズの旨味を添える。

「ピチ、明石小ダコのピリ辛トマトソース」は、煮詰め過ぎない的確な火入れのトマトソースと、あえてタコの味をソースに溶かさず、タコとピチの食感を楽しませる。

 クニュッと弾むショートパスタのクルセートの食感の中で、足寄町「石田めん羊牧場」の羊肉のラグーは滋味を優しく滲ませていて、思わず唸る。

 そして「黒峰シャモ」の胸肉は、見事な加熱によって繊細な胸肉の持ち味が生かされていて、噛むごとに柔らかな旨味が溢れ、ため息をつかせる。

 どの料理も派手さはなく、食材を温かく見つめた素直な料理である。それでいながら、どこかで出合った料理とは違う、ささやかな個性があって、何よりしみじみとうまいのである。
 
大阪府大阪市西区新町1-20-15 
電話=06(6536)0085
営業時間=11時半~14時、18時~22時
定休日=火曜日

和洋遊膳 中村

豊富なアラカルトはどれも秀逸
近所にあれば通いたくなる店

 豊富なアラカルトを自由に頼めるという、大阪独自の板前割烹スタイルの店。ご主人の中村正明さんは「浪速割烹き川」「志摩観光ホテル」で修業された。ずらりと並ぶメニューは刺身、焼物、煮物、揚物、洋食、小菜、ご飯物と、全八十三種類に及ぶ。

 まず魚がいい。昆布で締めた「コハダ」や、脂の乗り具合が程よい「きずし」、木の芽を噛ませた「鯛」に、メロンのような香りがする「生鳥貝」、立派な青柳を使った「ヌタ」など、極めて質の高い魚が揃っている。

「野菜の盛り合わせ」を頼めば、筍山椒煮、赤コゴミ胡麻和え、ヤングコーンきんぴら、独活の酢どり、蕗梅煮、ワラビ、こんにゃく、しいたけ、焼き松の実白和えといった具合で、季節の野菜をそれぞれに別の味付けで丁寧に料理されたものが出される。

 マスカルポーネ、キンカンを射込んだ「フォアグラ最中」はサイズが程よく、「鯛白子一味焼き」は焼き具合が精妙。

「サクラマスの木の芽焼き」には優しい甘みの野菜ソースが添えられ、「ビフカツ」に添えられた、マグロだしと角煮のタレとウースターによるソースもなんともうまい。「鱧は落としで食べるより、フライにしてウースターでしょ」という、揚げられた鱧は、噛めば甘みが弾け飛ぶ。

 胡麻油をかけた「白海老とウニのユッケ」で笑わせ、互いの淡い甘みが生きた「桜海老とゆり根のかき揚げ」で再びビールを飲ませる。さらには、おじさんを陥落させる「ジャガイモミルフィーユグラタン」や、上品な味付けで芋の香りが生きた「ポテトサラダ」なんてのも控えている。

 そして締めには、デュラムセモリナ粉の素麺と鯛アラだしによる「自家製チャーシュー麺」や、志摩観光ホテル譲りの「シーフードカレー」まである。

 このシーフードカレーがいけません。海の滋養がたっぷりと含まれ、エレガントな旨味が後を引く、一流レストランでも出合えないようなカレーの味わいが割烹でいただけるなんて、食いしん坊冥利につきるじゃありませんか。

 深夜まで営業しているのも嬉しい。予算は飲んでも一人一万五千円ほど。近所にあれば間違いなく通いたくなる店である。

大阪府大阪市中央区西心斎橋2-3-22 
電話=06(6212)9217
営業時間=17時~翌1時頃
定休日=日曜日

bb9 ベベック

柔らかく逞しい薪の火を入れ
食材に隠された力を引き出す

 坂井剛シェフが薪の熾火(おきび)だけで調理するレストラン。その火の柔らかさと逞しさは様々な食材に隠された力を引き出し、心を揺り動かす。昼夜ともおまかせメニュー一万二千円~一万六千円(税サ別。季節の食材入荷状況により価格の変動あり)。

 まずはコース以外に追加リクエスト(別料金)した「焼きキャビア」。冷たい時には感じなかった、命の源となる濃密な卵の味わいが襲ってくる。温められた塩気は旨味に変化して心を揺する。次は「自家製水牛バターとパン、トリュフ」。スモーク(野味)とトリュフ(エレガント)の香りが立ち上る。野味とエレガントの交錯。

 三皿目「生牡蠣と加熱した牡蠣」。色香と純真な味わいの交錯。四皿目「小浜の鯖」。躍動と静謐(せいひつ)の交錯。澄んだ味わいがありながら、噛むと旨味が爆発する。

 五皿目「白子」。加熱されているのに、外側は柔らかく、中もとろりと柔らかい。味わいを濃密にしつつ、澄んでいる。六皿目「剣先イカと雲丹、玉ねぎ」。艶かしさと優しさの交錯。甘みがじっとりと出たイカと玉ねぎの穏やかな甘みが抱き合う。

 七皿目「アーティチョーク」。逞しさと脆弱の交錯。しなやかな甘みと猛々しさがある。八皿目「本ミル貝とプチヴェール」。清洌と豊潤の交錯。貝の清洌な滋味が滲み出て、さらに噛めば圧倒的な旨味が膨み、口を満たす。サルサヴェルデの酸味が絶妙。

 九皿目「ノドグロとその出汁のリゾット」。豊満の中の凛々しさ。脂が乗っているが、深海魚特有の脂のだらしなさがなく、綺麗で凛々しい。十皿目「天城軍鶏、ゆり根、ほうれん草」。繊細と大胆の交錯。胸肉の繊細さ、モモ肉の豪胆さがあり、ゆり根はこの上なく甘い。デザートは「薪焼きいちご」。野生と可憐の交錯。最後は「燻製アイスクリームに危険なものをかけて」。

 ソムリエの西川正一さんがセレクトする、各種ワインのペアリングも素晴らしい。

兵庫県神戸市中央区元町通3-14-5 
電話=050(3186)4889
営業時間=[ランチ]12時[ディナー]18時・19時・20時
定休日=不定休 
※予約は2~6名まで。6名以上は要相談。